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第5回 具体的な予実管理手法(後編)|3社でIPOを実現した経営参謀が説く、IPOを実現する経営計画・予実管理

株式会社ショーケース・ティービー
取締役CFO
佐々木 義孝

本連載では、「3社でIPOを実現した経営参謀が説く、IPOを実現する経営計画・予実管理」をテーマに、3社のIPOいずれも下方修正していない経営参謀が、「上場ゴール」にならないための経営計画づくりを全6回に分けて具体的にお示ししたいと思います。


【目次】
■第1回:「上場ゴール」にならないための経営計画とは
■第2回:業績予想達成という重責
■第3回:経営計画の現実性とは?
■第4回:計画策定の具体的手順
■第5回:具体的な予実管理手法(前編)
■第5回:具体的な予実管理手法(後編)
■第6回:KPI管理の重要性


今回は第5回:計画策定の具体的手順(後編)について説明します。

「影響分析」と「課題達成」

 予実差異分析では「原因分析と影響予測」を心掛けるべきです。

ある事象に対して「なぜ起こったのか?」「その原因は何なのか?」ということは大体の人が考えることができます。しかし「それがどういうことを及ぼすのか?」「それによる影響は何なのか?」を考えられる人は少ないのです。

 何か物事が起こった時、おそらく原因は本能的に考えると思いますが、影響はあまり考えていないと思います。実はこの原因の分析「なぜ?」も重要ですが、影響の予測「それで?」のほうが物事を判断する上で重要です。

 結果の分析は即座に求められるものではありませんが、影響の予想というのは、悪い事象であればあるほど早めに食い止めるために早い判断が必要となります。

 その事象についての原因分析と同時に、影響予測、メリット・デメリット含めて何の影響が及ぼされるかをコメントとして記載します。これにより、どんな環境変化にも耐えうる予実管理となっていくものと思います。

 そして「問題」と「課題」は似て非なるものなので明確に分けて記載します。問題とは設定してある基準と現実との対策として克服する必要のあるギャップであり、課題とは設定しようとする目標と現実との対処を必要とするギャップです。

 例えば経営指標において、設定してあるROE(株主資本利益率)が20%で実際のROEが18%であった場合、これは問題、設定してあるROEが20%でこれを25%に向上させる場合、これは課題ですので、問題は「解決する」と言い、課題は「達成する」と言います。

 問題解決は、顕在化した問題、先程の例で言うと株主に20%のリターンを約束しているのにそれを満たしていないので、まずはこれを満たさなければなりません。そしてその更に上の目標を目指すことで課題は生まれます。ですので、課題は現状維持からは生まれないのです。決められた計画以上を達成しようとするときに、初めて課題は生まれます。

 問題の対処は当然のこと、想定される様々な変化に対応するため、目標・予算を掲げ、そのための課題を一つずつクリアして、計画達成に近づいていくことを意識して分析することを忘れてはいけないと思います。

 また予実差異分析コメントは、当月のみならず、累計や通期見込みを踏まえて作成します。できれば前年対比の分析コメントもあったほうが良いでしょう。

予実管理フォーマット

 この予実管理分析フォーマットは同じExcelシート上で一緒に管理すると効率的です。具体的には、シート1は前月の予算と実績の比較表(単月・累計)及び通期予算と着地見込みの比較表、シート2は前年対比の比較表(単月・累計)、シート3は予算及び前年実績、シート4は実績(前月まで)、シート5は着地見込(当月以降)としておきます。

 そうすると、シート4に前月実績、シート5に当月以降の着地見込を貼り付けるだけで、会議に提出できる予実管理表を完成させることができるようになります。

 予実管理表フォーマットは、会計ソフトから出力できる既存の試算表を貼り付ければ一発で作成できる形にする方が良いでしょう。

 そこで、Excelフォーマットのシート3は月次予算数値及び月次前年実績を貼り付けておき、シート4は試算表、シート5は各部門に依頼する当月以降の着地見込表をそのまま貼り付けられるようなフォーマットにしておきます。

 そして、シート1での予算欄とシート2での前年欄はシート3から計算式により引用し、実績欄はシート4、着地見込み欄はシート5から計算式により引用し、会議に相応しい見た目に整えておきます。

 以上により、毎月、試算表をシート4、着地見込み表をシート5に貼り付けるだけで、会議に提出できる予実管理表を完成させることができます。
ただし、これも結構なアナログ作業なので、会計ソフト上で経営会議用のフォーマットが出来上がるようにカスタマイズできれば最高ですが、それが難しければ予算管理システムを作って会計ソフトと連携して数値を流し込めば出てくるような仕組みを作るのがベストです。

 

 ベンチャー企業の場合、取締役会で報告する月次予実分析資料はCFOや経営企画室責任者が自らの手で作成すべきです。会計ソフトを自ら見て商品別の売上トレンド、支払先及び使用用途別の経費の予実をチェックして変化の兆しを肌で感じ読み取ることが重要です。

 数値を扱う部門は決算数値をまとめるだけでなく、その数値の要因について外部に説明できるように分析した上で、課題や影響の的確な把握、そして施策や戦略を策定しなければなりません。それが上場企業としてのアカウンタビリティを果たすということです。

「数値」を分析してイノベーションを創造

 コーポレート部門は数字に強くなくてはなりません。強いとは計算能力や処理能力のことをいうのではありません。表面上の数値を見て、前年と比べて、良かった、悪かったではなく、その数値の裏を読み取らなければなりません。置かれた市場環境等の外部環境、強み・弱み等の内部資源、前年比だけでなく、立てた予算や競合他社との比較、様々な視点から数値を分析し、その数値から会社の課題や影響を読み取り、改善策を一人一人が考えていく必要があるのです。

 会社では様々な課題がありますが、一般的に上場していないと全体的に数値に対する意識はあまり高くない感があります。上場すると否が応でも外部から数値について問われ、瞬間に株価という一つの数値もついてくることになります。

 もう一段階ステップアップするために重要な点は、数値から課題を読み取り、改善につなげる能力が問われています。特にコーポレート部門は営業のように数値を作る部門ではないので数値を分析し、課題を抽出し、戦略につなげ、そしてイノベーションを生み出すため、せめて、数値は頭に入れておく必要があります。

 イノベーションを提唱したシュンペーターは、経済の発展とは「経済が自分自身の中から生み出す経済生活の循環の変化のことであり、外部からの衝撃によって動かされた経済の変化ではなく、『自分自身に委ねられた』経済に起こる変化とのみ解すべきである」と定義しています。そして、「新結合」(=イノベーション)が非連続的に現れることができるときにのみ、発展が実現すると主張しています。

まず、数値をしっかりと把握しておけば、数値と日常業務をつなげあわせて見えてくるものもあり、一人ひとりがその認識を持つとイノベーション(新結合)を自ら生み出す強い組織力が身についてくると思います。

 そして取締役会や経営会議でフィードバックし幹部層で検証し次なる施策を即座に考えていくことです。特に経営会議は最低月2回実施(月初と月中)が良いでしょう。

 次に述べる「KPI管理」は月初の経営会議で速報数値ベースでの共有を図り、経営層で施策を検討します。月中の経営会議で、その施策の状況と確定数値の予実をもとに軌道修正や更なる施策を検討します。

 当然、KPIに関しては社内のグループウェアなどで常に把握できる状況にしておくことが必要です。例えばショーケース・ティービーでは、管理本部の情報システムチームでエンジニアを抱え、このようなKPI管理を可能とする販売・顧客管理システムを構築しています。現場の状況が逐一把握・共有できる仕組みをつくるとともに現場の要望でシステムを構築したり、双方向の管理、フィードバック体制を構築しています。

このコラムのより詳しい内容は書籍でもご紹介しています。

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佐々木 義孝

株式会社ショーケース・ティービー(東証1部上場)取締役CFO。中小企業診断士。3社IPOを実現し、いずれも業績予想の下方修正なく着地するといった経営マネジメントとして特筆すべき実績を残している。