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第3回:経営チームが守るべき6つのこと|後継問題はこれで解決!

トップマネジメント株式会社
代表
山下淳一郎

”ごくごく小さな事業を除くあらゆる事業において、CEOの仕事は、一人の仕事として組み立てることは不可能だということである。それは、共同して行動する数人からなるチームの仕事として組み立てる必要がある。”― ピーター・ドラッカー


経営の仕事は社長一人でこなせるものではないとドラッカーははっきり言っています。
事実、世の中のニーズはますます多様化し、私たちの仕事もますます複雑になる今日にあって、経営の仕事は、社長一人でできるものではなくなっています。
一人ではできない経営の仕事を、チームの仕事として成り立たせるためのポイントをお伝えしていきます。


【目次】
第1回:経営チームがなければ事業は伸びない
第2回:成功した企業には経営チームがある
第3回:経営チームが守るべき6つのこと
第4回:経営人材を選ぶ5つの視点
第5回:一枚岩の経営チームをつくりたい
第6回:次世代の経営チームをつくりたい
第7回:経営人材はこう育つ


今回は第3回「経営チームが守るべき6つのこと」についてお伝えします。

第一に、それぞれが最終決定者

企業の成長を決定づけるもの

「この商品を開発すべきだと思うが、社長の考えは違うから仕方がない……」
「組織上、マーケティングの責任者は自分だが、実際に決めるのは社長だ……」
「私の決めたことが知らないところで、ひっくり返されてしまった……」
「取締役とは名ばかりで、実際、私は何の権限も持っていない……」
「自分の一存で判断できない仕事が多く、自分で何も決める事ができない……」
「逐一、社長にお伺いを立て、社長に判断を仰いでいる……」
「ボードメンバーは各分野の責任者だが、現実は社長がすべて仕切っている……」

経営チームがありながら、そんな状況になっていないといいのですが…。もし御社がそんな状況になっているとすれば、確実に深刻な問題が起こります。ドラッカーは、こんな事例を紹介しています。

企業の経営の良し悪しを判断する目安を探せ―。これは、ある銀行が融資の調査部門に出した課題です。その課題は、融資部門にとって難しいものでした。利益を出しているからといって良い経営を行っているとは限りませんし、赤字だからといって悪い経営とも言い切れないからです。黒字であっても、新しい商品やサービスの開発にお金を使っていなかったり、採用や育成を行っていなかったり、出ていくお金を抑えて、かろうじて黒字になっているだけかもしれません。今日の黒字が明日の赤字を生むような経営はけっして良いとは言えません。それは、将来の会社に損害を与えているだけです。反対に、今は利益をあげていなくても、長年取り組んできた新しい商品やサービスの開発が実り、大きな黒字になる直前かもしれません。このように、黒字だから良い経営をしているとは限りませんし、赤字だから悪い経営とは言い切れないのです。この銀行の調査部は、何百社もの企業を調べた結果、ある事実を発見しました。要約すると、次のとおりです。経営チームがチームとして機能していない企業は問題が多く、経営チームがチームとして機能している企業は、経営者も士気が高く業績もよい。

これは大企業に限らず、中小企業にも同じことが言えました。その後、経営チームがチームとして機能しているかどうかを基準に、融資の判断を行っていった結果、この銀行の業績は伸びていきました。「経営チームがトップ一人の考えで動かされている状態」と「経営チームが自分たちの総意で動いている状態」。その違いが企業の成長を決定づけるのです。同じ会社で一緒に仕事をしていて、お互いをよく理解していれば仲間と言えるかもしれません。しかし、経営チームは、仲間ではなく、「同志」なのです。経営チームに必要なのは、「仲の良さ」ではなく「仕事ぶりの良さ」です

ドラッカーはこう言っています。

「トップマネジメントがチームとして機能するには、いくつかの厳しい条件を満たさなければならない。チームはシンプルではない。仲の良さで機能させることはできない。好き嫌いは問題ではない。人間関係に関わりなく、トップマネジメントはチームとして機能しなければならない。」(『マネジメント』)

経営チームがあっても、チームとして機能していなければ、力は発揮されません。停滞している企業の経営チームは名ばかりで、意思の疎通もなく、それぞれが担当部門の仕事に忙しくしています。それに対して、成長している企業の経営チームは、お互いの考えを確認し合いながら、それぞれが経営の仕事にあたっています。

行動を起こせない理由

「うちは、もっとちゃんとマーケティングに取り組むべきなのに……」
「ここ数年、目標達成できてないから、具体的な対策を打ち出すべきなのに……」
「競争相手に遅れを取っているのに何もしていない……」
「場当たり的に研修を受講させるより、人材育成プランをつくった方がいい……」

何をやるべきか、経営チームの全員がわかっています。一人ひとり、しっかりとした考えをお持ちで、それぞれが適切な意見を言っています。しかし、具体的なアクションは何も起こりません。やるべきことがわかっているのに何も行動が起こらないことは、会社にとって大損害です。メンバー一人ひとりは、具体的な決定権が与えられていないために行動を起こせないのです。越権行為はできないからです。会社の最終的な全責任を負っているのは、もちろん社長です。重要なことを最後に決めなければならないのも社長です。とはいえ、何から何まで社長の許しをもらわなければ何も決められない組織は発展しません。責任者が何人いても決定権を与えていなければ、その責任者は単なる伝達を主たる仕事とする中継者に過ぎません。なんら具体的な手は打たれないまま、失敗するのを待っているだけの状態に陥ってしまいます。

こうして組織は滅びる

ドラッカーは『マネジメント』の中で、こんな事例を紹介しています。

ある大手製薬会社が、例年の倍という7つの新薬を発売しました。あらゆる国、専門分野、階層からなるチームが1年かけて戦略を立てて、綿密な販売計画を練り上げました。ある新薬の販売はヨーロッパから、ある新薬はアメリカから販売することにしました。あるいは、ある新薬の販売は一般の医師を、ある新薬は専門の医師を主たる顧客対象としました。
ところが、実際にそれらのものを販売してみると、あまり期待していなかった新薬2つが売上げを伸ばしました。逆に期待していた2つは予想外の問題が起こり、売上を十分に伸ばせない結果になってしまいました。しかも期待どおりにいかなかったとき、誰が計画変更の主導権をとるかを決めていませんでした。そのため、無数の会議が開かれ、調査が行われ、レポートがまとめられただけで、なんの行動も起こりませんでした。そのため、とうとう期待した成果をあげることはできませんでした。一方、予想以上の成果をあげた新しい商品についても、その成功をフォローする施策は何らとられませんでした。その結果、類似品を開発した他社に市場のほとんどをもっていかれてしまいました。予想外の問題に遭遇したものについては、経費を大幅に縮小するか拡大するべきでした。誰もがわかっていたことでした。しかし、決定を下すべき人間が誰もいなかったのです。部長は、大きな売上を見せた新しい商品の市場を他社に奪われるという最悪の事態を防げたはずでした。ところが部長は、営業目標や営業計画を変更する権限を持っていませんでした。しかし、誰かが間違いを犯したわけではありませんでした。営業部長は何の権限も与えられていない、指示命令に従う番頭役に過ぎなかったのです。組織は、「誰が何に責任と権限を持つか」を決めておかなければなりません。どんな組織も全体の危機に遭遇するものです。そのとき、明確な命令権が一人の人間に与えられていなければ、組織全体が滅びてしまいます。

そうならないために、どうすればいいのでしょうか。
ドラッカーはこう言っています。

「第一に、トップマネジメントチームのメンバーは、それぞれの担当分野において最終的な決定権をもつ。各メンバーの決定に対し、他のメンバーは異議を唱えることはできない。担当する者が最終決定者である。」(『マネジメント』)

経営チームのメンバーは、具体的な責任と権限を持たなければならないということです。責任とは「なすべき務めとして自身で引き受けなければならないもの」であり、権限とは「あげるべき成果をあげるために自分で決められる範囲のこと」です。責任も権限も与えられないまま成果をあげることはできません。

どの部署にも属さない仕事

「うちの会社は、経営チームのメンバーそれぞれが、担当分野の最終決定者になってますよ…。経営チームのメンバーは一人ひとり担当部門の責任者として動いてますから…」
こうお聞きすることがあります。

「担当部門の責任者」と「担当分野の最終決定者」はまったく違います。「担当部門の責任者」とは、営業部や管理部門の責任者のことです。それに対して、「担当分野の最終決定者」とは、会社全体に関わる分野の責任者のことです。それは、どの部門にも属さないものです。たとえば、経営理念の構築、事業の再定義、経営体制の編成、後継体制の育成、組織の改革、新しい市場の開拓、新しい商品やサービスの開発、新事業の立ち上げ、資金の確保、事業の買収や統廃合決定などです。これらは、経営者が何らかの発動を起こさなければ、勝手に社員がやろうと思ってできるものではありません。このように、「担当部門の責任者」と「担当分野の最終決定者」はまったく違います。経営チームのメンバーは、「担当部門の責任者として動く人」ではなく「担当分野の最終決定者として動く人」です。経営チームのメンバーは、明確な責任と具体的な権限を与えられれば、責任をもって取り組み、必ず成果をあげてくれます。経営チームのメンバーに責任とともに具体的な決定権をもってもらいましょう。

このコラムのより詳しい内容は書籍でもご紹介しています

今回は、経営チームが守るべき6つのことというテーマで、6つのうちの1つ「第一に、それぞれが最終決定者」についてお伝えしてまいりました。第二から第六についての詳細は、ぜひ『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方』でお読みになれます。

本書に書いてあることを実践すると、経営チームが生まれ、世代を超えて繁栄してゆく経営基盤が得られます。

 

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山下淳一郎

トップマネジメント株式会社 山下淳一郎 外資系コンサルティングにてドラッカー理論に基づいたマネジメント支援を行う。現在は、年商100億円から300億円の上場企業に経営チームをつくるコンサルティングを提供している。