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特許訴訟を早期決着へ導く会計技術「計算鑑定人制度」に迫る  ―フォレンジック会計で組織の利益を守る vol.002

監査法人アリア
監査法人アリアコラム担当

前回のコラムでは、フォレンジック会計とは、というお話とその歴史について触れました。

今回は、日本において訴訟の分野で会計技術が活用されている数少ない分野、「計算鑑定人制度」についてご紹介いたします。

裁判官を支援する公正中立な会計専門家

計算鑑定人制度は、平成11年に、訴訟における審理・裁判において、立証責任の軽減を目的として導入された制度です。(特許法第105条の2)

この制度のもと、裁判上で損害賠償額等を公正に算定するために、裁判官の判断を補助する会計専門家のことを「計算鑑定人」といいます。

裁判官の心証形成を補助する、という要請に応えられる知識経験を有した会計専門家が「計算鑑定人」として裁判所に登録され、鑑定業務を担います。

計算鑑定人制度と、一般的なフォレンジック会計の大きな違いは、フォレンジック会計は当事者の一方からの依頼に基づいて、その当事者の立証を助けるものであるのに対し、計算鑑定人制度では、原告・被告から独立した公正中立の立場で、財務調査を行い、裁判官を支援し助言するということです。

ちなみに我々は、この制度導入時以降現在に至るまで、東京地方裁判所に「計算鑑定人」として登録されている公認会計士を有しています。では、守秘義務に反しない程度で、我々が実際に関わった計算鑑定業務を通じ、その流れをご紹介しましょう。

ケーススタディで学ぶ ―特許権侵害訴訟での損害額の確定まで

1.計算鑑定人の選任


医療器具の特許権侵害を問われた訴訟の例で御説明します。原告側は、原告が特許を所有する商品を被告が無許可で製造、販売していると主張。数年間の審理において、被告も特許権侵害については認めていたので、争点は原告の損害額はいくらか、ということでした。原告側は損害額を高く、被告側は低く主張していました。

公正な判決に至るためには、第三者による正当な特許権侵害の損害額の算定が必要だということで、当方が計算鑑定人として東京地方裁判所から選任されました。


 


2.実施した調査


損害額の算定は対象製品の限界利益や貢献利益を用いて算定されるのが一般的です。なぜなら、対象製品から得られた利益が損害賠償の基礎とされるのが通常だからです。しかし、本事案において、被告は鑑定対象製品と同種同様の製品の製造販売をしていることから、対象商品のみの利益を算定することが難しくなっておりました。そのため、裁判所からは、対象商品の売上高を鑑定対象とされました。

被告企業を訪ね、現地調査を行い、表面的な会計記録だけではなく、集計システム自体の検証などに注力しました。

売上に漏れがないか、その開示書類や証憑、帳簿等が整合しているかなどを確認しました。また、売上高が隠ぺいされていないか、不正や誤謬の可能性についても重点的に調査しました。さらに、売上高のデータだけでなく、会計記録への入力過程や承認プロセスなど内部統制の検証にも労力を注ぎ込みました。



3.計算鑑定書の提出


分析や実地調査で得た結果を基に、計算鑑定書を作成します。作成した計算鑑定書が裁判所により正本として受領され、その写しが原告、被告両当事者に手渡されました。その後、関係者(裁判官・計算鑑定人・原告・その代理人・被告・その代理人)が一同に会し面談する機会が設けられ、計算鑑定書に関しての質疑応答がなされました。その後、裁判官よりその計算鑑定書を証拠として採用することを関係者に告知され、計算鑑定業務が完了し、当該事案の判決が確定しました。

計算鑑定人制度が果たす"社会貢献"とは?

損害額等を確定する訴訟では、被告と原告が数年間も争い、お互い労力や資金を投入し続け、疲弊しきっているのに、いまだ決着がつかないというケースも少なくないと思われます。この計算鑑定人制度が利害調整機能として、効率的、有効的に活用されることで、判決の更なる公平性が確保されるとともに、訴訟の早期決着も促される可能性があります。

計算鑑定人制度は、まさに我々公認会計士等の会計専門家が社会に貢献する一つの手段ともいえます。

この制度がもっともっと広く世間に知れ渡り、より多くの訴訟上で貢献させて頂く機会が増えることを切望するとともに、我々専門家も日々研鑽を重ね、社会の要請に応える知識、経験を積むことが責務と思われます。


 

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監査法人アリア
監査法人アリア
監査法人アリアコラム担当

2006年設立。国内外の企業の適正評価(デューディリジェンス)に対しても高い評価を得ており、国内では数少ないフォレンジック会計に強い監査法人としてお客様を強力に支援している。