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BROスペシャル

海外の最新動向に見るリードナーチャリング最前線 後編

潜在的な見込顧客を育てるBtoBマーケティング「リードマネジメント」はここまで進んでいた…。
セールスフォース・ドットコムや日本オラクルなどの外資系ベンダーも登壇した
業界注目のセミナー「リードナーチャリング勉強会」。
海外の最新事例や実践ノウハウが詰まったセミナーレポートをお届けします。

BtoBマーケティングの分野を中心に注目を集めている「リードナーチャリング」の事例や実践ノウハウに関するセミナー、「リードナーチャリング勉強会(ver2012夏)」が2012年9月14日秋葉原で開催された。
「リードナーチャリング勉強会」は株式会社Nexalの上島千鶴氏が中心となり、一般企業のマーケティング担当や販売推進担当からWeb制作会社、各種ツールやITベンダー、サプライヤーまで、売り込み目的ではなくフラットに議論できる交流の場として、2010年7月から非定期で開催されている勉強会だ。
今回で第5回を迎えたリードナーチャリング勉強会のレポートを紹介する。

第二部では、株式会社シャノン・嶋田氏、株式会社日経BPコンサルティング・古賀氏、株式会社ジゾン・池上氏、株式会社セールスフォース・ドットコム・伊藤氏、シンフォニーマーケティング株式会社・庭山氏といった国内のソリューションベンダーを中心に、事例紹介など国内マーケティングの最新動向が語られた。

有望な見込顧客創造は、成熟度に応じたマーケティング施策の最適化から

株式会社シャノン 嶋田 賢策 氏

株式会社シャノン

嶋田 賢策 氏

株式会社シャノン マーケティングスペシャリスト 嶋田 賢策氏は、営業企画、マーケティングといった部署のミッションを「有望な見込顧客のリストを作ること」だとし、そのポイントを成熟度のレベルを分けて説明していった。

まずレベル1は、単一のマーケティング施策の幅を増やすことでリードの獲得を増やしていき、そこで起こる見込顧客のアクションベースで迅速にフォローを実施していくという段階だ。具体的には資料請求やダウンロード、セミナー申込やメール配信のクリックなど、起こったアクションに対して、対応者を明確に定義し、対応漏れが起こらないプロセスの構築し、資料請求などをしてきた見込顧客に対して一定間隔で継続フォローするといった基本的なものだ。

レベル2は、"今"関心がある見込顧客リストの抽出とそのタイミングを逃さずもれなくフォローしていくという段階だ。具体的には見込顧客の商談ステータスが一定の進捗以上、商品やサービスのWEBサイトの閲覧時間やクリック回数が一定の条件以上などの属性を分けた管理をできるようにするために、SFAとの連携促進やWEBサイトへの再訪を促すコンテンツ作成を行っていく段階だ。レベル2での施策実行のポイントとして以下の4つを挙げた。

  1. 中間コンバージョンとシナリオの設定 (事例ページの再構築、ユーザーの動作を想定したコンバージョンルート設定)
  2. ハウスリストの整備 (重複データの排除、分散した営業名刺データの集約)
  3. メール配信と効果測定 (トラッキング計測可能人数等のKPI策定)
  4. 中間コンバージョン達成した見込顧客への確実な施策実行

これからは行動履歴ベースでのリスト管理を行い、そこに対するアクションを迅速に実行していくことが重要と強調した。

起承転結を意識したシナリオ・コンテンツ作りを

株式会社日経BPコンサルティング 古賀 雅隆 氏

株式会社日経BPコンサルティング

古賀 雅隆 氏

株式会社日経BPコンサルティング Webコンサルティング部長 古賀 雅隆氏は、日経BP社のコンテンツ制作で蓄積した、マーケティング施策を進める上で重要となるシナリオ・コンテンツ作成の"勘所"を解説した。商品やサービスをプロダクトアウトではなくマーケットインにするためには、ターゲットの属性はもちろん大切だが、"気分"に焦点を当てることが重要という。ここで一つ、社員研修のアウトソーシングビジネスを行っている企業を例に見てみる。下記に二つ広告文がある。

  1. 社員研修ならアウトソーシング
    ―その道のプロが社員の能力を引き出し育成
  2. 人は城、人は石垣
    ―適切な人材育成が経営戦略を実現する近道

1、はすでに意欲が顕在化しており、社員研修をアウトソーシングしたい顧客向けの広告文だ。まだ購買意欲が高まっていない潜在顧客に対して1、は響きづらいと考えてよいだろう。対して2、は漠然と人材育成に課題を感じている潜在的なニーズを喚起する広告文となっている。もうすでに購買意欲が高まっている顧客には響かないだろう。

また、見込顧客に最適なアプローチをするためには、アプローチのシナリオの起承転結が重要という。具体的にある企業が新製品をリリースする場合を例に見てみる。単純に「数年ぶりにAの新製品を発表」とリリースを出しても、なんとなく理解できるのは、すでに利用したことのある既存顧客だけだろう。見込顧客向けにするためには、ユーザーが抱えている課題を挙げ、その課題を解決する方法や考え方を提示し、それを具現化した新製品であることを伝える必要があると話した。

起承転結を考えるポイントとして「ジェットコースターに乗ってもらう」ことが重要としている。ポイントとして下記の3つを挙げた。

  1. 論理的な展開で一気に読んでもらう (スピード感が楽しさに大きく貢献)
  2. サビを意識し、その前段もきちんと準備する (急降下前にゆっくり上がるのも急降下のドキドキには欠かせない要素)
  3. 全体を一連のつながりそしてとらえる (始まりから終わりまですべての体験を通して価値が決まる)

ターゲット顧客の属性よりも"気分"を重視し、ターゲットを魅了する起承転結を意識した変化へと誘惑するコンテンツ作りが重要だと語った。

顧客のランクと行動を見極め、効果的なアプローチを

株式会社ジゾン 池上 正夫 氏

株式会社ジゾン

池上 正夫 氏

株式会社ジゾン マーケティング部 池上 正夫氏は、自社の活動を事例にリードナーチャリングへの取組について解説した。雑誌などのマスメディアやWEB広告などの施策を行わず展示会やセミナーを中心に見込顧客を獲得していた同社は、まだニーズが顕在化していない潜在ニーズを持った層のリスト、いわゆるコールドリードの有効活用が重要と語った。

ハウスリストや展示会やセミナーで獲得したリスト、日々増えていくWEB問合せや営業名刺のリストなど様々な属性はあるものの全体のうちコールドリードは95%を占める。ニーズが顕在化しているわずかなホットリードだけにアプローチして、コールドリードは放置しておきがちであるが、同社は見込顧客を増やすためにコールドリードに対してメール配信を行い自社のWEBサイトに訪問させ、その中から見込顧客を見つける取組を行っていった。

具体的に自社のセミナー参加者のフォローを例にとって見てみる。参加者を見込の確度別に分けて分類するために、セミナーのアンケートで見込がありそう、セミナーのサンキューメールを送った後、WEBサイトに来た、セミナー後、参加企業の中で複数の人がWEBサイトに来たなど、基準を用意してアプローチしていく。WEBサイトへのアクセス企業のフォローは訪問頻度や、閲覧時間、複数の人が訪問しているなどを軸に見るのがポイントだ。セミナー、展示会、営業活動で獲得するリストと、メール・WEBサイトを連携させることがインサイドセールスを強化につながるという。

広告を打とうが、ツールを導入しようがポイントを押さえていなければ効果は出ない。自社に今ある財産(見込顧客データ、WEBサイト)をどう生かすかが重要で、見込客のランク分けや、そのランクに応じたプロモーションを実施する中で、ファーストコンタクトから受注までの顧客行動を把握して効率的な営業アプローチを行っていくことが最も重要だと語った。

組織立った営業活動を実現するポイントは、役割の明確化

株式会社セールスフォース・ドットコム 伊藤 靖 氏

株式会社セールスフォース・ドットコム

伊藤 靖 氏

株式会社セールスフォース・ドットコム シニアマネージャー 伊藤 靖氏は、自社で実践しているインサイドセールスでのリードナーチャリングの取組を事例として紹介した。

インサイドセールスはマーケティングと営業の橋渡しをする位置づけ。マーケティングで獲得した見込顧客に対してインサイドセールスが商談化し、営業がクロージングして売上を上げるという流れができており、各フェーズでKPIが設定されている。

  • マーケティングでは、WEB・イベント・DM施策×顧客情報獲得=見込顧客
  • インサイドセールスでは、見込顧客×商談化(%)=商談
  • 営業では、商談×クロージング(%)=売上

といったようにフェーズごとに管理されている。

同社ではインサイドセールスをフローや役割ごとにいくつかのチームに明確に分けて実践している。具体的にはセールスレプリゼンタティブ(SR)とエンタープライズビジネスレプリゼンタティブ(EBR)に分かれている。
SRではインバウンドからアウトバウンド、フォローアップまでを担当し、たくさんの見込顧客にアプローチし営業に案件を渡す役割を担っている。SRが業務を進める上でのポイントを大きく2つ挙げている。一つ目はマーケティングから上がってくるリード情報をベースに見込顧客に的確にコンタクトをとることだ。リードが発生した入口、そのリードの属性、どういう経路を通ってリード化したのかを明確に把握し、フォローの精度を標準化している。二つ目は、業務を運用していく中で運用ルールに対する例外をきちんと抽出していくという点だ。具体的には、

  • 必ず48時間以内のコンタクトをとる
  • フォローをやめる前に必ず5回以上コンタクトをとってその理由を確認した上でフォローをやめる
  • フォロー担当者別に担当リードを見て90日以上経過しているリードは都度確認してフォローをやめるかどうか判断する

など細かく運用ルールを決め実践していくことが重要だとする。「セールスフォースからは資料請求した瞬間に電話がかかってくる・・・」という声も、こういった管理がされているからこそ実現できるものだ。

EBRではSRと営業の間に入り、営業と相談しながらより明確なターゲティングを行い、アプローチを行う。具体的にはFacebookや日経新聞の人事欄などを見てターゲット企業のキーマンを調べ、その人個人宛てに丁寧に作りこんだメールや手紙を送り、そこに対してフォローコールを行うといった、いわゆる"泥臭い"アプローチを行っている。なぜ手紙を送ったのか、自社がどう相手企業に貢献できるかを事例などを交えて具体的に述べることで、キーマンに確実かつ深くリーチできるという。
また、SRとEBRと営業とでは密に情報共有を行うことも徹底している。

営業活動全体でのインサイドセールスの役割、インサイドセールスの中での各担当の役割を明確にし、組織だった営業活動をしていくことが重要であると解説した。

ディスカッションタイム
―リードマネジメント・リードナーチャリング・リードクオリフィケーションの取り組み課題―

シンフォニーマーケティング株式会社 庭山 一郎 氏

シンフォニーマーケティング株式会社

庭山 一郎 氏

シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山 一郎氏は全員参加型のディスカッションのゲスト回答者という形式で、質問者から挙がってくるリードマネジメントに関する疑問や課題やについて解説した。挙がった質問の中からいくつか抜粋して紹介していく。

Q:日本では、見込顧客のリストを管理していく上で、個人に紐づく情報の管理がとても難しいといわれているが、その典型的な事例はありますか?
庭山氏:まず、見込顧客のリストをきれいに保つための名寄せがとても難しいです。社名、役職、メールアドレスなど複合的な要素を考えると、たとえば、日本電気株式会社(NEC)を例にとってみると、会社名だけでも前株後株など単純なものも含めて揺れのパターンが40近くある。役職でいうとNECの方の名刺が300枚あるとすると80種類近い役職がある。「支配人」とか・・・(笑)
企業の業種や売上規模、個人の所属部署、役職などの属性が、自社の製品やサービスのターゲットに近いかどうか(より有用なリストかどうか)を数値化していくことをスコアリングと呼んでいます。役職の上下でスコアリングするときで、その役職が偉いかどうかわからないとスコアリングしようがない。異動を考えたときに役職は部署ほど揺れないので役職のほうが重要と考えるので、NECのケースは非常に難しいですね。
Q:5年、10年前の古いリストは捨ててもいいですよね?
庭山氏:なぜ捨てるんですか??(笑) たしかにDMのコストは高いので、古いリストに送るより、新しいリストに送るほうが転職退職がないので届く可能性が高い、と考えがちです。しかし逆に考えると、10年前のリストにメールを送って返送されてこなければ勤続10年以上のリストというわけですよね??とても高価値ということですよ。企業合併があったとしてもたいていの場合しばらくはメール転送されるようになっているので、その間にリストをメンテナンスしていくのがポイントです。
Q:見込顧客リストにメールを送ってアプローチをしていく際に、メールを送る通数の許容範囲はありますか??
庭山氏:人間のメールを受け取る許容範囲は通数じゃないんですよ。そのメールの内容が面白いかどうか、商売っ気がしないかどうかがすべてです。〇〇社からくるメールはセミナーやイベント情報、製品情報ばかり・・・、と思われるのがいちばん最悪です。ですが、面白くて内容のあるメールを作るのはとても労力がかかるのでかなり大変です。ですので、弊社では同じリストに対してメールマガジンは月一回と決めています。内容としては、有用な情報などさしさわりのない内容、製品・セミナー情報、商売っ気を出した内容、を4:4:2くらいの割合で送っています。やはりコンテンツを作るのが大変で、弊社のお客様でもメールのコンテンツを自社で作っているのは2割くらいです。しかもそのコンテンツに対しての投資対効果をどう図るかも難しい問題です。

リストの整備などデータマネジメントから始まり、メール配信のオペレーション、メールのコンテンツ制作、その結果の分析、さらにはフォローコールと、リードナーチャリングの一連の流れを実践できる体制を構築するのが重要です。

3つのステージにあわせた最適なコミュニケーションを

株式会社マーケティングエンジン 尾花 淳 氏

株式会社マーケティングエンジン

尾花 淳 氏

株式会社マーケティングエンジン 代表取締役社長 尾花 淳氏はインバウンドマーケティングの重要性とそのポイントについて解説した。

消費者が何かモノを買う前にネットの情報を参考にしているのは明白な事実で、Googleが提唱している「ZMOT」のように、購買や資料請求の前に気になる商品・サービスについてネットで情報を調べている。このような消費者に対して有効なマーケティングは読者・視聴者を借りる"Renting an Audience"から、マーケティング資産を作る"Building Assets"に変化してきているという。オウンドメディアやインバウンドマーケティングに見られるように、媒体から人を借りてくる・集めてくるのではなく、自社で消費者とコミュニケーションをとることができるマーケティング資産を蓄える時代になってきていると強調した。

マスマーケティングやダイレクトメールなど人々に呼びかけて目を奪う従来型のアウトバウンドマーケティングと対比させて、消費者が情報を探しているタイミングに応じたマーケティングコンセプトをインバウンドマーケティングと呼んでいる。インバウンドマーケティングは大きく3つのステージに分かれる。

1、ToFu(Top-of-the-Funnel) 見つけられ、期待される

人々に「見つけられ」てサイトに呼び込み、コンテンツの提供で期待と信用を得て、個人情報を提供してもらうリードジェネレーション(見込顧客の創出)のステージ。検索エンジンやソーシャルメディアからサイトに呼び込み、情報価値の高いコンテンツで個人情報を得るように設計することが重要。

2、MoFu(Middle-of the-Funnel) 顧客の買いたい気持ちを育む

創出されたリードの購買マインドを高め購買プロセスを進めていくリードナーチャリング(見込顧客の育成)のステージ。購買にまでまだ至っていない見込顧客の購買マインドを、「欲しい」・「自分に必要だ」という確信に育成・醸成していく。最適なタイミングで最適な内容のコンテンツを提供することが重要。

3、BoFu(Bottom-of-the-Funnel)

購買意欲の高まったリードとのクロージングのステージ。

相手にとって最適なタイミングで、最適なチャネルで、最適なコミュニケーションを行うことが最も重要だと語った。

BtoCでも広がりを見せ始めたリードナーチャリング

株式会社Nexal 上島 千鶴 氏

株式会社Nexal

上島 千鶴 氏

最後に、リードナーチャリング勉強会の総括を主催者であるNexal上島氏よりいただいた。


国内のリードマネジメントに対する取組も数年前と比べて、ようやく海外に追いついてきたという印象。国内ではBtoB中心に広まってきているが、最近では広告業界も含めtoCの分野でもようやくナーチャリングという言葉が使われるようになり、実践する企業も現れ始めてきた。

そもそもAIDMAなどの言葉がtoCの分野で生まれた考え方であるように、toBとtoCを比べると顧客の購買マインドの変化やその意思決定プロセスが違う。海外ではリードマネジメントにtoB、toCという分けた考え方が存在せず、製造業、製薬業といったように業種で考え方がわかれている。

国内で見ても、BtoBマーケティングでは 見込顧客であるリードが生まれて受注する という基本の流れは同じだが、業種によって購買マインドや意思決定のプロセスが異なってくる。
toCの分野にもリードマネジメントの考え方が広まっていくと、マーケティングオートメーションが持っている、クロスチャネルキャンペーンマネジメント(マルチキャンペーンマネジメント)などのキャンペーン管理の考え方は有効になってくる。しかしキャンペーン=toCの施策 というわけでもなく、展示会やセミナーなどのtoBのプロモーション施策と基本は同じである。

第2部 登壇企業 一覧

  • 株式会社シャノン マーケティングスペシャリスト 嶋田 賢策 氏
  • 株式会社日経BPコンサルティング Webコンサルティング部長 古賀 雅隆 氏
  • 株式会社ジゾン マーケティング部 池上 正夫 氏
  • 株式会社セールスフォース・ドットコム シニアマネージャー 伊藤 靖 氏
  • シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山 一郎 氏
  • 株式会社マーケティングエンジン 代表取締役社長 尾花 淳 氏

関連リンク
株式会社Nexal
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