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業績の維持・向上のためのマネジメント(1) 将来の方向性の決定と経営環境の把握  ―「社会に期待されつづける経営」 vol.003

新日本有限責任監査法人
シニアパートナー 公認会計士
三浦 太

社会に期待されつづける経営を実現するためには、業績の維持・向上策と企業不祥事防止策を同時にマネジメントしていくことが不可欠です。今回から数回にわたって業績の維持・向上を図っていくためのポイントを説明します。 

まずは将来の方向性を決める

経営者のもっとも重要な役割は、会社の将来の方向性を決定することといえます。つまり、経営ビジョンを打ち出し、皆の進むべき方向を示すことです。そういうと経営戦略を立案する、中長期経営計画を策定するなどのテクニックの話と勘違いする方が多いと思いますが、その前にシンプルに経営の方向性を決めることが重要であり、その方向を社内外に周知させて何をする会社であるかを明確にして、ブレのない事業展開を行うことです。

将来の方向性を決める際に、既にやりたい事業がある場合と事業を行いたい意欲はあるが明確に進むべき事業内容を決めかねている場合があるかと思います。いずれにしても、経営者が身につけた物の見方、人間に対する考え方、歴史認識、社会との関わり方、世界情勢に対する見識などを総合的に反映させ、自然観、人生観、家族観、死生観、世界観などから導き出した大局観をもって会社の進むべき方向を決するべきです。もし現状では自らの大局観が物足りないと判断すれば、もう少し読書なり、教えを請うなり、旅に出るなりしてインプットを増やすべきです。

そして、大局観から将来の方向性を総合的に検討すれば、下記のような広く社会に受け入れられやすい事業構想に至りやすいはずです。

   ●自らの欲だけから発想しない事業構想
   ●多くの利害関係者に役立つことを目指す事業構想
   ●世の中をあっと言わせるような大所高所から導き出した事業構想

 

競合優位性をいかに発揮するか

さて、将来の方向性を決めたうえで、会社が属する業界の中で生き残る確率を高めるには、業界の中で何でも手を出すのは得策ではありません。逆に、事業分野を広げ、総合化していくことは事業展開を拡大させるためには必要な面もありますが、うまく行なわないと経営資源が分散してしまい、1つ1つの事業が弱体化する遠因になる場合が多いので留意すべきです。

つまり、事業展開していく際に、総花的ではなく業界の中で、どのような特徴を出して勝負していくかを明確に決めるべきであり、強烈な独自性(ユニークさ)を持つことが差別化につながります。

事業展開において、いかにユニークさを確保していくかですが、次の2つを強調しておきます。

(1)ポジショニングを考えることが重要

自社の事業領域(ポジション)を見定め、やるべき事業に集中特化していくことが得策です。つまり、極力競合相手が少ない、または競合相手がいたとしても自社のほうが有利に展開できる可能性があり勝機を見出せる事業領域に経営資源を集中していくことで強みを発揮することです。

その際に、事業領域をいかに明確化するかについては、以下の点が重要になります。

   ●競合関係や顧客の分布状況から、市場の成長性や自社が強みを持てる事業領域を判断して、
    事業展開する市場を決定する。

   ●仮に、競合関係が激しい場合には、差別化できる方向に自らの事業領域をずらし、
    独自性を強調できるように事業展開を変化させる。

   ●経営ビジョン、事業コンセプトを決めたうえで、市場をより詳細にセグメント化し、
    その特定のセグメントにニーズを持つ顧客に販売対象を絞り込み、
    その特定の事業領域(ニッチ)において強みを発揮する。

このようにポジショニングを明確にし、同じ業界の中でも特定の製商品やサービスに特化して専門性を磨くことができれば、十分強みを発揮することができるはずです。

(2)ファイブフォースを考えることが重要

事業上の取引関係に着目し、買い手、取引先、競合相手、新規参入者、代替品といった自社の事業展開に大きな影響を与える5つについて、自社との関係における相互の強み・弱みを分析し、ビジネスをスムーズに展開できるかどうか、将来的に脅威になり得るかどうかなどを検討すべきです。そして、自社のビジネスに強く影響するこれら5つの要因について、力関係や脅威となる可能性を検討することで課題を洗い出し、課題の改善策を立案・実行します。そして、将来の方向性とすり合わせを行ない、今後の事業展開を見極めます。

つまり、これらファイブフォースとの関係を吟味し、自社の強みを引き出せるように創意工夫をすることが、事業展開における競合優位な状態を少しでも多く作り出す考え方といえます。そうすれば、自社が何を変えなければならないかを検討する際に、勘どころを見出しやすくなるはずです。

 

自社の経営環境を把握する

将来の方向性を決めたのち、やみくもに事業展開をしても経営はうまく行きません。現在どのような経営環境にあるのか見極めることで、採るべき事業展開が見えてくるはずです。つまり、経営環境を適切に把握したうえで、現状における自社の強みと弱みを理解できれば、今後の事業上の機会や脅威を見極めることができるようになります。

いかに経営環境を把握するかですが、さまざまな考え方がある中で、次の2つは必ず理解すべきです。

(1)3C(スリーシー)分析

自社(Company)顧客(Customer)競合相手(Competitor)の3つの関係を調査分析し、自社と顧客や競合相手とのバランス関係に留意しながら、事業環境を分析し、事業展開を考えることを英語の頭文字をとって3C分析と呼んでいます。

顧客が決まると同じ顧客をターゲットにしている競合相手を把握でき、事業展開におけるお互いの距離間や強弱関係が決まってくるので、その中で自社が競合相手といかに差別化していくかを検討すべきです。その際には次の点に留意すべきです。

   ●差別化要因は長期的にも競争優位の源泉となり得るか?
    通常はお互いに強みも弱みもあるので、その強弱関係が自社にとって少しでも有利に
    展開できるように工夫し、事業内容を変化させながら、優位な状態をいかに長く継続できるかが
    ポイントになります。

   ●差別化要因が顧客にも伝わり、その価値を顧客が見出せるか?
    つまりは、自己満足ではなく、顧客が満足する水準まで事業内容を改善していくこと、
    さらには顧客も予想していないサプライズなレベルをうまく内容周知したうえで、
    提供できるかがポイントになります。

   ●自社の製商品・サービスに自信がある時ほど、顧客のニーズの把握を怠りがちです。
    また、自社の事業展開について想定どおりの綺麗なストーリーを考えたいがために、
    ライバルの存在を否定したい衝動に駆られがちです。そのような時に必ず3C分析が、
    もっとも大事であるという基本に立ち返るべきです。

なお、顧客は世の中の動きや流行に合わせ、嗜好は移ろいやすく、また競合相手は弱みを克服し優位に立とうと日々努力をするはずですから、この自社、顧客、競合相手の関係は時の経過とともに力関係はどんどん変化していきます。そのため、一度関係を分析すればいいのではなく、一定の時点ごとに何度も経営環境を把握し、その分析結果に沿って事業展開も変化させていくことが非常に重要となります。

 

(2)SWOT(スウォット)分析

経営環境を把握するためには、自社の強みや弱みを分析することは重要ですが、現状だけの分析ではなく、潜在的に起こり得る可能性も吟味して強み・弱みを見定める必要があります。そのため、将来的に生じることで事業上の自社にプラスとなるかもしれない機会があるかどうか、あるいは将来的に生じることで事業上の自社にマイナスとなるかもしれない脅威があるかどうかを把握しておくと、事前の周到な準備や改善が行えると共に、将来の方向性を見直すタイミングを逃さないように事業展開できる可能性が高まります。

つまり、強み(Strengths)弱み(Weaknesses)だけでなく、機会(Opportunities)脅威(Threats)も含めて、必ず4つの切り口で経営環境をバランス良く分析し、自社の置かれている経営環境を把握することが必要といえます。そして当該分析は、これらの英語の頭文字をとってSWOT分析と呼んでいます。

なお、3C分析と同様に、経営環境は必ず変化していくため、的確に状況を把握できるように時点ごとに分析を再度行うことが必要になります。このように、経営環境の変化を考慮し、時節に合った事業展開を行う、つまりは経営環境を内外の誰よりも早く読み、行動を起こすことは経営者の重要な役割といえます。


今回は、業績の維持・向上を図るために、いかに将来の方向性を決定し、いかに経営環境を把握するかについて説明しました。次回は事業内容をいかに決めて企業行動を起こしていくかについて説明します。


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新日本有限責任監査法人
新日本有限責任監査法人
三浦 太

上場会社監査をはじめ、決算早期化、グループ管理、内部統制整備、IFRS導入、IT 統制、業務改善、事業計画・資本政策策定などの助言・支援業務を実施。大手金融 機関、大学などでの講演実績多数。