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第3回:ベンチャーキャピタルにもお勧め!「法務デューデリジェンスチェックリスト」で効率アップを|「法務デューデリジェンス」で会社のリスクを洗い出せ!

弁護士
佐藤義幸

現在、企業のコンプライアンス、コーポレートガバナンスへの取り組みの重要性が高まっています。これらは、訴訟・紛争や不祥事などの企業のリーガルリスクを回避するための施策という意味で “企業の生命線”とも言える重要課題です。本連載では、先ごろ、書籍『法務デューデリジェンスチェックリスト』でもご紹介している「法務デューデリジェンス」の意義と実施のポイントについて説明します。


【目次】
第1回:ベンチャー企業が成長するための必須知識「法務デューデリジェンス」
第2回:中小企業の自己診断に「法務デューデリジェンスチェックリスト」の活用
第3回:ベンチャーキャピタルにもお勧め!「法務デューデリジェンスチェックリスト」で効率アップを
■第4回:弁護士にも活用してほしい「法務デューデリジェンスチェックリスト」 


今回は法務デューデリジェンスにかかる費用感や、法務デューデリジェンスを効率良く実施するための方法をご紹介します。

法務デューデリジェンスにかかるコスト

法務デューデリジェンスで取り扱う分野は、「会社組織」「株式」「契約」「資産」「負債」「知的財産」「人事労務」「許認可および規制遵守」「訴訟その他の紛争」など多岐にわたり、各分野においてそれなりの知識と経験が必要になります。

通常、1つの会社の法務デューデリジェンスを1人の弁護士だけで行うことは難しく、どんなに小規模であっても2~3名の弁護士がそれぞれ得意な分野を中心に担当することになります。法務デューデリジェンスのコストは、そのほとんどは弁護士の人件費ですので、担当する弁護士の数に応じて費用もかさんでしまうのが通常です。

大規模な案件の場合には、先に挙げた9つの分野ごとにそれぞれ複数の専門の弁護士が担当することもあります。そうなると、法務デューデリジェンスの実施費用だけで数千万円~1億円ほどかかる場合もあります。

特定の分野に精通した専門家を揃えようとすると、必然的に弁護士の数が増えていき、どんどんコストが高くなってしまう。それが、法務デューデリジェンスが高コストになってしまう要因の1つです。

「法務デューデリジェンスチェックリスト」でコスト削減を

法務デューデリジェンスを実施する際、チェック項目をある程度標準化しておき、ポイントを絞ることで、より少ないメンバーで遂行することができれば、コストを抑えることができます。

私が書籍「法務デューデリジェンスチェックリスト」を執筆したきっかけは、あるクライアントから小規模のM&Aの法務デューデリジェンスを依頼された際、クライアントの予算に応えることができずに断ることになってしまい、気まずい思いをしたという経験からです。

法務デューデリジェンスという業務は、単に企業の法務的な問題点の発見だけではなく、「その問題をどう解決するか」というソリューションまで含まれます。それ故、先に挙げた9つの分野における問題点を洗い出し、さらにソリューションまで考えて提案するというのは、それなりの知識と経験が要求されるのは事実です。

しかし、法務デューデリジェンスの調査事項の7、8割は共通することが多く、発見される問題点も似たり寄ったりの面がありますから、標準的なチェック項目については、専門分野によらず、弁護士であれば、当たり前にこなすことができてもおかしくありません。

また、法務デューデリジェンスで時間がかかるのは、調査自体というよりはレポートの作成部分です。ある程度しっかりとしたチェックリストがあれば、どの項目をどのように調査した結果、どのような問題点が発見され、その問題点についてはどのようにすれば解決可能である(または解決困難であるから取引を進めるべきではない)というふうに、ポイントを簡潔にまとめたレポートの仕方も工夫でき、生産性の高い法務デューデリジェンスを実施できるのではないでしょうか。

ベンチャーキャピタルや投資家にもお勧め

支配権の取得を目的としていないベンチャーキャピタルや投資家については、自分たちで法務デューデリジェンスを行っている所も多いです。

例えば企業価値が数億~10億円程度の会社の、約10%から20%の株式取得を目的とする取引の場合でも、投資金額は数千万からせいぜい1、2億円といったところです。まして、シード段階で多く見られる、投資金額が1000万円前後の場合には、コスト的になかなか外部の弁護士には頼みにくいでしょう。

またスタートアップ企業の場合は法務管理体制が整っていない場合も多く、成長性のありそうな企業で、経営者も信頼できそうであれば、とりあえず投資を行って、追々、法務管理体制を整備させていけばよいと考えるのも無理はありません。

とはいっても、一昔に比べると投資金額も大きくなってきていますし、スタートアップ企業への投資の回収法として、M&Aも増えてくると予想されています。その際、今度は、自分が売る側に回ることになるのですが、自分が投資した際には見過ごしていた法律問題が明るみに出て、売れなかったり、買い叩かれたりした場合には、責任問題になりかねません。その意味でも、投資先の法務面のチェックは避けて通れない時代になっているといえます。

自分たちで法務デューデリジェンスを行うところでは、自社でチェックリストを作成している所も多いと思いますが、「法務デューデリジェンスチェックリスト」を活用いただくことで、チェック項目に不足がないか等の検証に役立つのではないかと思います。

また法務デューデリジェンスを外部に依頼している場合でも、「法務デューデリジェンスチェックリスト」を使って、自分たちで事前にある程度投資対象企業をチェックすることで、「この項目は調査依頼する必要がないな」「ここは心配だから調べてもらおう」といったことが判断できるようになります。

外部に法務デューデリジェンスをただ丸投げするのではなく、「どの分野のどの項目を、どのようなレベル感で調査してほしい」という依頼の仕方ができるようになると、コスト削減にもつながります。

投資家と専門家の間に共通認識を

法律事務所や弁護士から「今回の法務デューデリジェンスは、どこをどのレベル感でやりましょうか?」と聞かれた際に、依頼主が法務デューデリジェンスについてよく分っていないと、「じゃあ取りあえず全部見てもらえますか?」ということになってしまい、本来なら必要のない無駄なコストがかかってしまいます。

依頼主側からきちんと「こことこの部分だけ見てください」と伝えられるようになると、無駄なコストを省くことができるわけです。話し合う上での共通の土台、基準のようなものがない場合には、そもそも議論のしようがありません。

「法務デューデリジェンスチェックリスト」のようなものがあれば、「あ、この分野はこのレベル感までは要らないですね」「この項目はこのレベルで」といった話ができるようになります。

初回のキックオフミーティングでそうした共通認識をとっておけば、法務デューデリジェンスを効率よく実施できるのではないでしょうか。

このコラムのより詳しい内容は書籍でもご紹介しています。

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佐藤義幸

山口県出身。京都大学法学部・ニューヨーク大学ロースクール卒。弁護士。90年代の半ばからスタートアップ企業の法務・知財戦略支援、ベンチャー投資ファンドの組成・投資支援、IPO支援など、多くのベンチャー関連業務に携わる。