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売上側と仕入側で税率が異なる場合の対処法は?  ―企業が避けて通れない「消費税増税」対策講座 vol.011

あいわ税理士法人
マネージャー 税理士
佐々木 みちよ

消費税率の引上げが目前に迫る中、税率8%の施行日(平成26年4月1日)前後の取引に適用される消費税率について、様々な疑問が寄せられています。

今回は、売上側と仕入側で税率が異なる場合の取扱いについて解説いたします。

売上側と仕入側で税率が異なるケース

先般、国税庁から公表された「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」では、売上側と仕入側で税率が異なる場合における実務上の対処方法が示されています。売上側と仕入側で税率が異なる場合とは、売上側が継続して採用している適正な課税売上計上基準に基づいて判定した税率と、仕入側が継続して採用している適正な課税仕入計上基準に基づいて判定した税率とが異なる場合をいいます。具体的には以下の2つのケースがあります。

【ケース1】 売上側の税率が8%・仕入側の税率が5%

例えば、1年分前受けした保守料について、保守売上側では一旦前受収益に計上して時の経過に応じて収益計上しているものの、支払側では短期前払費用処理を選択して支出時の費用としている場合がこのケースに該当します。

① 売上側
前受保守料のうちに平成26年4月以後の期間分が含まれている場合、売上側は支払側に対して、その期間分の保守料に対しては8%の税率で請求することになります。

②支払側
 短期前払費用は、支出した日の属する課税期間において行った課税仕入として取扱うこととされています。支払側が3月決算法人の場合、平成26年3月末時点では新税率が施行されていないため、支出した日の属する課税期間(平成26年3月31日までの課税期間)においては、新税率による仕入税額控除はできないことになり、支払った消費税の全額を控除できない結果となります。

このようなケースで支払側に5%の仕入税額控除しか認めないとすると、事業者間の適正な転嫁・控除を経て最終的には消費者が負担することを予定している消費税の根幹を揺るがすことになりかねません。そこで先般公表された国税庁Q&Aでは、支払側が一定の調整処理(仮払処理又は仕入対価返還処理)を行うことにより、支払った消費税の全額を仕入税額控除の対象にすることができるという取扱いが示されています。 

この調整処理は、短期前払費用処理した場合だけでなく、売上側・仕入側双方の計上基準が適正であるにもかかわらず、売上側の税率が8%、仕入側の税率が5%となるあらゆる場面において適用が可能な取扱いです。 



【ケース2】 売上側の税率が5%・仕入側の税率が8%

例えば、売上側は商品の売上計上基準について継続して出荷基準を採用し、仕入側は商品の仕入計上基準について継続して検収基準を採用している場合がこのケースに該当します。

①売上側
 平成26年3月31日に出荷した商品は、売上側の計上基準によれば3月の売上になります。したがって、売上側は仕入側に対して5%の税率で請求することになります。

② 仕入側
 出荷から検収まで数日を要したことにより、仕入側の検収日が平成26年4月2日になったとします。仕入側の計上基準によれば4月の仕入になりますが、実際に請求を受ける金額は5%の税込金額です。このような場合であっても8%の税率で仕入税額控除の計算を行って良いのかどうか、実務上は疑義が生じていました。
そこで先般公表された国税庁Q&Aでは、仕入側が売上側の税率に合わせることにより、5%の税率で仕入税額控除の計算を行うという取扱いが示されています。



トラブル対処法

特にケース1(売上側8%・仕入側5%)の場合、取引の現場では適用税率に関するトラブルも生じているようです。仕入側では5%で請求されると考えていたものについて、実際は8%で請求されることになるからです。

双方が継続して採用している課税売上・課税仕入計上基準が適正であるのであれば(誤った計上基準を採用していないのであれば)、その計上基準自体を修正する必要はありません。もしも売上側が仕入側から、税率を5%に修正するように求められた場合は、以下のような説明を積極的に行うなどの対応が必要です。



また仕入側は、合理的な理由がなく、本来8%が適用されるべき取引について5%を適用するように強要する行為は、転嫁対策特別措置法で禁止されている「買いたたき」等に該当する可能性があることを充分認識する必要があります。「自社の課税仕入計上基準によると5%が適用されるから」という理由は合理的な理由には該当しません。仕入側は、前述のケース1のような調整処理により、支払った消費税額の全額が仕入税額控除の対象にできることを正しく理解すべきでしょう。

 

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あいわ税理士法人
あいわ税理士法人
佐々木 みちよ

2002年藍和共同事務所(現あいわ税理士法人)入所。大手・中堅企業への組織再編に関するアドバイス業務や連結納税導入前後の税務コンサルティング業務に従事するほか、税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。

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