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決算早期化が利益を生む!  ―決算早期化を達成するプロジェクト計画(前編)

太陽ASG有限責任監査法人
代表社員 公認会計士
柴谷 哲朗

「決算早期化」は、上場企業にとって、なんとか解決したい課題の一つではないかと思います。決算早期化を、投資家保護の立場からできるだけ早く決算を公表してもらおうという証券取引所の要請に対応するために実施しようという企業もあります。それはそれで素晴らしいことだと思いますが、一方で、決算早期化は、営利企業において、当然に取り組むべき活動ではないかとも言えます。

どんな企業であっても、製造部門あるいはサービス部門、営業部門に所属する人達は、常に業績評価の目にさらされており、日々業務改善を図ろうと努力しています。同じように経理業務についても、合理化しようとする試みがなされているはずです。この合理化の活動を何らかの必要性に迫られ、短期集中でやってしまおうという活動が「決算早期化」プロジェクトです。そういう意味では、「決算早期化」は単に決算発表日を早めれば良いということではなく、経理業務やその決算手続が合理化された結果として早期化されてこそ意味があると言えます。

本稿では、2回に分けて、決算早期化、あるいは、決算合理化をどのように進めていくべきかについて読者の皆様に参考にして頂ける内容をご紹介していきます。今回は、「決算早期化を達成するためのプロジェクト計画の策定」について説明していきます。

なぜ決算早期化をする必要があるのか

短期集中型で決算早期化、あるいは合理化の効果を出すためには、その目的を明確にすることが非常に重要です。合理化には必ず変革が伴います。変革を起こすためには、なぜ現状を変えるのか、なぜそんな面倒なことをするのか、社内全体でそのプロジェクトを実行することの価値を共有する必要があります。

変革の中心となる経理部門には必ずしも十分な人員がいるわけではありませんので、忙しい日常業務の合間を縫って決算早期化のプロジェクトを企画し、実行することになります。経理部員全員の協力を得て、プロジェクトを成功裏に導くには、社内全体のコンセンサスをきちんと得て、必要な変革を進められる環境を整えることがとても重要です。また、決算業務の変革を行う場合、しばしば、経理部門以外の部署にも変革を求める場面が生じます。例えば、毎月の売上確定を現状より3日早くするという目標をたてた場合、売上データの早期取りまとめができるように営業部門やシステム部門に売上データ集計方法の変更等をお願いすることになります。このとき、営業部門等の協力が得られなければ、決算合理化は頓挫してしまいます。

このように決算早期化プロジェクトを成功させるためには、全社レベルでコンセンサスを得ることが重要なわけですが、経理部門以外の同意を得るためには、決算合理化の目的を単に経理部門の業務の合理化として掲げてもなかなか難しいでしょう。対外的な決算発表の早期化といった制度対応や経理業務の変革を通じて社内全体の業務改善を果たすといったことを目的に掲げる必要があります。

決算合理化がなぜ社内全体の業務処理の合理化に繋がるのかという点ですが、企業では、決算や経理伝票を起票するために経理部門以外でも様々な情報を作成しています。また、決算のために作成する情報とは別に経営マネジメント層のために管理用の情報も数多く作成しています。これらの情報がばらばらに作成されている場合、これらを整理して、出来る限り一本化することは、全社レベルでの業務の合理化に繋がります。「決算や管理に必要な数字の作成するための事務作業は重複がなく、できるだけ少ない方が良い。」、これが営業や製造・サービスの現場の方々の率直な意見ではないかと思います。このように考えると、決算合理化は、経理以外の部門を巻き込んで社内全体の業務処理の合理化をするためのプロジェクトと言えるのです。

現状把握で無駄をなくす

上記のように、決算合理化を成功させるには、決算発表の早期化、あるいは、全社レベルでの情報の作成・整理・報告といった業務の削減といった目的を明確にし、全社で共有することが大切です。全社レベルの業務の合理化を目的とするからには、どこが改善すべきポイントなのかを理解してからプロジェクト計画を立案することが重要になります。

決算合理化の改善ポイントの把握は、決算を外部に公表するために作成されている情報と経営管理のために作成されている情報のダブリがないか、あるいは、完全に同じ情報ではないが似たような情報がないかをつぶし込んで行くことから始まります。また、決算を確定させるために行われる会計監査のためだけに作成され、社内では一切利用されることがない、そして、実は会計監査上もそれほど重要な情報ではなかった、というようなこともあります。こういった無駄がないかを把握することが非常に重要です。

さらに、これらの情報を作成・整理・報告する一連の手続の中で、過度に時間がかかっている手続はないか、システムで実施できる作業を手作業で実施していないか、無駄な手待ち時間はないか等を明らかにしていくことも重要です。

これらの現状把握の手続は、単体決算、子会社決算、連結決算の3つの視点から実施すると良いでしょう。決算の早期化・合理化ができない原因は、単体決算の理由ではなく、子会社固有の問題、あるいは、連結決算固有の問題であることもしばしばあります。このように正しい視点を持って、決算合理化を阻害する要因を特定することで、全社で合理化できる手続を特定することができ、合意を得た上で決算合理化プロジェクトをスタートさせることができます。

「どれくらい」を明確にして実行計画を立てる

決算合理化の阻害要因を特定し、合理化の目的について社内で共有できれば、いよいよ決算合理化の実行計画策定フェーズに移っていきます。合理化の阻害要因を特定できれば、解決すべきことが明らかになりますので、あとは実行するのみです。しかし、プロジェクトを効果的に実施するためには、その実行計画が必要になります。

決算発表の早期化という目標を掲げるのであれば、何日早期化するのか、社内の情報作成のための作業量を減らすことを目的にするのであれば、どれくらい減らすのかを明らかにして早期化プロジェクトのゴールを明確にする必要があります。決算合理化の変革は全社を巻き込んで行われますので、実行計画は簡潔で分かり易いことが求められます。

現状把握の結果も、客観的な調査で裏付けられていることも大切です。経理部門が作成した独善的な実行計画では社内の合意はとれず、決算合理化は失敗してしまいます。現状把握の方法が客観的であることを担保するために、現状認識の段階で社外の決算早期化を専門とするコンサルティング会社の力を借りることも有効です。社外のコンサルティング会社は、決算合理化の阻害要因にはある程度のパターンがあることを知っていますし、どう対処すべきかのノウハウを多く持っています。

また、合理化プロジェクトの責任者の明示も大切です。合理化の実行にだれが責任を持ち、どんな効果を出そうとしているのかコミットしておく必要があるからです。また、プロジェクトの実行は当然ですが責任者だけが一生懸命になっても実現できません。関連部署の責任者を巻き込むためにも、関連部署の担当者や経理部門の担当者の作業時間、役割分担、ミーティングの頻度などをきちんと決めておくことが重要となります。また、一定の時期に、進捗状況を評価する活動を計画に組み込んでおくことも重要となります。

 以上が、「決算早期化を達成するためのプロジェクト計画の策定」方法のご紹介です。次回は、決算早期化を実行するための具体的な方法論や進め方について読者の方々のヒントになるような内容をご紹介したいと考えています。


 

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柴谷 哲朗

平成10年公認会計士登録。大手監査法人を経て現在、太陽ASG有限責任監査法人の代表社員として活躍中。ソフトウェア、コンテンツ等の会計実務を専門としている。