経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • 第2回:成功した企業には経営チームがある

第2回:成功した企業には経営チームがある|後継問題はこれで解決!

トップマネジメント株式会社
代表
山下淳一郎

”ごくごく小さな事業を除くあらゆる事業において、CEOの仕事は、一人の仕事として組み立てることは不可能だということである。それは、共同して行動する数人からなるチームの仕事として組み立てる必要がある。”― ピーター・ドラッカー


経営の仕事は社長一人でこなせるものではないとドラッカーははっきり言っています。
事実、世の中のニーズはますます多様化し、私たちの仕事もますます複雑になる今日にあって、経営の仕事は、社長一人でできるものではなくなっています。
一人ではできない経営の仕事を、チームの仕事として成り立たせるためのポイントをお伝えしていきます。


【目次】
第1回:経営チームがなければ事業は伸びない
第2回:成功した企業には経営チームがある
第3回:経営チームが守るべき6つのこと
第4回:経営人材を選ぶ5つの視点
第5回:一枚岩の経営チームをつくりたい
第6回:次世代の経営チームをつくりたい
第7回:経営人材はこう育つ


今回は第2回「成功した企業には経営チームがある」についてお伝えします。

経営者には相棒が要る

「事業を成長させていくためにはCSO(最高戦略責任者)が必要だ……」
「ビジョンを描き、事業を進める仕事は好きだが、管理系の仕事は苦手だ……」
「やってきた仕事は営業だ。マーケティングについてはよく知らない……」
「今後のわが社に、CMO(最高マーケティング責任者)が必要だ……」
「技術の分野は好きだが、人と意思疎通を図ることは煩わしい……」
「気が付けば、組織内のすべての決定に首を突っ込んでいる……」
「組織全体の運営を見てくれるCOO(最高執行責任者)が必要だ……」

1835年スコットランドに生まれてアメリカに渡り、13歳のときから週給100円で働き始めた少年がいました。彼は家が貧しかったため、教育を受ける機会に恵まれませんでした。そんな彼はやがて、橋をつくる会社を創設して大きな成功を収めました。彼はその後、ジョン・ロックフェラーに次ぐ、史上2番目の大富豪となりました。彼は、生涯を通じて、教育、文化、平和機関に3億5000万ドル以上寄付しました。現在、彼の名が多くの施設に冠せられています。カーネギーメロン大学、カーネギー教育振興財団、ニューヨーク・カーネギー財団、カーネギー国際平和基金、カーネギー研究所、カーネギー博物館、カーネギー・ホールなどです。彼の名は、アンドリュー・カーネギー。彼の墓碑に刻まれている言葉はあまりにも有名です。ドラッカーはこう言っています。

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑名に刻ませた、
"おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る"
との言葉ほど大きな自慢はない。これほど成果をあげるための優れた処方はない。

事業の成功がメディアで取り上げられるとき、その成功は、あたかもトップ一人の功績であるかのように伝えられます。しかし、どんなに優れたトップであっても、一人の力で成功しているわけではありません。成功している企業のトップは、必ず誰かの力を借りて成功しています。まさに、「おのれよりも優れた者」が必ずいます。

もっといいイエスを言ってくれる相棒

軍師、参謀、指南役、相談相手など、いろいろな表現がありますが、経営者にはそのような相棒と呼べるパートナーが必要です。パートナーとは、「命令する相手でもなく、役職の上下関係があっても、それを弁えながら、対等な話し合いができる人」です。

たとえば、徳川家康には本多正信、豊臣秀吉には竹中半兵衛と黒田官兵衛、劉備玄徳には諸葛孔明をはじめ関羽と張飛に趙雲子龍がパートナーと言えるでしょう。映画『釣りバカ日誌』に出てくるハマちゃんとスーさんは、社長と課長でありながら、お互い言うべきことを言い合えています。まさに、「命令する相手でもなく、役職の上下関係があっても、それを弁えながら、対等な話し合いができる関係」です。成功している会社の社長には必ず、「イエスと言ってくれる部下」ではなく、「ノーと言ってくれる人」、「もっといいイエスを言ってくれる相棒」が数人います。

事業を通じて社会に貢献することこそ本当の成功です。事業を成功させるためにどうすればいいか。ドラッカーはその具体的な対策を教えてくれています。

対策は簡単である。トップマネジメント・チームを
前もって構築しておくことである。

トップマネジメント・チームとは、経営チームのことです。経営チームは、経営チームが必要になる前からつくっておくことだ、とドラッカーは言っています。「そうは言っても、ワンマン経営のあの会社は成長しているじゃないか!」という声が聞こえてきそうですが、その会社は本当にワンマン経営でしょうか。外側から見ると、「どう見てもワンマン経営だ」と思える会社もあります。しかし、伸びている会社は、必ず経営をチームで進めています。「経営チーム」という部署があるという意味ではなく、数人の協力関係で経営が進められているということです。

アップルの創業者の一人であったスティーブ・ジョブズは一見、強力なワンマン経営者に見えます。しかし、晩年のジョブズが担っていた仕事は、「新しい商品を生み出すこと」と「新作商品の発表」だけでした。その他の仕事は当時ナンバー2であったティム・クックが担っていました。

経営をチームで進めていたのです。スティーブ・ジョブズがこう言ったのは有名です。「私のビジネスモデルは、ビートルズだ。4人でお互いの弱点を補い合っていた。バランスが取れていて、4人以上の力を発揮できていた。ビジネスというのはそういうものだ。偉大なことは、ひとりではできない。チームによってのみ成し得ることができる。」

マイクロソフトのビル・ゲイツは、技術面と対外活動だけを担当していました。経営全般を見ていたのは、マイクロソフトに入社した30人目の従業員で、のちに社長になったスティーブ・バルマーでした。バルマーは、技術者であるビル・ゲイツにとっての経営アドバイザーという役割を果たし、マイクロソフトを大企業に仕立て上げた立役者です。

ソフトバンクもワンマン経営ではない

今や時価総額規模で日本企業の十本の指に入るソフトバンクも、一直線に成長してきたわけではありません。様々な窮地を何度も何度も乗り越えて、現在の巨大組織を築き上げたのです。

もちろん、ソフトバンクの事業構想は、孫社長によるものでしょう。しかし、経営判断のすべてを一人で行ってきたわけではありません。ソフトバンクはかつて、4年連続で年間1000億円もの赤字を出していました。多角的に事業を展開していたソフトバンクは、少しでも赤字を抑えるために、様々な事業を売却しなければならない絶体絶命の窮地に追い込まれました。

2000年、みずほ銀行の副頭取とみずほ信託銀行の会長を務めた笠井和彦氏は、取締役としてソフトバンクに参画しました。その頃、孫社長は大きな決断を2つ行いました。一つはモバイル事業に乗り出すこと。そして、もう一つはプロ野球球団を持つことでした。インターネットの利用が、パソコンからモバイルへと拡大する時期、パソコン関連事業の行き詰まりを感じていた孫社長は携帯電話事業へ手を広げるべきかどうか思いあぐねていました。携帯電話事業に参入するといっても、大きな不況による損失で資金は十分ではなく、当時のソフトバンクに今ほどのブランド力はまだありませんでした。できない理由だけが多くあったのです。

一見無謀とも思える孫社長の考えを後押ししたのが、取締役の笠井氏です。「ブランド力がないなら、プロ野球チームを買収して知名度を高めれば良い」「お金が足りなければ、お金を貸してくれるところを見つければ良い」笠井氏はそう言い、全体を見渡しつつ、孫社長やソフトバンクの将来を信じて、孫社長の背中を押してくれる存在でした。実際、携帯電話事業に参入するためにボーダフォンを買収する際、自社で権利を何%持つか議論になったときです。孫社長はリスクも考え、50%をソフトバンクが持つべきだと考えたのに対し、笠井氏は100%保有を主張しました。

一方、このような笠井氏が一度だけ孫社長に反対したことがありました。それは、ソフトバンクの上場取り消しについてです。株価が暴落したとき、孫社長は多くの株主を巻き込んだことを悔いて、上場廃止を決断しました。そのとき、常に孫社長の後押しをしてきた笠井氏が「絶対に反対です」と初めて異を唱えました。「ソフトバンクはもっと世界に大きく羽ばたけるはず。我々の夢を個人企業にして小さくしていいのか」と孫社長の考えを制するだけでなく、孫社長が下した決断に修正を迫ったのです。

アメリカの通信会社を買収し世界の携帯電話市場へ進出しているソフトバンクが今日あるのも、笠井氏の支えがあったからです。笠井氏の反対がなければ、ソフトバンクの今の姿はなかったかもしれません。ドラッカーはこう言っています。

経営書や組織論が何といおうとも、
優れた経営を行っている企業にワンマンはいない。
それらの企業はCEOのチームをもつ。

では、どうなっていれば経営チームと言えるのでしょう。それは次回お伝えします。

このコラムのより詳しい内容は書籍でもご紹介しています

本書に書いてあることを実践すると、経営チームが生まれ、世代を超えて繁栄してゆく経営基盤が得られます。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
トップマネジメント株式会社
トップマネジメント株式会社
山下淳一郎

トップマネジメント株式会社 山下淳一郎 外資系コンサルティングにてドラッカー理論に基づいたマネジメント支援を行う。現在は、年商100億円から300億円の上場企業に経営チームをつくるコンサルティングを提供している。