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税率引上げ前後の価格交渉は転嫁拒否と受け取られる可能性も!  ―企業が避けて通れない「消費税増税」対策講座 vol.010

あいわ税理士法人
マネージャー 税理士
佐々木 みちよ

今回は、消費税の転嫁拒否行為について解説いたします。

転嫁対策措置法の施行

消費税は消費者が負担する税金で、商品の販売やサービスの提供などの取引に対して課税されます。

最終的に消費者に商品などが引き渡されるまでの各取引段階では、数々の事業者が取引に係わっています。その各取引段階で、事業者間の力関係などの理由から消費税の転嫁ができなかった場合には、転嫁できなかった消費税は事業者が自身の利益を削って負担することとなり、事業者の経営に多大なる影響を及ぼす結果となります。

そこで今回の消費税率引上げに際しては、円滑な転嫁を可能にするための「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下、「転嫁対策措置法」といいます)が施行されています。

消費税の導入時(平成元年)や、税率を3%から5%に引き上げた時(平成9年)には、このような転嫁対策措置法はありませんでした。今回の税率引上げでは、この転嫁対策措置法により転嫁拒否等の行為に対する監視・取締りが強化されることになります。

転嫁対策措置法の違反行為とは

商品やサービスの価格は、本来は事業者間で自由に交渉して決定されるべきものです。

しかし、消費税率が引き上げられる平成26年4月1日以降の取引に対し、合理的な理由なく取引価格を引き下げようとする行為は、転嫁対策措置法の違反行為となる可能性があることに注意が必要です。

具体例でみていきましょう。

B社(システム開発業)は、A社(事務機器販売業)からOA機器を購入し、機器の保守契約を月額1万円(税抜き)で契約しています。B社は転嫁対策措置法上の特定事業者に該当し、A社は特定供給事業者に該当します。



1. 「買いたたき」に該当する場合

A社は、平成26年4月1日からの消費税率引き上げ決定を受け、平成26年4月分以降の月額保守料が税込10,800円となる旨をB社に申し入れたとします。これに対してB社が、合理的な理由なく、「税込月額10,500円を継続させてもらいます」とか「税込月額10,600円ならいいですよ」と言ってA社の申し入れを拒否する行為は、転嫁対策措置法が違反行為として定める「買いたたき」に該当します。 



2. 「減額」に該当する場合

A社は、平成26年4月1日からの消費税率引上げ決定を受け、平成26年4月分の保守料を税込10,800円で請求したとします。これに対してB社が、合理的な理由なく、税込10,500円しか支払わない行為は、転嫁対策措置法が違反行為として定める「減額」に該当します。

違反行為に対する指導

転嫁対策措置法では、違反行為を防止・是正するため、公正取引委員会、事業を所管する大臣等、中小企業庁長官が必要な指導を行うこととされています。指導内容の具体例は以下の通りです。

・転嫁を拒否した消費税を支払うこと
・消費税率引上げ分を遡及して対価の額に反映させること
・違反行為の再発防止策を講じさせ、その内容を自社の役員・従業員に周知徹底させること
・転嫁拒否等の行為を今後は繰り返させないこと 等

なお、違反行為に対して公正取引委員会から勧告を受けた場合は、その旨が公表されます。 

1年分前払いしている保守料も例外ではない

保守料を既に向こう1年分前払いしている場合も例外ではありません。契約上、中途解約した場合に未経過期間分の保守料を返還する旨の条項がある場合は、売上側では原則として時の経過に応じて収益計上するため、平成26年4月分以降の保守料には消費税率8%が適用されることになります。したがって自社がこのような契約の支払側の場合は、いずれ3%分の追加請求書が手元に届くことになると思われます。合理的な理由なく、その支払いを拒否する行為や追加請求額を減額させようとする交渉は、転嫁対策措置法の違反行為に該当します。

税率引上げ前後の価格交渉は、消費税の転嫁拒否行為と推認され得ることを充分認識する必要があるといえます。

 

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あいわ税理士法人
あいわ税理士法人
佐々木 みちよ

2002年藍和共同事務所(現あいわ税理士法人)入所。大手・中堅企業への組織再編に関するアドバイス業務や連結納税導入前後の税務コンサルティング業務に従事するほか、税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。

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