経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • 消費税トラブルを回避する3原則! ―企業が避けては通れない「消費税増税」対策講座4

適用税率をめぐるトラブル対処法はこれだ!  ―企業が避けて通れない「消費税増税」対策講座 vol.004

あいわ税理士法人
マネージャー 税理士
佐々木 みちよ

中小・中堅企業にとっては、消費税率引き上げ時の価格転嫁は死活問題です。政府は転嫁状況に関する監視・検査体制を強化することにより、取引上の優位的地位の濫用を取り締まる方針です。

価格転嫁対策にも税率引き上げ時の経過措置の理解が不可欠です。消費税率引き上げ後も、経過措置により旧税率が適用されるのであれば、価格転嫁対策にやきもきする必要がないからです。

今回は、請負工事等に関する経過措置と、発生し得るトラブル及びその事前対応策をご紹介します。

なお、vol.003の復習となりますが、請負工事等に関する経過措置の適用要件は以下の通りです。 

税込金額で契約締結した場合のトラブル

契約締結が指定日以後で引渡予定日が施行日前の請負工事があったとします。引渡予定日が施行日前だったので、発注者側および受注者側ともに旧税率が適用される認識で契約を締結し、契約書上は税込金額(1,050)を明記しました。

このケースで引渡しが遅れて施行日以後になった場合には、適用される消費税率は新税率となります。しかし、契約書上に税込金額が明記されているために、発注者側は契約金額の改訂に関し頑として首を縦に振りません。

最終的な取引金額が、当初契約した税込金額(1,050)のまま据え置かれた場合、受注者側の消費税計算は以下のようになります。

   ・契約書に記載している工事対価の額(税込み) 1,050

   ・仮受消費税として計上すべき金額 77(=1,050×8/108)

   ・売上計上額(税抜き) 973(=1,050-77)

当初の売上計上予定額1,000が973に減少していることが分かります。差額の27は実質的に値引きをしたことになるのです。

元請事業者と下請事業者に適用される税率が異なる場合のトラブル

ある建設工事について、発注者Aと元請事業者Bとの契約、および元請事業者Bと下請事業者Cとの契約があったとします。

発注者Aと元請事業者Bとの取引には旧税率(5%)が適用されますが、元請事業者Bと下請事業者Cとの取引には新税率(8%)が適用されます。平成9年の消費税率改正当時は、元請事業者Bが発注者Aから旧税率分の消費税しか受け取らないことを理由に、下請事業者Cに対しても旧税率分の消費税しか支払わないケースが散見され、問題になりました。

元請事業者Bが旧税率分の消費税しか支払わない場合、下請事業者Cは実質的に値引きをしたことになります。

対価の増額があった場合のトラブル

指定日前に契約締結された請負工事があったとします。請負工事等の経過措置では、指定日以後に請負対価の額が増額された場合には、増額部分には経過措置の適用はなく、新税率が適用されます。当初対価の額のみが経過措置の対象(旧税率)となります。

注意が必要なのは、当初契約において請負対価の額が未確定であった場合です。指定日以後に対価の額が確定したときは、全額が増額されたと考え、経過措置は対価の額の全てについて適用されず、新税率が適用されることになります。適用される消費税率について発注者側と受注者側の認識が一致していないと、請負対価の請求額に関して後々トラブルが発生する可能性があります。

契約締結時の留意事項(トラブル回避の3原則)

適用消費税率に関するトラブルを回避するためには、契約締結時に下記の点に留意する必要があります。

1. 税込金額で契約を締結しない。

2. 契約締結が指定日以後である場合は経過措置の対象とならないため、
    引渡時の税率を適用する旨を契約書に明記する。

3. 請負対価増額時の取扱いを契約書に明記する。

改正消費税法には上記以外にも様々な経過措置が設けられ、一定の要件を満たす取引については、施行日以後の資産の譲渡等であっても旧税率が適用されます。

注意しなければならないのは、経過措置の適用は選択適用ではないということです。法令に定められている経過措置の要件を満たすものには旧税率が強制適用され、逆に要件を満たさないものは新税率が強制適用されます。経過措置をよく理解しないまま契約を締結したり取引実行したりすると、意図せずして値引きすることにもなりかねません。

経過措置の内容をよく理解して、取引先に先んじて対策を講じることが、トラブル回避のための有効策と言えます。

【BRO編集部解説】増税をめぐるトラブルの具体的事例を考察する

※以下文章は、BRO編集部による解説文です。

本解説では、消費税率アップにともない発生し得るトラブルに関して、より具体的なケースを想定し、トラブルを未然に防ぐ対処方法を考えてみたいと思います。

【増税前のリフォーム工事等は要注意】
住宅は個人にとって非常に金額の大きい買い物であるため、増税前に取得することで少しでも消費税節税を行いたいという消費者による駆け込みの消費は非常に多いでしょう。

住宅は、一般的に計画開始から工事、入居まで1年前後の期間を必要とします。増税を見据えた住宅取得の場合、経過措置の対象となる可能性が高いため、契約の際には経過措置についての正しい理解が必要です。

一方、リフォームの場合は工期が比較的短いと考えられることから、経過措置の対象にならないものも多いと思われます。当初は旧税率が適用される2014年3月31日までに完成する見込みであったとしても、思わぬ天候不良や、内容の変更、あるいは人手不足などリフォーム事業者の都合による工期の延長が起こりやすいため、完成の遅れにより消費税率8%が適用されてしまうケースも起こり得るでしょう。

このようなトラブルや予期できない事態を想定し、住宅に関する契約を締結する際には、本コラムで解説したポイントを良く理解して臨むことが大切です。

【企業におけるシステムの開発も同じく要注意】
売上、仕入などの日常業務の処理を行なう業務システムの新規開発、あるいは改修についても、仕様変更による遅れなどはもちろん、新税率への対応を見越したシステム開発ニーズの殺到により、開発ベンダー側で案件を処理しきれず開発計画に遅延が発生するということも起こりえます。経過措置の対象にならない契約の場合には、当初の引渡予定日が2014年3月中であったとしても、開発計画の遅延により引渡しが4月以降になり、消費税率8%が適用されてしまうケースもあるでしょう。住宅取得と同様に、事前の契約締結を行なう際には、本コラムで解説したポイントをよく理解した上で臨むことが大切です。

本コラムでも解説されていますが、経過措置をしっかりと理解することにより、増税分の価格転嫁対策に心を煩わされる必要がありません。経理部門のみならず、営業、開発、購買部門など、すべての部門においてしっかりとした消費税増税に関する知識を身につけておきたいものです。


 

このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
あいわ税理士法人
あいわ税理士法人
佐々木 みちよ

2002年藍和共同事務所(現あいわ税理士法人)入所。大手・中堅企業への組織再編に関するアドバイス業務や連結納税導入前後の税務コンサルティング業務に従事するほか、税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。

バックナンバー