経営継承を絶対に成功させるための最重要ポイント!ストーリー3「IPO編」 ―企業には第2の利益がある vol.009
今回は、経営承継の四つ目のストーリーであります株式上場についてお話をしたいと思います。
株式上場とは自社株式が取引所で商品として売買されることで、IPO(Initial Public Offering)と言われます。
IPOによる経営承継ストーリーのメリットとデメリット
株式が投資家にとって魅力ある商品になるため、企業としては高い収益性、成長性を兼ね備えた会社になることが求められます。また株式上場の結果、株式の換金性・流動性(流通価値)が高まるため、未上場のときに比べて、株価は飛躍的に向上します。
基本的には、株式上場後も当分は引き続き自分が経営を行い、将来的に後継者に経営を引き継ぐことになります。また、株式上場時にオーナーおよびその一族は、持ち株の一部を売却することで多額の資金を調達できます。
株式上場による経営承継ストーリーからのメリットは以下のとおりです。
1.オーナーは経営権を維持しながら、株式上場にあたり株式の一部を売却することにより、多額の資金を調達することで財産構成に占める現預金の比率を高め、相続税等の納税資金の準備ができる。
2.株式の換金性が高まるために、株式を相続税等の納税資金に充当できる。
3.会社の知名度の向上により、親族以外からも、より広く後継者を求めることができる。
さらに、上場準備の過程と上場後は、営業面・管理面・財務面で「組織的な経営」の確立を通して、次の様なメリットが大きいと考えられます。
”営業面”では、ブランド力・会社知名度の向上による競争力のアップ、営業情報の拡大、優秀な営業の人材の応募等のメリットがあります。
”管理面”では、計数管理の強化により正確な経営数値が把握され、リスク管理の強化も行われ、「組織的な経営」の基盤が確立されます。
”財務面”では、資金調達が多様化、自己資本の充実がはかれ、事業計画達成のための資金調達が容易になります。
メリットの一方では、以下のように株式上場のデメリットもあります。しかしメリットの方が必ず大きいと考えます。
1.「組織的な経営」のために管理部門の人材充実のためのコストが増加する。
2.上場維持コスト(会計監査・株主総会等)がかかる。
経営承継のためのIPOストーリー
株式上場は、2011年(暦年ベース)22社、2012年(暦年ベース)37社と上場のハードルは極めて高いのが実情です。しかしながら最近は、国家戦略もあり、取引所により、上場基準の変更等で少し上場がしやすい環境になりつつあります。経営承継にもIPOストーリーが使い易くなりつつあるのです。
上場ストーリーで最も重要なことは、上場した会社が継続して成長できるかどうかです。上場準備の段階で、自社のビジネスモデルのSWOT分析を徹底し、自社の強み(S)・弱み(W)・ビジネス機会(O)・ビジネス脅威(T)を明確にしてビジネスモデルのブラシュアップをすることが必要です。上場準備の段階で強みはさらに強くし、弱みは解消します。
これにより継続的に収益を上げ、企業成長が将来に渡って可能になります。
経営承継のためにIPOストーリーを選ぶことで成長できる強い企業体質の企業を目指すことは、結果としてIPOが失敗しても、営業・経営管理・財務面でIPOと同じメリットを獲得できます。ある程度の規模になったら経営者は、IPOストーリーを真面目に考えるべきだと思います。
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- 株式会社プロネット
- 高橋 廣司
中央監査法人、新日本有限責任監査法人で公認会計士として株式公開の支援業務を中心に活動し、20社以上の上場準備支援、1500社以上のショートレビューを経験。2011年株式会社プロネットを設立。現在は代表取締役を務め、様々な分野のプロフェッショナルを結集して企業をサポートしている。
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