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第5回 具体的な予実管理手法(前編)|3社でIPOを実現した経営参謀が説く、IPOを実現する経営計画・予実管理

株式会社ショーケース・ティービー
取締役CFO
佐々木 義孝

本連載では、「3社でIPOを実現した経営参謀が説く、IPOを実現する経営計画・予実管理」をテーマに、3社のIPOいずれも下方修正していない経営参謀が、「上場ゴール」にならないための経営計画づくりを全6回に分けて具体的にお示ししたいと思います。


【目次】
■第1回:「上場ゴール」にならないための経営計画とは
■第2回:業績予想達成という重責
■第3回:経営計画の現実性とは?
■第4回:計画策定の具体的手順
■第5回:具体的な予実管理手法(前編)
■第5回:具体的な予実管理手法(後編)
■第6回:KPI管理の重要性


今回は第5回:計画策定の具体的手順(前編)について説明します。

計画統制の具体的方法

 これまでの回でも繰り返し申し上げておりますが、一度公表した予算や中期経営計画は公約となります。公約を実現するためには、「目標を目指して努力します」と精神論を表明しても何の担保にもなりません。だからこそ予実管理、統制が必要になります。

 売上面での管理ポイントは、前述のとおり週単位での見込みの把握ですが、コスト面での管理ポイントは、次の4点の意識を醸成することが重要と考えています。

部門長レベルが自ら事業部の間接費配賦を含めた損益計算書予算を策定することと、その達成如何で人事評価やインセンティブが決まる仕組みを構築することでコスト意識は高まると考えます。多くのベンチャー企業は売上の管理しかできていない現状がありますが、ここまでできれば予実管理の精度は突出するでしょう。
 

①事業部損益計画に加え資金計画も作る

 人々が僅か僅かと思いつつ支出する経費の集積ほど恐ろしいものはありません。会社のお金をかけることについて痛みを持つことが何よりも大事です。鈍感になってはいけません。

 また、キャッシュフローは人間に例えると血流であり、会社全体でコントロールしなければなりません。キャッシュマネジメントがうまくできないと経営活動に甚大な影響を及ぼすことになります。会社全体の資金計画は勿論、きちんと部門長レベルであっても資金計画を管理することが理想です。

 社員、部門長レベルに至るまで、今自分がしていることのコストを常に考えることです。細かい話ですが、備品、事務用品等も管理方法、場所までも考え、会社全体で目録を作成し管理することが大事です。基本的には各人のコスト意識の欠如が問題となります。勿論時間優先の事態ではその限度もありますが、互いに注意をし合える仕組みが必要です。


②人件費コスト

 人件費は多くの会社で最も大きな固定費であり、通常社員が得ている給与の3倍は会社が負担しています。したがって、単純作業で自社のノウハウとして残らないものはアルバイト、もしくは派遣や業務委託で十分であることが多いでしょう。

 休日出勤が必要な場合がありますが、それにより休日出勤手当ても会社は負担することもあり、また代休を取得すれば平日の労働力を失います。現在、働く時間は削減することが求められる時代ですが、会社としては法律の範囲内で残業してもらった方が新たに1人を雇い入れるよりも現社員の追加的コストの方が低く済むものであり、また、仕事の日数を減らそうと思うと時間を掛けることが必要になり、時間を掛けるほど良い仕事の成果が出る場合もあります。生産性高く人員を如何に効率的に回せるかは計画達成の上で最も重要な要素です。


③時間コスト

 世の中に無駄なことはないと言います。そのことをすべきかどうかだけで考えれば大抵のことは行った方が良いかもしれません。しかし一つのことを行えば他のことを行う機会を喪失するものです。即ち時間は大切なコストなのです。最も効果の高いことを優先的に重点的に行うべきです。


④売上のコスト弾力性

 そのコストをかけるべきかどうかは、そのコストをかけることにより得られるものとの比較考慮により決まります。100万円のコストをかけ、それ以上に収益が上がるのであればかけるべきです。それが「限界コスト」の概念です。

 したがって、予算を決めるものの、それは可変的に変化します。それ以上の効果があることについては投下すべきなのです。
 

 予算統制全体としては、「予実管理表」をもとに、経営会議等では、経営陣が数字を見ながら「売上が未達なのは、どの事業が原因か?」、「事業別の売上総利益率は?」、「売上は増加しているのに営業利益が減少しているのはなぜか?」など、限られた時間の中で様々なことを議論します。 

 

 そこで、予実管理表作成に当たっては、経営会議等の論点を事前に予測した上で、できる限りシンプルで、見やすくわかりやすい資料を作成することが重要です。例えば、次のような工夫が考えられます。

・各勘定科目を売上高で割った百分率(売上比)を表示する

 売上総利益率、売上高人件費比率など、各勘定科目を売上高で割ったパーセンテージは、各分析をするに当たり最も重要な指標の一つです。

・売上高、売上原価、売上総利益は、内訳項目として事業別はもちろん商品別の数字を表示する

・販売管理費は属性により分類する

販売管理費は費目により、変動費として売上に連動するもの、従業員数に連動するもの、販売促進に連動するもの、地代家賃のように固定費として毎月一定額発生するものなど性質が異なります。そこで、販売管理費は変動費と固定費に分類し、小計欄を表示しておくと見やすくなります。

・主要KPIの予実情報を表示する

どこまで細かい数値を表示するかは各企業によりますが、会社全体の予実分析をするに当たり必ず議論にあがる主要KPIは表示しておくと良いでしょう。

・単月・累計だけでなく、通期予算に対しての着地見込みを組み込むこと

 年次予算、四半期予算等に対する進捗度合を確認するために、期初からの月次累計予算実績比較のみならず通期予実見込み比も表記しておくと良いでしょう。

 更には前年同月比較や前年同月累計比較、ベンチマークする会社との比較などもあると更に充実度は増します。前年同月比較は成長の度合いや季節変動など様々なトレンドが読み取れる可能性があるので作成することをお勧めします。

・予実差異分析コメントはアクセントをつける

 一般的に、予実差異分析コメントは予実差異が大きいものに絞り、一定のルール(例:差異100万円以上又は10%以上)に基づき入力します。しかしながら、予実差異分析コメントの内容は、当月の経営会議等で議論すべき本質的な内容から、出席者全員にとって既知のものまで様々です。入力にあたっては経営会議等で議論すべき本質的な分析コメントに網掛けするなど、アクセントをつけて作成すると良いでしょう。

このコラムのより詳しい内容は書籍でもご紹介しています。

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佐々木 義孝

株式会社ショーケース・ティービー(東証1部上場)取締役CFO。中小企業診断士。3社IPOを実現し、いずれも業績予想の下方修正なく着地するといった経営マネジメントとして特筆すべき実績を残している。