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M&A概論  ―実例解説によるM&Aこぼれ話 vol.001

グローウィン・パートナーズ 株式会社
代表取締役 公認会計士
佐野 哲哉

日本において、M&Aが企業の一般的な戦略として定着してから久しいですが、一方でM&Aは税務・会計・会社法・金融商品取引法・独占禁止法・労働法など、多くの分野に多岐にわたって関係しています。それぞれの分野に特化した専門書はありますが、それがどのように実務で利用されているかについて記載されているものは少ないため、本コラムでは、実例を用いて解説していこうと思います。

各企業のM&Aご担当者様のお役に立てれば幸いです。 今回の第1回目のコラムにおいては、M&Aとは何かについて、概括的にまとめるものとし、第2回目以降で実例に基づいた解説をいたします。

1.M&Aとは何か?

M&AとはMerger&Acquisitionの略であり、日本語では合併・買収と訳されます。合併は企業同士が一つの会社になることですが、買収には、株式購入や第三者割当増資、株式交換、事業譲受、もしくはこれらの組み合わせなど、多くの手法が考えられます。また、合弁会社の設立や株式の持ち合い、経営統合なども広義のM&Aと考えられます。

M&Aは、1990年代後半から会社法や税法等の整備が進んだことから、2000年以降急速に案件が増えています(下図参照)。リーマンショック以降はそれ以前に比べて件数は減ったものの、円高を背景とした日本企業による海外企業のM&Aや、上場企業のTOB、事業承継問題の解決策の手段としてのM&A、ファンド投資先の出口(EXIT)の手段としてのM&Aなど、現在は企業の戦略の一手法として一般的なものになってきました。
 

1985年以降のマーケット別M&A件数の推移

IN - IN:日本企業同士のM&A
IN - OUT:日本企業による外国企業へのM&A
OUT - OUT:外国企業による日本企業へのM&A
  (出典:レコフデータ社 http://www.recofdata.co.jp/mainfo/graph/

2.M&A活用のメリット

活用するメリットは買い手からの視点と売り手からの視点で、異なります。

(1)買い手からの視点

  • 既存事業の拡大、事業の多角化(水平統合) 
  • バリュチェーンの統合(垂直統合)
  • 時間の節約
  • 新規事業進出に対するリスク低減


(2)売り手からの視点

  • 事業の存続、後継者問題の解決(事業承継型)
  • 企業の経営破たんと再生(事業再生型)
  • 企業体質・財務体質の強化
  • 事業の選択と集中 


このほか、MBO(Management Buy Out=経営者による会社の取得)や資本提携、グループ再編など、企業の戦略にしたがって、様々な形でのM&Aがあります。

3.M&Aの実行プロセス

M&Aのプロセスにはいろいろなパターンがありますが、代表的なパターンを以下にご紹介します。

(1)買手が売手を探すケース

(2)売手が買手を探すケース(入札方式) 上記(1)(2)はあくまでもモデルケースであり、中小企業同士の相対取引の場合は、秘密保持契約書⇒LOI⇒DD⇒株価算定⇒最終契約書というステップで終了するケースも多く見られます。 

※FA:Financial Advisor (後述)
※IM:Information Memorandum. 売り手の概要資料。売り手のFAが作成するケースが多い。
※Non Name Sheet:企業名など会社が特定できない程度の簡便な資料のこと。Teaserとも言われる。
※デューデリジェンス:Due Diligence 買収調査のこと。財務・法務・ビジネス・ITなどの調査を行う。

4.M&Aの関係者

M&Aの実行プロセスにおいては、法律や税務、各種手続き、交渉等、多岐にわたる事項を短期間で一気に進めるため、当事者である買い手・売り手は、専門家を雇ってプロジェクトチームを編成し、ディールを進めるのが一般的です。

(1)買い手に関係する専門家

  • ファイナンシャルアドバイザー 証券会社や独立系M&Aファーム、専門家など属性は様々であり、買い手の代理人として売り手との交渉やM&Aのディールプロセス全般を管理・実行します
  • 金融機関(銀行・プライベートエクイティファンド) M&Aには多額の資金が必要となるため、銀行から融資を受けたり、ファンドと協調して買収を検討するケースもあります。買収スキームによっては、M&A実行の鍵を握る重要なプレイヤーとなります。
  • 弁護士 秘密保持契約書やLOI、売買契約書、ローン契約書等、多くの契約書類等の書類作成・レビューのほか、法務デューデリジェンスを行います。
  • 会計士・税理士 M&Aのスキーム(合併、買収、株式交換等 詳細は事項参照)の提案・検討や財務デューデリジェンス、株価算定を行います。
  • コンサルティング会社 ビジネスデューデリジェンスのほか、M&A後のシナジー効果の分析等ビジネス面での統合効果の検討や組織やITの統合に関するコンサルティングを行います。 


(2)売り手に関係する専門家

  • ファイナンシャルアドバイザー 売り手のFAは、原則として売り手企業の価値を最大限に引き上げるための努力をしますが、時には売り手を説得し交渉をまとめる方向に進めることもあります。M&Aは売り手が合意しなければ、成立することはあり得ないため、売り手とFAとの信頼関係がディールの成否に大きく影響を与えます。 
  • 弁護士 契約書のレビューや、M&A全般のリスクについて相談をします。FAを雇わずに売り手の代理人となるケースも多くあります。 
  • 会計士・税理士 スキームの相談や株式価値に関するアドバイスなどを行います。なお、TOB(株式公開買付)による上場企業の買収や、海外企業とのM&Aにおいては、より専門性が高くなり、さらに多くの関係者が登場しますが、ここでは説明を割愛します。

5.M&Aの基本的なスキーム

事業戦略以外にも、売り手、買い手、株主の会計・税務のほか、不動産や借入金の取扱い、資金調達方法など、検討項目は多岐に亘るため、実際の案件においては下記のスキームを組み合わせることも多く、検討・実行には、専門的な知識が必要となります。

(1)株式購入 (2)第三者割当増資 (3)株式交換 (4)株式移転 (5)事業譲受 (6)会社分割(新設分割) (7)合併(吸収合併) 次回以降では、様々なM&Aの実例を用いて、どのようなケースでどのようなスキームが選択され、そこに起こった問題等について解説していきます。


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グローウィン・パートナーズ 株式会社
グローウィン・パートナーズ 株式会社
佐野 哲哉

2000年、ベンチャー企業(現東証上場)の設立に参画し、成長企業の資本政策・資金調達・IPO実務に精通する。その後グローウィン・パートナーズを創設し上場企業の財務会計コンサルティング、経理アウトソーシングの提案、IPO支援などを主導。