経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • 京セラ稲盛氏やアップルのジョブズ氏も実践していた! “禅”が生み出す経営のメリット

禅的経営のススメ  ~全員経営に到達するための8つのステップ ①観察 Vol.001

株式会社シマーズ
代表取締役
島津 清彦

はじめまして、株式会社シマーズの島津と申します。このたび、BROコラムにて、「経営に禅を~全員経営に到達するための8つのステップ」と題しまして、様々な観点から経営に禅を取り入れるメリットや効果、経営に及ぼす気付きやヒントについて連載させていただくことになりました。

第1回目は、なぜ今経営に禅的思考が必要なのか、そもそも禅とは何か、全員経営に到達するためのファーストステップ「観察」について寄稿させていただきます。

私と禅との出会いは起業後間もない2012年5月、ある禅師との出会いでした。自分がそれまで実践してきた経営スタイルと禅との間に多くの共通点を見出した私は同年8月、青森にある曹洞宗高雲山観音寺にて得度、毎朝の坐禅実践とともに経営と禅の関わりについて研究を始めました。今では毎朝の坐禅が経営者として誰もが抱く不安感を和らげ、これまで以上に決断力を高めてくれているという実感があり、「平常心」や「不動心」を手に入れるべく、日々修業している一人でもあります。 

経営と禅

なぜ今経営に禅が必要なのか

経営者と禅の関わりを調べてみると誰もが知っている著名な二人の経営者に辿りつきます。京セラ創業者でJALの再建に手腕を発揮された稲盛和夫氏とアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏です。

稲盛氏は1997年、禅宗である臨済宗のお寺で得度し(※1)ジョブズ氏は若いころから禅寺に通い、坐禅を実践していました。稲盛氏の「アメーバ経営」は禅で言うところの「全機現(ぜんきげん)=すべての機能(細胞)を生き生きと現す」に通じるものであり、ジョブズ氏の多くの功績の陰には禅の思想が見え隠れしています。ジョブズ氏は世界24か国以上で翻訳された「Zen Mind, Beginners Mind(禅の心、初心)」(鈴木俊隆著)をバイブルとし、乙川弘文禅師を師と仰いでいました(※2)。ジョブズ氏のユニフォームとしてお馴染みの黒のタートルネックは禅僧を意識したものと言われています。また「シンプルであることは複雑であることより難しい」と話し、アップル社の製品は禅寺の「枯山水(かれさんすい)」にも通じるシンプルさを徹底的に追求しているようにも見えます。

   ※1 出典 「生き方」サンマーク出版
   ※2 出典 「禅と林檎 スティーブ・ジョブズという生き方」ミヤオパブリッシング

私自身の経営経験からいうと、社会変化のスピードが年々加速している実感から、従来のピラミッド型組織では対応ができなくなる懸念がありました。意思決定を上層部に集約すればするほど、変化への対応が遅れるケースが出てきたのです。組織が生命体のようにしなやかに対応するには思い切った現場への権限移譲が必要ですし、しなやかな組織に生まれ変わるためには現場社員一人一人が自律的に考え行動することが必須の時代となったのです。そのような全員経営型組織へ生まれ変わるための鍵は禅にありました。

そもそも禅とは何か

宗教?坐禅?哲学?いろいろな見方ができると思いますが、禅がZENとなって世界中に広まっていることを考えれば入口はあまり難しく考えずにシンプルに捉えておいた方が良いでしょう。シンプルに一言でいうと禅とは坐禅です。禅の世界では禅は坐禅しないとわからないので「只管打坐(しかんたざ)」つまりただひたすら坐りなさいという言葉もあるほどです。一方で禅が面白いのは多くの禅語を残していることです。「初心」「挨拶」「玄関」など日常の中に禅語は溢れています。禅語の語源を辿ることで実は日々の経営に活かせる気付きやヒントがたくさんある、禅語は宝の山、智慧の宝庫だと私は考えています。

経営に禅を取り入れるメリット・効果

それでは経営に禅を取り入れることで組織はどのように変革されるのでしょうか。

経営に禅を取り入れるメリット・効果は次の通りです。

1. 強いメンタリティー ⇒ 決断のぶれない「軸」を作る
2. 組織の潜在能力を引き出し持続的成長を実現
3. 自律型・自己変革型組織へ生まれ変わる
4. 社内の信頼関係が高まり一体感が生まれる
5. 顧客対応力・危機対応力=現場力が高まる

禅語と8つのステップ

具体的に経営に禅を取り入れるために必要な3つのこととして私が掲げているのが「坐禅」「禅語」「8ステップ」です。


このコラムでは坐禅の実践はできませんので、坐禅の心得だけ触れておきます。坐禅の心得として「調身・調息・調心(ちょうしん・ちょうそく・ちょうしん)」というのがあります。身体を調え、呼吸(息)を調えることで心も整う、という考え方です。坐禅の腹式呼吸は脳内のセロトニン神経を活性化し、心の安定をもたすといわれています。心が調えばゆとりが生まれ、拙速なジャッジや過剰な反応を抑えることができます。

それでは「禅語」と「全員経営に到達するための8つのステップ」についてステップごとに紹介していきましょう。第一回目はステップ1「観察」です。



ステップ1「観察」

ステップ1に入る前に心がけたいのは「初心」です。「初心」とはそれまでの先入観を一旦捨て去ることです。既成概念に執着せずにまずは「初心」に還ることです。そのうえで全員経営に導くためにまずやることは社員、お客様、取引先、商品、現場をひたすら「観察」する、「観察」に徹することです。スピードが加速している社会環境において即断即決は確かに重要です。瞬時の判断が遅れることで経営に大きく影響することは言うまでもありません。しかし、大切なのは瞬時の判断ではなく適切な判断です。適切な判断をするためには定期的に現場に足を運び、現場の情報、空気を、経営者自身の眼、耳、全身、全細胞で感じ取り、インプットしておくことが前提となります。

現場を「観察」する際に大切なことは様々な視点で観るということです。

私は次の3つの視点を意識していました。

一つは「鳥の眼」。会社全体やグローバルに俯瞰して観る眼です。
一つは「魚の眼」。世の中や市場の流れ、トレンドを観る眼です。
一つは「虫の眼」。徹底的に細部にこだわって観る眼です。


(図をクリックすると拡大されます)

次に、現場を「観察」をする上で参考にしたい禅語を2つご紹介します。

1つめは「挨拶(あいさつ)」です。

挨拶がもともと禅語であることはほとんど知られていません。「挨(あい)」とは押すこと、「拶(さつ)」とは迫るという意味です。挨拶という言葉はもともと禅の師匠が弟子の悟りのレベルを探るために積極的に切り込んで問答を投げ掛けていた、そのやり取りを語源としています。これを今の現場、職場に置き換えてみるとどうでしょうか。最近では職場から元気な挨拶が消えたといわれます。挨拶が行われているとしても立場が下の人から上の人へ形式的に行われているのではないでしょうか。本来の語源を知れば、挨拶とはむしろ立場が上の人から下の人へ積極的に切り込むくらいに実践し、社員一人一人のその日その時の状態を確認するべきではないでしょうか。

「顔色は悪くないか」「元気はあるか」「困っていることはないか」…トップや上司が自ら挨拶を投げ掛けることでメンバーのその日の状態を把握し、問題の早期発見、早期解決に結び付けることができます。

2つめは「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」です。

禅寺に行くと玄関によくこの言葉が飾られています。脚下照顧とは「常に足元を見よ、常に自らを省みよ」という意味です。これをマネジメントの現場に置き換えて考えるとまさに三現主義(現場・現物・現実)のことを言っています。組織が大きくなり、ピラミッド型になってくるとついついガバナンスやラインを重視し、自分の直属の部下の意見しか聞かなくなります。社長であれば役員の意見しか聞かなくなる状態です。しかし、ピラミッド型組織の弱点はトップになればなるほど現場から遠くなるということです。そこで、トップ自ら現場の社員、お客様、取引先に足を運び、現場、現物、現実を全細胞で感じる必要があるのです。


以上、まずは「初心」に還り、じっくりと現場を「観察」するところから始めてみてください。

隠れた問題も新しいビジネスのヒントも答えは現場にあるはずです。

次回はステップ2「傾聴」についてお話しさせていただきます。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
株式会社シマーズ
株式会社シマーズ
島津 清彦

経営・人事・組織を熱くする「発熱組織プロデューサー」 前職スターツグループでは、取締役人事部長として急成長する組織の制度・風土構築を牽引。一般社団法人禅トレプレナー協会の代表理事。