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台湾と日本の知られざる「絆」 ~海外進出のために知っておくべきイイ話~  ―アジア上場について vol.001

藍澤證券株式会社
取締役
角道 裕司

鳥居信平という名前をお聞きになったことがおありでしょうか。

静岡県袋井市の田園地帯にある「月見の里学遊館」、その敷地の一角に、陽を浴びブロンズ色に輝く等身大の胸像が静かに佇んでいます。製作者は許文龍さん。台湾市場に上場、多くのグループ企業を抱え、売上数千億円を誇る奇美グループの総帥です。許さんは、かつて台湾独立を主張した親日家でもあり、「奇美文化基金会」会長のお立場で、台湾のために貢献した日本人の功績を顕彰する活動もなさっておられます。その流れでこの胸像は生まれました。

鳥居信平氏にまつわる「イイ話!」

歴史を紐解きますと、鳥居信平氏は1883年、現在の静岡県袋井市に生まれました(因みにご子息の鳥居鉄也氏は、南極越冬隊長を2度も務めた御仁)。東京帝国大学を卒業後、農商務省に職を奉じ、恩師、上野英三郎氏、かの有名な忠犬ハチ公の飼い主ですが、そのすすめで台湾に渡りました。

新たな職場は、台湾南部の高雄にあった「台湾製糖」。三井財閥や国が大株主となって1900年に創業された国策会社で、サトウキビから砂糖を製造していましたが、土地の改良や灌漑 / 排水システムの改良が大きな課題ということもあって、直前まで徳島県の土木課にいた鳥居信平氏に白羽の矢がたつ形となりました。

現地に赴いた信平氏は、「二峰圳」と今尚呼ばれる伏流水を活用した地下ダムを建設しました。大正12年、日本としても初めての試みだったそうです。その結果、収穫量で大きな成果を収めた訳ですが、一方、この台湾製糖は、近隣の農民の畑にも灌漑水を送り、かつ飲料水として提供することにも心を砕き、この「二峰圳」も大いに貢献することとなりました。

このことは当時から、また現在においても高く評価されていて、2007年、台湾行政院は風景文化遺産に認定。この話を知った許さんが胸像を製作し、2009年初夏、寄贈の形で袋井の地に届けられた・・・、このような経緯だそうです。今風に言うと「イイ話!」ではないでしょうか。

市場も文化も知るスペシャリストとして

長々と、したり顔でご披露する形になってしまいましたが、我々は、静岡県に8店舗、全国展開している証券会社では最多の店舗を構えています。そのひとつ掛川の支店長と昨年、隣町の袋井に赴き、鳥居信平氏の胸像と対峙した時、「二峰圳」建設の5年前、大正7年に当社が創業されたことも相俟って、90年前の素晴らしい出来事に想いを馳せ、爽やかな感動を覚えたことが今でも思い起こされます。

一方、我々は、イスラエルも含めたアジア12市場の株式をお客様にご提供しておりまして、この面での嚆矢と些か自負しておるところですが、その関係で、アジア各国にビジネス進出される企業や、所謂海外IPOをお考えになる企業から数多くご相談を頂戴しております。

新日本監査法人が各地で主催されるアジアIPOセミナーには、講師のひとりとしてお呼び頂くことも多く、7月にも名古屋でお話を致しました。台湾にフォーカスしたセミナーだったので、鳥居さんのご紹介も致しましたが、講師のおひとりだった、台湾の駐日文化代表処、かの国とは正式な国交がないのでこのような言い方をするそうですが、簡単に言いますと大使館、その副代表と暫しお話した際、「台湾ではそれは広く知られた話、鳥居さんのご出身はこの近くでしたか・・・」云々と。

因みに信平氏の大学時代の後輩、八田與一氏は同じく台湾で「烏山頭ダム」を設計。今でも毎年命日にはダム湖のほとりに日台関係者が集まり、故人を偲んでおられるそうで、李登揮総統、現在の馬総統もご出席され、その模様はTVでも放映されるため、併せて皆さんの知るところとなっているようです。

歴史的な「絆」を知り、アジア進出の一歩目を踏み出す

昨今、日韓・日中、そして双方で親密と疑いも無かった日台間でさえ、政治的な思惑による様々な軋轢に直面する状況ですが、このような民間レベルでの人々の想い、血の通った交流が、90年前から、「二峰圳」の伏流水のように脈々と続いていて、それを今日的観点からも評価している、報道は少ないようですがこのようなこともまた、事実なのだと思います。証券ビジネスにおいてアジアの架け橋たることを願い、活動しておりますが、このような両国間の歴史的な「絆」にもしっかり着目して、皆様のお役に立てればと、そう考えております。

次回以降は、アジア進出、就中、IPOを中心にお話申し上げたいと思います。


 

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藍澤證券株式会社
藍澤證券株式会社
角道 裕司

昭和57年大阪大学卒、同年富士銀行入行。勧角証券への出向を経て、みずほ銀行証券部長、同証券・信託業務部長等を歴任。平成22年6月、藍澤證券常務執行役員、同23年6月取締役就任。