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業績の維持・向上のためのマネジメント(4) 「不易流行」 常にイノベーションを意識した経営の実践  ―「社会に期待されつづける経営」 vol.006

新日本有限責任監査法人
シニアパートナー 公認会計士
三浦 太

社会に期待されつづける経営を実現するために、どのような事業展開をすべきかを今まで説明してきました。今回は企業を永続するために最も大事なイノベーションについてお話をして、本コラムを締めくくることとします。

社会に期待されつづけるためにすることは、自社の核心部分を持ちながらも、世の中の動きを常にキャッチアップして変化していくのを繰り返すことだけです。自社の企業行動として大事なものや原理原則は変えるべきではないし、自社にできないことを流行りだからと手掛ければ、無理が生じて信用失墜、不祥事のもととなります。

したがって、自社の本質、実力を見極めたうえで、社会や顧客の動向を意識したイノベーションを起こす、つまり「不易流行」を実践することが永続する企業となるための条件といえます。

マーケティングとイノベーションを中心課題に

経営者が自社の企業行動を固めたら、次はどのように利益を上げるかですが、マーケティングとイノベーションを企業行動の中心課題に置き、それらについて経営陣が常に徹底的に考え続けることで、隙のない企業行動を実践していけます。

まず、マーケティングですが、自社が所属する市場の中にはどのような顧客が存在し、何を求めているかを吟味し、販売機会を探し出しながら、顧客に対して売るためにベストな仕組み作りを考え出すことです。顧客が真に求める製商品やサービスを提供する力をつけ、その内容を効果的に情報発信し、顧客がその製商品やサービスの情報をタイミングよく、正確に得られるように活動すると共に、製品、流通、価格、販促・広告、これら全ての要素をうまく組み合わせることができれば自然に販売機会は創出できるようになります。押し売りと真逆の企業活動といえます。

次に、イノベーションについてですが、新しい技術・ノウハウの画期的な発明だけではなく、新しいアイデアや発想を基に社会的意義のある新たな事業価値を創造することです。結果として、イノベーションは社会的に大きな変化をもたらす自発的なものであり幅広い変革をすることといえます。そして最終的には、従来の製商品やサービス、仕組みなどと異なる新しい技術や考え方を取り入れることで、新たな価値が生み出され、社会に大きな変化が引き起こされていくことになります。

先に述べたマーケティングは、顧客に販売する機会を創出していくという意味で、今なすべき企業行動を最適化していくために不可欠です。しかし、それだけでは、将来的にも販売できる製商品やサービスを供給し続けられる保証はありません。将来的にも販売する機会を持続的に創出するためには、自社の取り扱う製商品やサービスを時代の流れに合わせて変化させる、つまりイノベーションが業績の維持・向上のためには絶対に必要となります。

イノベーションを起こし続ける企業行動

さて、イノベーションというと「そんなことが簡単に出来たら苦労はない」と感じる方もいるかもしれませんが、本邦初、世界初などといった特異な例だけではないことをしっかり理解しておく必要があり、そう考えないと自社が採用できるイノベーションの機会をみすみす見逃してしまいます。

社会にとって、将来有望なアイデアというものは、天才的な経営者の頭の中から突然発生するものだけではありません。世の中に現実に発生しつつある事象であっても、極めて局所的かつ限定的な段階でしか普及していないものは多くあります。将来それが多くの人々が当り前に望む製商品やサービスになるとは普通の人々は思いもしませんが、局所的かつ限定的な事象について、経営者の着眼力によって、大当たりすると妄想、構想することで、イノベーションを起こしていくことが重要なのです。

現時点では通常は誰も予期していないが、先見の明がある経営者が斬新なアイデアを持って、将来有望になる製商品やサービスを他社に先駆けて独自に手掛ける、または他社に失敗するのではと静観されながらも、積極的に販売し、事業展開することで成功を掴む事例が過去においてもいくつもあります。

事実、世の中で既に局所かつ限定して発生し、新たな事業の芽生えが起きているにもかかわらず、多くの人々が気づいていない、さほど画期的なことではないと思っている場合がよくあります。そのような段階で、自社の将来を担う新たな製商品やサービスになる兆候を発見し、自社の事業として展開することができれば、イノベーションのきっかけをつかむことになります。

しかし、自社の将来を左右する事業になり得るかどうかの瀬戸際なので、決して焦らずに自社の経営ビジョンとすり合わせをしながら、経営者の大局観、経験、思い切りなどを総動員して企業行動として実施するかを見極める必要があります。

将来的に多くの顧客が求める内容になるか早めに吟味し、マーケティングを行ない、事業拡大の可能性があると判断したうえで、はじめは小さく実行し、試行錯誤を繰り返し、軌道に乗るまで徐々に大きく育てていき、勝算があると判断したら一気に事業拡大して、先行逃げ切りをかけます。

過去に成功した例はいくつもありますが、わかりやすい事例として以下の3つをあげておきます。どの例も、今では社会的にも非常に有名な経営者たちです。彼らは、自分の周辺にあった事象を機会と捉えて積極的に事業展開しましたが、当時としては世の中を席巻するような事態になると最初は誰も思っていなかった事象といえ、ちょっとした経営者の着眼点と「これは」と思ったその後の集中力が功を奏した例といえます。イノベーションとは、本邦初・世界初である必要はないということを理解できるはずです。

本邦初・世界初ではないイノベーション成功例

ワットの蒸気機関

蒸気機関の発明者として有名なジェームズ・ワット。1776年に蒸気機関を完成させたとされていて、それは事実ではありますが、蒸気機関そのものは1712年にトマス・ニューコメンという方が世に送り出していたという事実があるようです。50年以上前に蒸気機関があったにも関わらず、何らかの理由で世の中に普及せず局所的・限定的に終わっていたものをワットは試行錯誤を続け、世の中で実際に利用できるものとして世に送り出し、成功をおさめました。イノベーションはある日突然起こるものではない好例といえます。

 

マイクロソフト

今や誰でも知っているマイクロソフト創業者のビルゲイツ。創業期の有名な話があります。元々、会社を大学時代から起業し、ソフトウエア開発に没頭していたところ、大手メーカーからパソコンのOS(オペレーション・システム)の開発を依頼され、従来から手掛けていたプログラムを活用しようとしたところ要求内容を満たせない可能性が浮上しました。そこで納入期限も間近に迫り、改良を繰り返していた折、DOSというOSを開発した者がいるという噂を聞いて、その会社に行き、交渉の末、ソフトウエアの版権を買い取ることに成功しました。そして、それを活用してMS-DOSを完成させ、世の中の標準となるパソコンを送り出し、大成功を収めました。これも既に起こっている事実を冷静に受け止め、局所・限定的に存在していた名もなきOSを買い取って未来を切り開いた好例です。

DOSを売却した者もその時点ではある程度儲かったはずですが、世界を席巻するようなモノになるとは夢にも思わなかったはずです。元の開発者本人でさえ、局所的・限定的なモノと考えたからこそ売却に応じたのです。イノベーションを起こせる人は、冷静な判断、世の中を見る目があるかどうかということです。

 

マクドナルド

今や世界中にお店がある、言わずと知れたハンバーガー・ショップのマクドナルド。創業者のレイ・ロックは、元々は別のビジネスを20年近くやって一応の成功をおさめていました。ある日、ロサンゼルス郊外のダウンタウンのハンバーガー・ショップに入るとハンバーガーと店舗運営スタイルに感動し、交渉の末、マクドナルド兄弟から2億円で権利を買い取りました(20年後、権利価値は200倍程度に増加)。そして、全米、世界を席巻し、大成功に至ったのです。ロック氏が目をつけた時は、近所の人しか知らないダウンタウンのちょっと良いお店でしかなかったはずでしたが、世の中にとっては、局所的・限定的な事実から、自分の将来の夢を託して事業展開し、世界一になったという意味で、イノベーションの好例といえると思います。

常にイノベーションを追い求めていく姿勢

このような未来を見通す経営判断をするには、経営者は世の中の流れに敏感であることが重要であり、常日頃から色々な体験をし、優れた人物や書物と出会いながら自らの感性を磨き、五感を研ぎ澄ましておかないと、イノベーションの機会をみすみす逃してしまうことになりかねません。

一つの事業に止まることなく、恒常的にフレキシブルかつ複合的に事業分野を吟味し事業展開することは経営者として非常に重要です。会社の永続性を高めるためには、経営者は現在の事業に胡座をかくべきではなく、経営課題の中心として、イノベーションを常に追い求めていくべきです。

以上のような考え方を通じて、業績の維持・向上を図る事業展開を実践できるようになりましたら、あとは事業計画の作成、予算管理体制整備などを徹底しつつ、事業展開と並行して業務プロセスの継続的な改善を組織内で促していけば、競合他社に負けない経営体質を身につけることができるはずです。そして、業績の維持・向上を図りつつも、企業不祥事が発生しないような内部管理体制を構築することが永続企業になるための絶対条件となります。

<図>イノベーションの考え方


最後に

これにて、本コラムの幕を下ろさせていただきます。 全6回、いかがでしたでしょうか?

社会に期待されつづける経営を実現するためには、自身が学びつづけ、変化しつづけ、そして、業績の維持・向上を図りながらもステークホルダーの信頼を勝ち取っていかなければいけません。その一助になることを願いながら、本コラムを締めることにします。

なお、本コラムの内容は、「社会に期待されつづける経営」(第一法規出版)に沿っています。より詳しく内容を知りたい方はケーススタディも付いていますので、是非ご一読下さい。

長らくのご愛読、ありがとうございました。



『 社会に期待されつづける経営 ~ 永続する会社と起業家の条件 ~ 』
出版社: 第一法規出版
新日本有限責任監査法人 (編), 三浦 太 (執筆代表)
ISBN:978-4-474-02763-3
税込価格:3,360円
書籍に関する詳細はこちら 


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三浦 太

上場会社監査をはじめ、決算早期化、グループ管理、内部統制整備、IFRS導入、IT 統制、業務改善、事業計画・資本政策策定などの助言・支援業務を実施。大手金融 機関、大学などでの講演実績多数。