経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • 「禅」から学ぶ「聴き方講座」 現場スタッフの「本音」を聞き出す10のヒント

禅的経営のススメ  ~全員経営に到達するための8つのステップ ②傾聴 Vol.002

株式会社シマーズ
代表取締役
島津 清彦

前回の第1回ではステップ1「観察」について書かせていただきましたが第2回はステップ2「傾聴」についてです。

現場に行って、良い情報を聞き出す方法

組織を改革し全員経営へと導くために不可欠なのは現場の正しい情報です。自らの眼で、自らの全細胞をフル活用して観察した後は自らの「耳」と「心」を使って現場の声に耳を傾けます。

立場上、情報は幹部を通じて上がってくるかもしれませんが、ポイントは自らの耳と心で直接現場の声を聴くということです。

なぜ自らの耳で聞かなければならないのか。それは組織のフィルターを通じて上がってくる情報は好き嫌いだったり先入観だったり、幹部の保身だったり、様々なフィルターがかかっているケースがほとんどだからです。

もちろん組織の大小によりすべての現場に足を運ぶことが難しい場合には、ある程度現場を選別したうえで足を運びます。この場合、できるだけ部門の偏りを減らし、営業部門、製造部門、企画部門、研究開発部門、アフター部門などまんべんなくフラットに聞くことが大切です。

スピードが加速し、変化が速くなればなるほど現場との距離の近さが重要性を増していきます。

現場廻りの際に、質問の仕方にも注意したいところです。

例)
社長「最近の売れ筋は何ですか?」
現場「はい、最近の売れ筋は○○です」

社長「この店舗は皆モチベーションは高いですか?」
現場「はい、皆モチベーションは高いです」

このように答えを限定した質問に対して、現場からネガティブな回答が返ってくることはほとんどないと考えた方が良いでしょう。現場はできるだけ上層部にアピールしたいでしょうし、ネガティブに思われて自分の評価が下がることを極端に恐れるからです。

現場で質問を投げ掛けるときには以下の二つの点に注意することが必要です。

1. 上記のような「答えが限定される質問」ではなく「様々な答えが返ってくるようにあえて、ざっくりとした質問をする」

例えば「最近どお?」というような質問をすることで現場が何を答えたらいいのだろうかと頭を使うような質問を投げ掛けるのです。このような答えを限定しない質問に対しては10人いたら10通りの答えが返ってくるはずです。目的はあくまで「現場の正しい情報収集です」多種多様な答えの中にはびっくりするような気づきや宝があるはずです。


2. 目線をできるだけ現場に合わせ、リラックスして本音が返ってくるような態度で接する。

本部から視察が来る、もしくは社長が現場に来るとなればほとんどの場合、現場スタッフは固くなります。固い雰囲気の中から正しい情報を得るのはほぼ不可能です。ですから、現場に足を運んだ時にはできるだけ現場の状態を理解し、現場の空気に合わせた態度や声のトーンなどで接します。現場は安心して心を開き「現場の正しい情報」が得られる確率が高まります。時には「近くまで来たから」と言って、抜き打ちで現場に行く事も効果的です。

経営では良いニュースは嬉しいものですが、本当に重要なのは実は悪いニュースなのです。

本部にとって、社長にとっては "Good news is bad news. Bad news is good news." です。

良い情報を聞き出すためのチェックポイント

さて「傾聴」のチェックポイントを簡潔に項目で挙げてみます。

・上から目線で聞いていないか
・穏やかな声・表情で聞いているか
・相手の話を途中で遮っていないか
・限定・断定質問をしていないか
・相手の真の声・心の声を聞いているか
・先入観・レッテルは捨てたか
・敬意を持って聞いているか
・小さな約束をしたか
・五感をフルに活用したか
・「ありがとう」と言ったか

このチェックポイントは、相手の中にある答えを引き出して伸ばす「コーチング」の手法と通じるものです。

一点補足説明をします。

「小さな約束をしたか」という項目は、現場から問題点が指摘された場合に、すぐに改善できることはその場ですぐに約束してしまうことが非常に大切であると考えられます。現場に来てただ観察して、ただ聴いて帰るだけでは現場にとっては何のメリットもないことになります。職場環境の改善や、サービスの小さな改善点などを勇気をもって指摘してくれた社員には「わかった○日までには改善することを約束するよ」というようにその場でコミットしましょう。




(ボタンをクリックするとチェックシートが表示されます)

「傾聴」実践の際に役に立つ禅語

最後にステップ2「傾聴」を実践する際に役に立つ禅語を二つご紹介しましょう。

一つは「隻手音声(せきしゅおんじょう)」です。

隻手とは片手のこと。片手で鳴らす音を聞きなさいという禅語です。両手であればパチンと音が鳴らせます。片手で鳴らす音を聞けとはどういうことでしょう。いかにも禅問答のようですね。これは「声なき声」を聴きなさいということです。「聞く」ではなく「聴く」ようにしなさい、すなわち心の声を聴きなさいということです。前述したように現場を訪問した際には、こちらの質問に対して表面的な答えが返ってくることが多いです。相手の眼、表情、しぐさ、現場の雰囲気を感じ取り、「声なき声」に耳を傾けましょう。

二つ目は「名利共休(みょうりともにきゅうす)」です。

名とは名誉や立場。利とは利得。名声や利得に執着しない心をもちましょうという意味です。現場廻りをする際に現場のスタッフは当然、「本部の人」とか「社長」という見方をします。これは当たり前といえば当たり前ですが、この立場を笠に着て現場を廻れば、繰り返しになりますが正しい情報は得にくくなるものです。このような肩書をあえて一時的に外した立ち振る舞いをもって現場と接しましょう。

以上、参考になりましたでしょうか?

次回第3回はステップ3「自己開示」についてお話したいと思います。


このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
株式会社シマーズ
株式会社シマーズ
島津 清彦

経営・人事・組織を熱くする「発熱組織プロデューサー」 前職スターツグループでは、取締役人事部長として急成長する組織の制度・風土構築を牽引。一般社団法人禅トレプレナー協会の代表理事。