経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • 「タテ」×「ヨコ」の会計視点から新規プロジェクトのリスクや収益性を判断する 前編

「タテ」×「ヨコ」の会計視点からリスクや収益性を判断する 前編  ―プロジェクト型ビジネス企業のための「プロジェクトマネジメント完全読本」 vol.002

株式会社アドライト
代表取締役 公認会計士
木村 忠昭

私はこれまで、支援先企業の上場準備プロジェクト、資金調達プロジェクト、新規事業開発プロジェクト、産学連携プロジェクト、研究開発プロジェクト、業務システム導入プロジェクトなど、企業における様々なプロジェクトに関与してきました。最近では、バイオテクノロジーや環境技術など、最先端の技術を活用したプロジェクトにも数多く関与しております。

その経験や情報を活かし、本コラムでは、プロジェクトマネジメントの様々なテーマについて、具体的な手法や最新の事例などをふまえてお伝えしていきます。

前回はプロジェクトの定義と特徴についてお話しました。今回は、「タテ」と「ヨコ」の会計視点でのプロジェクトマネジメントについて考えてみたいと思います。

会計視点でのプロジェクトマネジメント

前回のコラムにおいて、プロジェクトの特徴として「有期性」と「独自性」を挙げ、プロジェクトマネジメントを、「限られた資源を活用し、限られた期間の中で目的を達成するために優先順位とプロセスを管理すること」と説明しました。このために、通常は制約条件である、時間、コスト、人的資源、調達などの観点でプロジェクトマネジメントを行っていきます。

プロジェクトマネージャー及びプロジェクトメンバーは、プロジェクトの各タスク及びその進捗を網羅的に把握し、品質を担保しながらプロジェクトの目的の達成のためにプロセスを継続的に遂行・管理していきます。会計視点でのプロジェクトマネジメントは、その中でもプロジェクトのコストや収益を管理することになります。

「タテ」と「ヨコ」の会計視点

財務会計の世界では、通常、企業は、継続企業の前提に立ち、企業が将来にわたって無期限に事業を継続することを前提に、その中での一定期間の損益を算出します。この会計ルールに従うと、プロジェクトのタイミングに関わらず、企業全体として一定期間の利益を把握し損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)として公表したり、その一定期間の区切りである一定時点の資産・負債などを貸借対照表(B/S:Balance Sheet)として公表することになります。ここには会計基準をはじめとする様々な会計のルールが存在し、企業は必ずそのルールに従って「タテ」の会計視点での数値を外部に公表するのです。

ただし、プロジェクト単位での投資判断を行う場合には、一定期間の期間損益とは異なる発想が必要になります。前述の通り、プロジェクトとは、独自の目的を持ち、期限が定められているという特徴があります。その期限は、例えば4月にはじまって3月に終わるというような「タテ」の財務会計の視点での一律の期間でなく、プロジェクトによって当然異なるからです。

プロジェクトを個別に把握するが、「ヨコ」の会計視点です。これはプロジェクト自体への投資判断の意思決定をしたり、プロジェクトの収益性を比較、分析する際に役立ちます。ここでは、一定期間の期間損益ではなく、お金がいつ入って、いつ出ていくのかという、プロジェクトを通してのキャッシュフローという概念でプロジェクトの投資判断や収益性の分析を考えることになります。場合によっては、キャッシュフローの時間的価値も考慮に入れながら、「ヨコ」の会計視点でプロジェクトのリスクを測定したり収益性を判断したりするのです。

<図1>「タテ」と「ヨコ」の会計視点


「ヨコ」の会計視点でプロジェクトマネジメント

「ヨコ」の会計視点でプロジェクトのリスクを測定したり収益性を判断したりする代表的な方法として、おおきく4つの方法(1.回収期間法、2.投下資本利益率法、3.正味現在価値法、4.内部利益率法)があります。

4つの方法について、次の章から解説したいと思います。

<図2>「ヨコ」の会計視点による4つの方法



1.回収期間法

まず1つ目の方法が、回収期間法と呼ばれるものです。

回収期間法とは、投資評価指標のひとつで、投資額をどの程度の期間で回収できるかを示します。回収期間が短い方が安全性の高い事業と考えることができ、プロジェクトの投資に対するリスクを評価することができます。

例えば、プロジェクトに対する初期投資金額(キャッシュアウトフロー)が200、1年目のキャッシュインフローが60、2年目のキャッシュインフローが80、3年目のキャッシュインフローが120の場合、この新規事業の回収期間は2.5年(200-60-80=60、2年+(60/120)年=2.5年)となる。

将来の計画が立てづらい、もしくは不確実性が高いプロジェクトの場合には、どうしても遠い将来の予測が立てづらく、相対的に立てやすい近い将来の予測をベースに、仮にその計画通りにプロジェクトが進展した場合に、何年で最初に投下した資本を回収できるかを検討することが合理的です。

この指標を活用することにより、色々なプロジェクトの計画段階で、例えば何年以内でプロジェクトにかかった投資を回収するというルールを決めておけば、プロジェクト投資に関する金銭面での最低限のリスクヘッジを行うことができます。ただし、あくまで保守的にリスクを測定する手法であり、プロジェクトの収益性そのもの(いくら投資をしていくらリターンがあるのか)を測定する手法ではありません。そのため、そのプロジェクトがどの程度収益性があるのかを検討したり、複数の収益プロジェクトを比較検討する場合には不十分な場合があります。

2.投下資本利益率法

2つ目の方法が、投下資本利益率法と呼ばれる方法です。投下資本利益率法は、ROI(Return On Investment)法ともいい、投資評価指標のひとつで、特定の投資に対し、どの程度の利益を生み出しているかを把握しプロジェクトの収益性を判断することができます。ROIが高いほど効率的で収益性が良いプロジェクトと考えることができます。ここでのリターンまたは収益性としては、期間利益でなくあくまでキャッシュベースで考えるところもポイントです。

ひとつ目の方法である回収期間法との違いは、回収期間法は、前述のとおり、プロジェクトへ投下した資金をどの程度の期間で回収できるかを表しリスクの評価はできましたが、投下した資金を回収した後に、どれだけの収益を得ることができるのかというリターンについては、指標として表すことができないため、プロジェクトの投資判断にあたっての必要条件(足切り)に使うことはできても、アップサイドである収益性については判断することができませんでした。ところが、この投下資本利益率法を使えば、プロジェクトの収益性を複数の案件で横並びに判断することができます。

計算方法としては、例えば、プロジェクトに対する初期投資金額(キャッシュアウトフロー)が200、1年目のキャッシュインフローが60、2年目のキャッシュインフローが80、3年目のキャッシュインフローが120の3年間のプロジェクトの場合、このプロジェクトの投下資本利益率は10%(((60+80+120)-200)÷3)/200=10%)となります。計算方法が比較的シンプルであり、使いやすい指標です。

次回は、キャッシュフローの時間的価値を考慮した2つの計算方法、さらに新規事業プロジェクトの会計視点からの判断方法について述べさせていただきたいと思います。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
株式会社アドライト
株式会社アドライト
木村 忠昭

東京大学大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務・法定監査業務を担当する。 2008年、株式会社アドライトを創業。経営・ファイナンス等における実践的プロフェッショナルサービスを展開している。

バックナンバー