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社会に必要とされること、それすなわち永遠の成功約束  ―「社会に期待されつづける経営」 vol.002

新日本有限責任監査法人
シニアパートナー 公認会計士
三浦 太

会社を永続させるためには、起業家自身の類い稀な資質や自社の技術やサービスを磨くことは大切です。しかし実際には、それらだけで真の永続性を確保することは難しいといえます。

なぜなら、対外的な関係をうまく構築しないと、どんなに優れた起業家が存在しても、どんなに卓越した技術やサービスがあったとしても、自社の強みを十分生かすことができないからです。つまり、自社論理や技術偏重の追求だけでは多くの顧客を見出せないため、まずは、顧客ニーズを最初に適切に把握し、そのニーズを第一に考えながら、自社の技術やサービスをうまくニーズに擦り合わせることで、事業展開において最良の結果を生むことができるようになります。

このことは、頭では理解していても、大抵は、自社が得意またはやりたいことから独自の事業展開を構想しがちであり、特に自信のある新たな製品やサービスが開発できた時ほど独善的になりやすいので、どんな時でも、近視眼的にならずに事あるごとにニーズがどこにあるかを大局的に見極めることが重要です。

したがって、会社を永続させるためには、社会に点在する多様なニーズの中から自社で達成可能な事業を冷静に特定し、熱意をもってその事業を集中展開していくことが求められます。実際には、さまざまな対外的な活動を積極的に行い、自社に影響を与える広範な利害関係者(ステークホルダー)との良好な関係を保つことに腐心し、ステークホルダーのニーズを極力キャッチアップしていくことが必要です。そうすることによって、把握しにくい顧客ニーズを理解することにも繋がり、結果として、社会の期待に応えられる会社になっていくことができるのです。

ステークホルダーの俯瞰で繋がる未来の業績

ここで、ステークホルダーについてまとめて説明しておきます。会社が関わるステークホルダーはさまざまでありますが、大枠として、ステークホルダーとは事業に影響する全ての利害関係者であると考えて下さい。そして、一般的に会社との関係がある主な利害関係者として、株主、従業員、取引先、消費者、顧客、地域社会、自治体、政府、海外諸国などがあげられます。

これらのステークホルダーとの強弱関係は、各社ごとに全く異なりますので、会社ごとに自社の事業内容を吟味し、個々のステークホルダーとの距離間や影響度合いを検討し、それぞれに対してどのように、どの程度対応していくべきかを決めていく必要があります。



そして、注意すべきは、現在のステークホルダーとの関係だけを検討するのではないという点です。現在のステークホルダーだけでなく、未来に関わる可能性のあるステークホルダーも考慮に入れた、現時点より広い概念で捉え、事業展開の方向を見据えて、経営環境への影響、どう対応すべきかなどを入念に検討すべきです。単純に、現在の顧客や販売エリアだけに目を向けて事業を行っているだけでは、今後の顧客になり得る方々、つまり潜在的な顧客の方々のニーズに気づかず、対応が遅れて将来の業績に陰りが生じるリスクもあり得ますので、十分留意する必要があります。

ステークホルダーとの関係を良好に、可視化する新たなニーズ

さて、自社に影響するステークホルダーの範囲をどう考えればよいかですが、第一には、もっとも業績に影響するステークホルダーといえる買い手がやはり重要なステークホルダーであり、起業家の心得は買い手の心、ニーズを掴むことが第一といえます。

時代背景として、デフレ不況が長く続くわが国においては、多くの方々がかなり厳選してモノを買う傾向が鮮明になり、買い手側に主導権がある時代といえます。また、技術のデジタル化によって製品がコモディティー化する速度が速いため、新製品を開発しても先行者利益が得にくい時代に突入しています。さらには、売り手側に追い打ちをかけるように、わが国は成熟社会に突入しており、人々の趣味趣向やライフスタイルが多様化しているため、売り手側は以前よりも、きめ細かくニーズをキャッチアップせざるを得ず、常に苦戦を強いられます。

このように、会社が利害関係を考える上では、今の買い手(顧客)との関係を最も重視せざるをえません。しかし、上述したように、潜在的な顧客を将来迎え入れるには、さらに、経営者は会社と関係する内外のさまざまなエリアの人々や外部組織、すなわちステークホルダーと常に良好な関係を築く努力をし、どのようなニーズが求められるのかを把握する必要があります。

そして、それらのニーズに合った自社の提供できるものを早めに把握することで、自社にとっての新たな顧客、新たなマーケットが競合他社よりも先に見えてくるはずです。そのような企業努力を反復することで、社会及びより多くの様々なステークホルダーに存在を認めてもらい、販売エリアや販路が拡がり、他社よりも1つでも多くのモノを売れる会社となり、永続する会社に近づいていくのです。

win-winの関係で達成される社会的優位性

また、永続的に会社を経営していくためには、自社の業績に対してプラスの影響ばかりでなく、マイナスの影響も意識して総合的に吟味したうえで、ステークホルダーとの関係がいかにあるべきかを常に考え、事業展開していくことも大切です。

そのためには、企業不祥事を極力防ぐためには何をすべきかを考えることが重要になりますが、ここでも現在のことばかりでなく、将来的なマイナスの影響も加味して検討することが不可欠になります。顧客にとっては、便利でリーズナブルであれば、顧客にとってはプラスですが、自然、社会、労働、諸規制、近隣住民などの環境に対してマイナスの影響を与える事態に至る内容であれば、結果としてビジネスリスクとなり、レピュテーションや訴訟に晒され、業績悪化に転じることも現実には十分あるので留意すべきです。

例としては、製品やサービスを提供するまでの間に、環境汚染、国民の人権侵害が露呈している国や地域との取引、就労禁止にあたる児童などを雇用した製造ライン、輸出入規制のある取引への関与などをはじめ、企業不祥事に繋がる種はいくらでもあるので、様々な角度から注意すべき点を見極めなければなりません。このことは自社として十分に気をつけていても、同じサプライチェーンの中にいる取引先が不祥事に関与してしまえば、自社にもマイナスの影響が波及してくる可能性があるので、川上・川下共に取引プロセスの総点検を検討すべきです。

しかし、そうは言っても、ステークホルダーとの関係は、あまり神経質になりすぎて何事に対しても過剰に反応するようでは事業展開を常に委縮した状態で行うこととなり、あらゆる局面で企業行動が停滞し、却って業績にマイナスの影響を与えることになりかねません。

したがって、ステークホルダーの存在を十分に意識しつつも、彼らにとっても自社の企業行動がどうすればハッピーな結果となるのかを常に前向きに検討するスタンスが重要になります。つまり、会社の永続性を真に高めていくには、ステークホルダーとの関係に過剰反応するばかりでなく、ステークホルダーにとってもプラスになる、少なくとも致命的なマイナスにはならないようにするための行動指針を自社として予め明確にし、それに沿って自社の積極的な企業行動をいろいろチャレンジして行くことです。

そうすることで、ステークホルダーからの信頼を獲得し、販売しやすい状況を作り出せ、競合他社との関係において十分な優位性を確保できるため、永続性にブレーキがかからないようになっていきます。

利益重視とCRLの視点でずっと続く優良企業に

永続する会社になるためには、経営における重要なポイントが大きく分けて2つあり、会社の永続性を支えるうえで、どんな企業でも採るべき、検討すべき事項といえます。

1つは、「業績の維持・向上に関するマネジメントを行える会社になること」であり、会社を永続させるためには、何といっても利益体質になることがもっとも重要な基礎条件といえます。もう1つは、「企業不祥事の防止に関するマネジメントを行える会社になること」であり、どんなに上手に過去から経営を実践してきたとしても、ある時点でいったん大きな不祥事を起こしてしまうと一瞬で社会的信用が失墜し、業績にマイナスの影響を与えてしまうリスクがあり、下手をすれば会社の命運にかかわるような事態を招くこともあります。

これら2つの企業行動について、どのように会社として執り行うか、そしてどのような業務改善が必要かなどを十分検討し、同時実現を目指すべきです。そうすることによって、会社の永続性を高めることができ、結果として業績に根ざした資金的な裏付けの下で、長期間、社会のニーズを満たすことで、CSR(企業の社会的責任)を果たすと共に、自社において可能な範囲で積極的に社会貢献策も検討・実施することができる会社に発展することになり、結果として『社会に期待されつづける会社』になりやすい体質を手に入れられるのです。

今後のコラムにおいて、これら2つの企業行動を実現するためのポイントを整理していきたいと思います。

 



 

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三浦 太

上場会社監査をはじめ、決算早期化、グループ管理、内部統制整備、IFRS導入、IT 統制、業務改善、事業計画・資本政策策定などの助言・支援業務を実施。大手金融 機関、大学などでの講演実績多数。