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決算早期化のポイントは、事業部も含めたビジネスプロセスの構築にあり  vol.001

株式会社エスネットワークス
経営支援第1部 副部長 公認会計士
前川 勇慈

【決算早期化】という言葉がもてはやされてから、久しい。私は2004年に会計業界に入り、まだ8年程度の経歴であるが、私が会計業界に入った2004年ごろは【決算早期化】という言葉はあまり聞いたことが無かった。この【決算早期化】という言葉が市民権を得たのは、四半期開示(*1)が義務付けられてからではないだろうか。 (*1:2006 年6 月7 日、証券取引法等改正法案が可決・成立し、14 日には公布され、四半期報告書の提出義務については、2008 年(平成20 年)4月1日以後開始する事業年度から適用される。(金融商品取引法附則15、16 条))

この四半期開示により、上場会社等は、四半期ごとに「四半期報告書」を内閣総理大臣に提出することが義務付けられ、その提出期日は、45 日以内の政令で定める期間内とされた。 実際に【決算早期化】という言葉がgoogleでどれだけ過去検索されたかをgoogle insight for searchで確認すると以下のような傾向を確認できる。
 


図1 人気度の動向(検索キーワードは【決算早期化】


人気度の動向


上記チャートで【決算早期化】という単語が検索され始めるのは、上記四半期開示が義務付けられる2008年あたりからである。 もうひとつ、面白い傾向がある。それは直近のトレンドとして【決算早期化】の検索回数が減少しているという点である。

【決算早期化】という単語の検索回数が減少しているのはなぜであろうか?当該単語自体が日本において、市民権を得たからであろうか。私は、【決算早期化】自体が目的ではなく、過程であり、そもそも決算を早期化して、実質的な経営管理体制をどのように構築し実行していくかが重要であると、【決算早期化】の意義自体が見直されてきているからではないかと推測している。 誤解を恐れずに言えば、無用に決算を早める決算早期化は必要ないと私は考えている。

どの決算を早期化したいのか?

以前、ある上場会社のCFOの方に決算早期化の提案をする機会をいただいた。そこで私は大上段に決算早期化の有用性をプレゼンしたわけだが、CFOの方には全く提案の趣旨が理解されなかった。CFOの方は「決算を早期化したことで経営に与える影響は具体的にどのようなもので、投資対効果はどのようなものですか?」と問われた。当時、私がプレゼンテーションしたのは、決算早期化することで全体の数値管理のプロセスが見直され、正確性が向上します、といった内容だったと思うが、これも全く提案の趣旨が先方に伝わらなかった。

当時私が主張していたのは、開示業務、決算短信がリリースされる日を早めましょうということで、CFOの方がおっしゃっていたのは、月次決算を早めることで、経営管理体制をどのように整備していくのか?ということをおっしゃっていたのだと思う。

決算という言葉ひとつとっても、大きく1.単体決算→2.連結決算→3.開示業務があろうかと思うが、3.に近づくに従って、経営層の関心は薄まっていく(気がしている)。もちろん開示業務は投資家への情報発信という意味で非常に重要なものであるが、如何せん、ビジネスが実行されてから時間がどんどん経ってしまうので、どうしても1.単体決算→2.連結決算→3.開示業務にしたがって、扱っている事象は過去のことになり、経営者の関心が薄まってしまう印象がある。

単体決算の中にも、月次決算と年次決算があるが、一般的には月次決算は経営管理目的に行われるもので、法定されていない。法定されていないものの、経営管理目的では月次決算の早期化は非常に重要である。もう少し正確にいうと、月次決算というよりは経営に重要なインパクトを与える指標は週次や、日次で管理すべきである。

そのためにはどうすればよいか。月次決算を締めるのに15日近くかかっているのに、日次で決算など出来ようもないという声が聞こえてきそうだが、経営管理の枠組みに決算を組み込むと非常にスムーズに物事が進むケースが多い。下の図を見ていただきたい。

一般的に言われるPDCAサイクルであるが、D:実行とA:改善は事業部が行うことが多い。一方でC:評価に関しては、管理部が行っているケースが非常に多い。私の私見であるが、月次決算はC:評価に属すると考えている。D:実行(事業部)→C:評価(管理部)→A:改善(事業部)という形で進めて、うまく行くわけがない。

なぜなら、ビジネスを実行している事業部とそうではない管理部とでは、圧倒的な情報格差が存在するからである。したがって、重要な指標管理だけでも、C:評価自体を事業部に持っていかないと、事業部と管理部との情報のやりとりだけで時間が過ぎていく。そもそも事業を行っていない管理部がC:評価を適正に行うこと自体、実はかなり難易度の高いことなのである。(その中でも管理部が果たすべき適正なチェック機能、分析機能については、別コラムで触れたい。)
PDCAサイクル

全社最適の業務管理を生み出すには?

月次決算の構成は以下のようになっている。 業務管理フロー1 細分化すると 業務管理フロー2 となり、そこに会社組織の概念を持ち込むと 業務管理フロー3 となる。上記のフレームワークから自明であるが、月次決算の大半は事業部側で起きていることである。 かつ、大体どこの会社でも以下のような二重業務が存在する。 業務管理フロー4 以上を踏まえると事業部側で数値管理できる仕組みを導入し、一気通貫で、事業部側で入力した数値を会計システムに入力できれば、会社全体でも入力業務を省力化できるケースが非常に多い。 業務管理フロー5 また、入力業務に手一杯となり、分析できていない会社も散見されるが、事業部側に計数管理できる仕組みを導入すると、以下のように、予実分析、推移分析、滞留管理まで事業部で行うことができる。(これらの具体的な数値管理手法については別のコラムで触れたい。) 業務管理フロー6 最後に、事業部側で数値管理を行う上でのポイントについて、3点述べたい。

1.事業部のビジネスプロセスの理解
⇒ 事業部側の関心は、自分たちのビジネスプロセスをいかに効率的に運用するかという点にある。 事業部側のビジネスプロセスを理解し、事業部側の負担が少ない数値管理の仕組みを導入すると、事業部側は協力的に対応してくれることが多い。 その意味で、管理部は事業部のビジネスプロセスを理解することが重要である。

2.予算の策定
⇒ 入り口で予算を策定している場合、簿記(勘定科目)の知識が無くても、事業部側で月中に数値管理を行うインセンティブが高くなる。 一方、予算が存在しない場合(予算がトップダウンでのみ作成され、現場が予算にコミットしていない場合も同様)、目標値が存在しないため、事業部側で数値管理を行うインセンティブはほとんど生じない。結果、事業部側で数値管理する仕組みはほぼ運用されない。

3.経理部のマインド転換(入力業務から分析業務への移行)
⇒ 今まで入力業務を行ってきた経理部の方ほど、仕訳の入力業務が無くなると、「自分の仕事」が無くなると受け取る方が多い印象がある。 いかに経理部の人に経理部の業務は分析側の仕事に移行していくことを理解してもらうことが肝要である。

次回のコラムは…

「管理部門が果たすべき本当の貢献」について考えていく。


 

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前川 勇慈

横浜国立大学経営学部卒業。主に上場会社に常駐して、事業部側での数値の見える化を通じて、経理機能、財務機能、経営企画機能に囚われない全社目線での経営管理体制構築を実行。