営業強化はなぜ進まないのか? ―「顧客視点力R」が課題解決型営業を実現する vol.001
はじめまして、セントリーディングの桜井と申します。 このたび、BROコラムにて、「顧客視点力R」が課題解決型営業を実現する」と題しまして、法人向け提案型営業、課題解決型営業について連載させていただくことになりました。
私は「法人向け課題解決型営業」というテーマで様々な企業の営業強化を支援してきました。 本コラムでは、その中で蓄積した営業の問題点やあるべき姿、営業を強化する方法をご紹介し、みなさまのお役にたてればと思っております。
第1回目は、営業強化はなぜ進まないのかというテーマで寄稿させていただきます。営業強化は、営業の実態を理解することからはじまります。みなさまもご自身の会社を振り返ってみてください。
営業の実態 ・・・変わらない営業
失われた10年、ITバブルとその後の崩壊、グローバル化や円高、内需の縮小などの市場変化・・・。企業を取り巻く環境はこの15年間で大きく変わりました。そして、日本企業はその変化を乗り越え変化してきました。
商品企画の方法や製造部門での工程管理、社員のレベルや組織体制など10年、15年前と比較すると相当変化してきました。つまり、景気の変動や市場変化に耐えうる会社に変わってきているのです。
しかし、営業は、商談の進め方、商品説明や提案の方法、クロージング、顧客管理などあまり変わっていない。つまり、景気変動、市場変化に耐えうる営業に変化していないのです。そのため、景気が悪くなると業績が一気に悪化してしまう・・・。今後も企業をとりまく環境は大きく変わっていきます。その変化への対応が営業に求められているのです。
様々な企業の経営者や営業責任者とお話をしている中で「うちは営業が弱い」と言う方も多いのですが、しかし、営業社員や営業のマネージャーのほとんどの方が苦労しながら頑張っています。
一生懸命、売上を上げようとし・・・ 何とか顧客との関係を維持しようとし、顧客とのトラブルを処理しようとし・・・ 怠けている人は少ない。そして真剣に営業を強化しようとしている・・・ それなのに、なぜ営業は変わらないのでしょうか?
なぜ、営業強化は進まないのか? ・・・営業強化の2つの問題点
- 「経験に依存した属人的な仕事」「やり方のない仕事」
- 「自社の視点に傾倒した仕事」
(1)「経験に依存した属人的な仕事」「やり方のない仕事」
私は、営業研修のはじめに、このような質問をしてみます。
「営業とはなんですか?」「会社の中での営業の役割ってなんですか?」
すると、受講者である営業社員の方々からいろんな答えが返ってきます。
「売上を上げる仕事」「利益を確保する仕事」 「顧客と自分の会社の橋渡し」「顧客との窓口」 「顧客に商品や自分の会社を理解させる仕事」 「顧客のニーズや課題を把握してくる仕事」
10人いたら10人がバラバラです。同じ会社で同じような商品やサービスを売っている人たちの考え方や目的がバラバラなのです。
実は、バラバラというよりも考え方や目的が漠然としているからバラバラになってしまうのです。組織の強化や改革を進めるためには、考え方や目的を理解し統一することは前提です。みんながバラバラな考えをしている組織の強化って可能なのでしょうか?
また、営業社員のほとんどは、先輩との同行による見よう見まねとその後の場数で仕事を覚えています。 ここに2つの問題があります。 1つは、属人的な努力で蓄積してきたスキル この長年の属人的な努力で蓄積してきたスキルは、習慣やクセのようなものになります。この習慣やクセを変化させるためには、場当たり的な指導や意識しろと言う指導では変わりません。変えるためのやり方を作り、徹底する環境を作らなければなりません。
もう1つは経験によって作られた営業 先輩の見よう見まね・・・これは先輩の経験です。そして場数によって仕事を覚える・・・これは自分の経験です。経験とは、過去のものです。そのため、過去の経験で営業活動を行い、過去の経験に依存し判断し、過去の経験に基づいて指導している。これで、営業を変えることができるでしょうか?
変化する市場環境に対応できる営業を作り上げるためには、変化している市場を前提にした新たな営業のやり方を作り、そのやり方に基づいた強化や改革を進め、指導や活動を行わなければなりません。
(2)「自社の視点に傾倒した仕事」
「私は顧客の立場を考えて仕事をしています」という営業の方も多い。本当でしょうか?顧客の立場で考えるには、顧客に対する知識があり、顧客の立場で考える環境が前提です。
しかし、1週間40時間以上仕事をしていて、顧客の知識を得るための時間をどれだけとっているでしょうか? 顧客のことを考える時間をどれだけとっているでしょうか?
どの企業でも営業組織、営業社員は、自分の仕事のこと、社内の調整、自社の商品知識にほとんどの時間を費やしていますしかし、顧客や顧客の業界の勉強に時間をとっていない。日々、自社の中で、自社のことを考える環境だけでは、顧客の視点にはならないのです。
営業とは? ・・・「顧客の課題と企業を結び付ける活動」
顧客は、課題があり、その課題を解決してメリットや利益を享受するために投資をし、商品やサービスを購入する。これは、どの顧客でもどの商品でも変わりません。すると、営業は顧客の課題を解決して顧客にメリットや利益を享受させることで、商品やサービスを提供し対価としての収益を獲得するのです。
つまり、営業とは「顧客の課題と自分の会社・商品を結び付ける活動」であり、その結果、課題解決というメリットや利益を提供し、収益を獲得する活動です。その顧客の課題や解決したときのメリットや利益は顧客の中にあるものです。
ということは、営業の活動は、顧客視点で考え、実行する活動(=顧客視点力R)でなければなりません。また、この「顧客の課題と自分の会社・商品を結び付ける活動」を前提とすると適切なやり方があるのです。 顧客の課題を把握する方法・・・ 自社や商品を顧客に理解させる方法・・・ 商談や提案で顧客の課題と自社・商品を結び付ける方法・・・
次回からは、「顧客視点力R」に基づいた顧客視点での営業や適切な営業のやり方についてご紹介させていただきます。そして、今後の変化する市場環境に対応できる営業を実現するためのご参考にしていただければと思っておりますので今後もご一読いただければ幸いです。
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- 株式会社セントリーディング
- 桜井 正樹
約15年間、法人向け提案型商材に関する営業支援に従事。戦略営業、体系的営業を追究し、各企業の営業を支援している。2009年株式会社セントリーディングを設立、代表取締役に就任。