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再挑戦しやすいローンとは ―企業経営のヒント vol.018

あがたグローバル税理士法人
公認会計士
井口 秀昭

最近、リバースモーゲージが注目されています。
リバースモーゲージとは、主として他に収入のない高齢者が、自宅を担保に今後の生活資金を借りるローンです。借入人が生きている間は、借入のみが発生して返済は行われません。返済は借入人が死亡してから、融資の対象となった住宅を処分した代金により行われます。医療の発達により平均寿命は伸びるのに、国家の財政難から年金水準の切り下げが予想される時代ですから、十分な貯蓄を持たないが資産価値のある自宅を所有している高齢者の利用が期待できるローンです。

リバースモーゲージは借入金返済財源を担保物件処分代金だけに求め借入人には期待しない点で、日本のローンとしてはやや特異な位置づけにあります。

「リコースローン」と「ノンリコースローン」

借入人がどこまで返済義務を負うかという観点から、ローンは「リコースローン」と「ノンリコースローン」の二つに分けることができます。住宅ローンでいえば、ローンの返済が困難になったときに、融資対象物件(担保物件)を差し出してもそれだけでは免責されず、借入人が残った借入金の返済義務を負い続けるのがリコースローン、一方、担保物件となっている住宅を貸出側の銀行に差し出せば借入人はそれ以上の責任を負わないのがノンリコースローンです。

我が国のほとんどの住宅ローンは、リコースローンです。住宅を処分してもローンが完済できなければ、住宅がなくなっても借入人は借入金の返済を要求され続けます。ところが、リバースモーゲージはノンリコースローンです。そもそも借入人は他に収入がない高齢者ですから、そんな借入人に返済を要求することはできません。

考え方の違い

リコースローンとノンリコースローンには、以下のような考え方の違いがあります。第一に信用の根拠をどこに置くかということです。根拠を借りる人に置くのがリコースローン、融資する物件に置くのがノンリコースローンです。また、融資対象物件が値下がりすると、誰かが損失をかぶらなければなりませんが、その値下がりリスクを誰が負うかという見方からは次のようにいえます。ノンリコースローンでは物件を差し出せば借入人はそれ以上責任を追及されないのですから、値下がりリスクは融資側が負うことになりますが、リコースローンでは借入人が負います。

その結果、融資する側の銀行としては、ノンリコースローンでは物件そのものが何より重要になり、物件の収益性なり価値変動を見極めて融資の可否を決定します。一方、リコースローンでは融資対象物件より借入人の信用力が重要ですから、借入人の財産とか収益性の審査に重点を置きます。

人に厳しいリコースローン

リコースローンとノンリコースローンの区別は住宅ローンだけではなく、事業資金にもあてはまります。会社で事業資金を借り入れる場合、社長個人保証がついていればリコースローンですが、個人保証がなければノンリコースローンになります。日本の中小企業の借入の多くは、社長個人保証を要求されますから、ほとんどが個人として返済義務を負うリコースローンだといえます。

不況になると返済が困難になります。リコースローンだと借入人(または保証人)がギブアップするまで返済を続けなければなりませんから、借入人の再出発が難しくなります。ところが、ノンリコースローンであれば物件を差し出せば借入金と手を切れますから、借入人は新事業に踏み出しやすくなります。

リコースローンは人を重視する日本的風土になじんだローン形式だとはいえますが、逆に言えば、不況の時代には人に厳しいものがあり、事業に失敗した人の再挑戦を困難にさせている要因になっています。アメリカは日本よりノンリコースローンが普及しています。アメリカの景気回復が早い理由の一因にこうしたローン形式の違いがあるのかもしれません。資本主義のダイナミズムを取り戻すために、これから我が国も、人と事業を切り離すノンリコースローンをもっと活用する必要があると思います。


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あがたグローバル税理士法人
あがたグローバル税理士法人
井口 秀昭

東京大学経済学部卒業後、農林中央金庫、八十二銀行、タクトコンサルティングを経て、2007年に宮坂醸造株式会社の監査役に就任(現任)。2011年にあがたグローバル税理士法人に入社(現任)。

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