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第1回:ベンチャー企業が成長するための必須知識「法務デューデリジェンス」|「法務デューデリジェンス」で会社のリスクを洗い出せ!

弁護士
佐藤義幸

現在、企業のコンプライアンス、コーポレートガバナンスへの取り組みの重要性が高まっています。これらは、訴訟など企業のリーガルリスクを回避するための施策という意味で “企業の生命線”とも言える重要課題です。本連載では、先ごろ、書籍『法務デューデリジェンスチェックリスト』でもご紹介している「法務デューデリジェンス」の意義と実施のポイントについて説明します。


【目次】
第1回:ベンチャー企業が成長するための必須知識「法務デューデリジェンス」
第2回:中小企業の自己診断に「法務デューデリジェンスチェックリスト」の活用を
第3回:ベンチャーキャピタルにもお勧め!「法務デューデリジェンスチェックリスト」で効率アップを
第4回:弁護士にも活用してほしい「法務デューデリジェンスチェックリスト」 


今回は第1回:ベンチャー企業が成長するための必須知識「法務デューデリジェンス」について説明します。

「法務デューデリジェンス」と言う言葉、知ってますか?

デューデリジェンスとは、企業がM&A(買収等)を行う場合に、買収をする企業が、対象企業の実態を調査することを指します。デューデリジェンス(デューデリ、DDとも呼ばれる)、では対象会社の法務、財務、税務、ビジネス、環境、人事、情報システムなどを調査するのですが、この法務調査が法務デューデリジェンスにあたります。近年では、M&Aの売り手側が取り引に先立って、事業や資産などの売却対象に潜在する問題点を把握するために自ら調査を行う例も増えており、「Seller's DD」とも呼ばれています。また、当然IPO(上場)を控えた会社にとっても必要不可欠なものです。

この法務デューデリジェンスの必要性が今改めて認識されつつあるのですが、案件の規模によっては、費用等のために法律問題の調査はどうしても後回しになりがちです。

ベンチャー企業にこそ必要な「法務DD」

ベンチャー企業や中小企業は成長性を追及するために、多くのリスクを取って新しい事業にチャレンジしていかなければなりません。リスクが多いので、当然リスク管理をする必要があります。成長性とリスク管理は常に車の両輪のようなものですから、法務デューデリジェンスなどを行って自社のリスクをチェックし対応策をとることは、ベンチャー企業や中小企業にとってはマストです。

重要なのは、今までリスク管理をしてこなかった会社が自社のリスク管理をしようと思ったとき、「結局何がリスクなの?」というものをどこまで自覚できるかどうかです。「うちの会社のリスクって何だろう?」と考えると、何が問題なのかが分からない、問題自体を自覚していないといったケースも多いです。

もちろんそれを自覚しないままでもずっと成長できるかもしれないし、リスクが顕在化する(問題化する)機会がないまま、上場まで行ってしまうこともあり得ます。

しかしそういった法務面でのリスクを抱えたままにしておくと、いつかそのリスクが顕在化した際に、訴えられたり、不祥事が起きて会社が大損害をこうむったりといった結果を招く恐れがあります。

もしそういう状況になったとき、ベンチャー企業や中小企業にとって何が最大の問題かというと、経営層が事業に集中できなくなるということです。

訴訟や紛争をかかえたまま新規事業を発展させていかなければならない。時間もお金も取られる。これは精神的にもかなりつらいです。場合によっては会社をたたまなければならなくなります。そこを避けるためにどうしたらいいかというと難しい話ではありません。重要なのは今何が問題なのかと、また将来的何が問題になりそうかと、問題点について常にアンテナを張ることです。そのためには、弁護士と顧問契約をして常に相談できるような体制を取っておく、または会社メンバーの中にある程度法律に詳しい人間を入れておくなど、いろんな方策があります。しかし金銭的に余裕がないなどの理由で、必ずしも全ての会社がそういうことをできないことも実情です。であれば何が問題かを自覚するためのチェックリストを見て、自分の会社の状態をチェック・診断だけでもしてみたら、ある程度自覚ができるはずです。そのためのチェックリストをまとめたのが書籍『法務デューデリジェンスチェックリスト』です。

法務デューデリジェンスチェックリストは「会社の健康診断」

法務デューデリジェンスチェックリストは例えるなら会社の自己診断キットです。そもそも何が問題かさえ分からないと、その問題が目の前にあっても目に入りません。たとえば従業員の残業代の管理において「従業員の残業を分単位で把握していますか?」というチェックポイントあった場合に、「えっ、うちはそこまでしてないよ。残業は自己申告で10分単位にしているんだけど、それっていけないの?」ということに気づくことになります。そういうことを知っているのと知らずに経営しているのでは、労務トラブルのリスクが違ってくるはずです。

ベンチャー企業でも中小企業でも、自分の会社を一度セルフチェックすれば、リスク管理という意味では少なくとも今よりは格段に向上するはずです。

また、こうした法務デューデリジェンスはIPO(上場)やM&Aを目指す企業であれば当然実施すべきことですが、もっと企業の間でスタンダード的なものになってくれば、実際に無用な紛争を避けられるはずです。そうすれば業界全体が無駄なリーガルコスト(法的費用)をかける必要がなくなり、なおかつ経営者は本業に集中することができる体制が作れる。そんな理想の社会、世の中が作れるのではないかなと思っています。

このコラムのより詳しい内容は書籍でもご紹介しています。

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弁護士
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佐藤義幸

山口県出身。京都大学法学部・ニューヨーク大学ロースクール卒。弁護士。90年代の半ばからスタートアップ企業の法務・知財戦略支援、ベンチャー投資ファンドの組成・投資支援、IPO支援など、多くのベンチャー関連業務に携わる。