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長期大規模工事等の経過措置は通知義務に要注意!  ―企業が避けて通れない「消費税増税」対策講座 vol.005

あいわ税理士法人
マネージャー 税理士
佐々木 みちよ

請負工事に関連した経過措置に、長期大規模工事等の経過措置があります。


<長期大規模工事等の経過措置のイメージ>


長期大規模工事等の経過措置

長期大規模工事等の経過措置のポイントは以下の通りです。

1. 指定日から施行日の前日までに締結した長期大規模工事等で、施行日以後に引き渡すものであること

指定日前に契約締結したものであれば、この経過措置ではなく、Vol.003で解説した請負工事等の経過措置の適用を受けます。

2. 工事進行基準の適用を受けている工事であること

工事の請負は物の引渡しを伴う役務の提供ですから、原則としては引渡日の税率が適用されることになりますが、工事進行基準により前倒しで売上計上している場合には、仮受消費税も前倒しで計上することができます。その場合、施行日前の期間に係る工事対価の額には旧税率が適用されます。

3. 通知義務が課せられること

経過措置の適用を受けた場合には、受注者は発注者に対し、経過措置の適用を受ける旨及び適用を受けた部分に係る対価の額を書面により通知する必要があります。受注者側で旧税率により売上計上した部分は、発注者側でも旧税率により仕入税額控除をすることとされているためです。

Vol.003で解説した請負工事等や資産の貸付に係る経過措置にも通知義務は課せられています。これらの経過措置は、たとえ通知がなかったとしても、発注者側(又は支払者側)で法令上の適用要件を満たすか否かを検討することで経過措置適用の有無を判断できます。一方、長期大規模工事等の経過措置に関しては、通知がないと、経過措置の適用の有無や、適用を受けた金額が、発注者側で判断できないという特徴があります。

通知義務を遵守しなかった場合

通知義務を遵守しなかった場合の罰則は設けられていません。となると、通知を怠った場合にどうなるのかという疑問が生じます。

結論としては、後々のトラブルのもとになると考えます。

理由は以下の通りです。


法人税法上、一定の要件を満たす大規模工事には工事進行基準が強制適用されますが、その要件を満たさない工事には、工事進行基準と工事完成基準の選択適用が認められています。また消費税法上は、工事進行基準による収益計上に合わせて仮受消費税を計上するか否かは任意とされています。したがって発注者側では、受注者が長期大規模工事の経過措置の適用を受けているか否かを判断することができません。受注者からの通知がない場合は、発注者側では原則通り新税率で消費税の仕入税額控除の計算を行うことになります。

その後、発注者に税務調査が入り、調査の一環として受注者側に反面調査が入ったとします。調査官は受注者の帳簿書類を調査し、発注者との取引に工事進行基準を適用して、売上の一部について旧税率により消費税額を計算していたことを把握したとします。受注者側で旧税率により売上計上した部分は、発注者側でも旧税率により仕入税額控除をすることとされているため、発注者は、その部分の仕入税額控除について新旧税率差額分の否認を受けることになります。

否認を受けることとなった原因は、受注者が通知を怠ったことにあります。さらに受注者が、経過措置の適用があることを認識していながら新税率により計算した金額を請求していたとなると、発注者の怒りはますます収まらないでしょう。最悪の場合はその後の取引停止となることも考えられます。

長期大規模工事等の経過措置の適用を受ける場合には、特に通知義務に留意する必要があると言えるでしょう。

【BRO編集部解説】関連事項についての解説

※以下文章は、BRO編集部による解説文です。

コラム本文内にて言及されている内容に関連する補足や、関連する法律等をご紹介します。

【経過措置とは】
新しい法律や制度などが施行される際に、移行前あるいは移行中の契約において、移行後の不利益や不都合を極力減らすために取られる一時的な措置や対応全般を指すもので、消費税に限定される用語ではありません。

消費税は、課税される資産の譲渡等の時期によって適用される消費税率が決まるのが原則ですが、一定の要件に該当する取引の場合、平成26 年4月1日以降の資産の譲渡等についても旧税率が適用されます。これが今回の消費税率引き上げにおける経過措置とよばれるものです。

本コラムにて解説している長期大規模工事等に関する経過措置以外にも、資産の貸付けに関する経過措置や工事の請負等に関する経過措置などが定められています。

【工事進行基準の適用について】
法人税法上、工事進行基準については、平成20年度税制改正により、工事期間の要件が2年以上から1年以上に短縮されたほか、請負代価の要件が50億円以上から10億円以上に減額されるなど、適用される工事契約の見直し等が行われています。

【消費税における工事進行基準の特例】
消費税法17条(工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例)において、法人税法上で工事進行基準を適用している工事については、消費税の課税売上高を法人税法の売上高に連動させて、工事進捗度に応じて課税売上高を前倒し計上することができる特例が認められています。あくまでも前倒し計上することが「できる」という規定であるため、原則通り、資産の譲渡等の時期をその引渡しのあった日とすることも可能です。


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あいわ税理士法人
あいわ税理士法人
佐々木 みちよ

2002年藍和共同事務所(現あいわ税理士法人)入所。大手・中堅企業への組織再編に関するアドバイス業務や連結納税導入前後の税務コンサルティング業務に従事するほか、税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。

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