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IPO会社数46社に終わる

IPO会社数46社に終わる。

概要

年初の予想では60社程度と数えられていましたが、最終的には46社となりました。
7年前からIPO会社数の推移を示すと以下のようになります。

2006年188社
2007年121社
2008年49社
2009年19社
2010年22社
2011年36社
2012年46社

コメント

さすがに2009年以降は上昇基調にあるとは言えますが、2007年までの勢いと比べると、低迷している状況が続いていることに変わりはありません。
上場会社が減ってきていることの原因は①長期的な株価の低迷が最も大きく影響しているといえるでしょう。それ以外には②実質的な上場のためのハードルが徐々に高められてきたということがあるでしょう。これは上場直後の会社が引き起こしたいくつかの不祥事が影響しているといえるでしょうが、J-SOXの導入のみではなく、上場審査基準の実質的な強化も影響しているといえるでしょう。また証券会社の営業の人などから聞いたところでは、最近は有望⑨なベンチャー企業の発現率が減少しているということです。これは、長期的な不景気によって、日本人の安定志向が高まり、大企業等にしがみつく人が増えているということによるのかもしれません。
今年の上場会社について値付き状況をみると、公募価格より初値が低くなった会社は6社であり、一方で初値が公募価格の2倍ないしそれに近くなった会社は8社となっています。
したがって、新規上場株式を公募で手に入れた人は、8人に1人くらいが、若干損をして、6人に1人くらいは買った額の倍近くになったということです。
この状況は来年に続くと思われますし、もう少しはIPOが活況になる可能性を含んでいると考えることができるでしょう。
3年後くらいにはまた100社台のIPOが見られるかもしれません。
IPOの活況はほとんど景気の活況と連動しています。その意味でもIPOの活況を導くべく、政府主導での取り組みにも期待したいところです。米国でIPOの活況化を図るためにJOBS法が出されましたが、日本での場合は、いまさらJ-SOXの適用を見送るという程度では不十分でしょう。箱モノに頼る政策ではなく、ベンチャー支援の強化が今求められるべき政策かと思われます。

大型会計不正事件の発覚

大型会計不正事件の発覚

概要

昨年末から引き続いていたことですが、オリンパスの事件と大王製紙の事件がほぼ同時におこり、会計士業界ではこれをOD問題と称して一大事ということになりました。

コメント

いずれの不正も長期間にわたって引き起こされたものであってその間潜伏していた問題の顕現化ということであります。
この問題は両社を担当していた大手監査法人の責任の所在に関心が高まりましたが、結果的には監査業務の引継ぎに際して、前任監査法人が知りえたことは、十分に後任監査法人に引き継がなければならないとされ、引継ぎ業務の強化指導という形でほぼ決着したようです。
しかしここで重要なのは、エンロン事件を契機に会社の不正を抑えようということで講じられた対策である「内部統制監査」制度がこの事件にとって何ら効果を発揮できなかったということであり、内部統制監査の意義をもう一度考えてみなければならないのではないかということです。内部統制監査は基本的に経営者が自ら行うような不正には効果を期待することはできません。したがって、オリンパスや大王製紙のような事件は内部統制監査では防ぎようがないといえるのです。
こうした事件を受けて、さらに不正対応の監査を導入するという話も起こっています。しかし、どんなに不正対応の監査を行ったとしてもほとんど会計不正で行われている書類の偽造が行われてしまえば、これを会計士が発見して不正をただすということは困難といえます。それ以上を要求するのであれば、監査人に捜査権のようなものを付与する必要が出てくるでしょう。そこまで踏み込むのは国際的な監査の慣行を大きく逸脱してしまいます。監査に対する社会的要請に応えていくことは必要ですが、権限とのバランスを考えることなく、監査人の義務だけ加重することは制度的矛盾につながりかねません。

IFRS導入の見送り

IFRS導入の見送り

概要

2012年7月にSECのIFRS導入検討チームが提出したレポートによって、米国では当面IFRSの強行的な導入は見送られるムードとなり、日本も追従するという形となりました。
金融庁はIFRSを強制適用するかどうかを2012年に判断を決定するとの考えで、強制適用する場合は2015年または2016年に適用を開始するとの趣旨を示していました。しかし、国民新党の自見庄三郎金融担当大臣は2011年6月に「少なくとも2015年3月期についての強制適用は考えておらず、仮に強制適用する場合であってもその決定から5-7年程度の十分な準備期間の設定を行うこと、2016年3月期で使用終了とされている米国基準での開示は使用期限を撤廃し、引き続き使用可能とする」との見解を表明しました。2012年に入っても会計基準のあり方を決める金融庁の企業会計審議会で議論が割れ、審議会を年内に開催するメドも立っていないため、IFRS導入の是非についての結論が、2013年以降に先延ばしされる見通しとなっています。

コメント

このことによって、上場会社が比較的短期間において、IFRSで会計処理・報告をしなければならないという事態は当面はなくなり、将来的にも日本基準がIFRSと同質性を認められ、なし崩し的に強制適用がなくなる可能性も出てきました。このことは、小規模上場会社にとっては会計や監査にさらなる追加コストをかけなくて済むという点では福音というべきでしょう。今後米国がIFRS財団(このバックには4大監査法人がついています)とどのような駆け引きを行い、どのような判断をするのかに関してはしばらく様子を見ておく必要があるでしょう。日本がこの件に関に関して米国に追従するのは目に見えていますから。

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日之出監査法人
統括代表社員 公認会計士
小田 哲生

1985年からIPOを専門に扱う企業公開部に所属し、20年以上に渡りIPO業務推進の中心的役割を果たす。関与先でIPOを達成した企業数は30社以上となり公認会計士業界では最多となる。2009年上場準備・中堅企業のための日之出監査法人を立ち上げ、現在に至る。

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