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企業成長へ導く事業承継対策  ―事業承継の現状と実態 vol.001

税理士法人Bridge
代表社員 公認会計士 税理士
宮崎 良一

昨今、戦後に誕生した会社の多くで、世代交代の時期を迎えています。しかし、後継者がいないがゆえ、存亡の危機にさらされている会社や、後継者のいる会社でも、大きな相続税負担・その他様々な問題をいかにして乗り越えるかについて、頭を悩ませている会社が多くなっています。

本コラムでは、全ての会社で必ず訪れる事業承継問題を“企業が成長する一つのターニングポイント”と捉え、効率的且つ効果的に解決していく方法を解説していきます。

第1回では、事業承継の現状と実態について解説します。

事業承継の現状

全ての会社において、社長交代時期は必ず訪れます。証券取引所に株式を上場しているような大会社では、次期社長は一般に社内の人材の中から選ばれ、新社長として任命し、前社長からの引継ぎを終えれば、社長交代は終了します。このようにして社長が交代できる会社は、実は少数派なのです。

我が国には、およそ150万社の会社があり、このうち証券取引所に株式を上場している会社は、約4,000社とほんの一握りに過ぎず、その子会社や関係会社を含めて、後継社長を社内あるいはグループ会社から選ぶことによって後継者問題を解決できる会社は、おそらく5万社に満たないと考えられます。

その他の会社では、後継者に“襷”を渡すだけで社長交代を終えるわけにはいかず、特に非上場会社では、社長の交代と同時に、社長が所有する株式の引継ぎや会社に対する債務保証および社長の個人資産の担保提供という問題をも解決しなければ、社長交代は片付きません。非上場会社において、社長交代ではなく事業承継と呼ばれるのは、こうした事情によるものです。本コラムでは、非上場会社(中小企業)にスポットを当てていきます。

事業承継の実態

近年、我が国では事業承継問題が取り上げられる事が多くなり、事業承継問題への関心の高まりとともに、事業承継の障害となっている様々な規制を少しでも軽減すべく、会社法や税法の整備が進められてきました。

以下では、中小企業白書のデータを参考にしながら、我が国の事業承継の実態について解説します。 
 

(1)我が国の事業所数(本店、支店等)の推移

図表1は、我が国の事業所数(本店、支店等)の推移を示しています。1986年頃の約535万所をピークにその後は減少傾向にあり、2006年には421万所と18年間で100万所以上減少しています。この現象をもたらしているのは、中小企業の減少であると考えられます。我が国の企業数の99.7%は中小企業であり、そこに勤める人は2,800万人と全従業員の7割を超えています。

出荷額では144兆円と全企業の51%を占め、設備投資額は3.8兆円と全体の37%を占めており、中小企業は我が国の産業を下支えしているといえます。1986年以降、平均して年間約5万所以上が廃業もしくは倒産・閉鎖に至っているのは、昨今の経済不況の影響のみならず、中小企業の事業承継が円滑に進んでいないことによる点が非常に大きいと考えられます。

図表1 日本の事業所数(本店、支店等)の推移   (出所:中小企業白書)日本の事業所数の推移


(2)経営者の高齢化

中小企業の多くは戦後に設立されており、その多くは経営者の高齢化に直面しています。図表2は経営者の年齢の変化を示しており、1980年頃は全社長平均年齢が53歳でありましたが、年々上昇し、経営者の高齢化が著しくなっています。従来は、大会社ほど経営者の年齢が高く、中小企業ほど比較的若い経営者が多かったが、昨今では中小企業経営者の年齢が大会社経営者の年齢に近づきつつあります。社長の年齢が変わらないということは、順調に世代交代が行われていることを意味しますが、年齢が上昇していることは、社長交代の時期が遅れていること意味し、中小企業の事業承継が円滑に進んでいないことを表していると考えられます。

図表2 社長交代率調査   (出所:「社長交代率調査」(帝国データバンク)、中小企業白書)社長交代率推移


(3)廃業と経営者の年齢

図表3は、廃業時の経営者年齢を示しています。従来は年齢に関わらず一定の廃業が発生しており、むしろ若年者の廃業が多かったのですが、近年は廃業する経営者の年齢が高齢化しています。こうした状況から、後継者がいない状況で、経営者自身が高齢になるまで仕事を続け、高年齢のために仕事ができなくなり廃業するケースが多いのではないかと推察できます。すなわち、中小企業の事業承継が円滑に進んでいないと考えらます。
 

図表3 廃業と経営者の年齢   (出所:中小企業白書)廃業と経営者の年齢の推移


(4)事業承継問題への意識

図表4によれば、自らの代で廃業しようと考えている経営者は4%に満たず、その他の経営者は、事業を継続したいと考えています。しかし、図表5でわかる通り、半分以上の経営者が事業承継問題を誰にも相談していないというのが実態です。事業承継は、引き継ぎ手の資質や組織内の調整のみならず、法律や税務の問題が絡んでくるため、社長が誰にも相談せず一人で考えて実行するには難しい問題であります。

特に、後継者や親族への株や資産の移動、他社への事業譲渡などの手続きは、税理士等の専門家にアドバイスを求める事が不可欠となります。しかも、事業承継には時間がかかるため、経営者が引退間近の年齢になってから検討を始めたのでは遅いと考えられるため、早い段階から後継者を想定し、時間をかけて後継者の育成と共に事業承継に取り組んでいく必要があります。

図表6は、事業承継について相談していない理由を示したものですが、事業承継そのものをまだ深く考えていないという回答が多くなっています。つまり、目先の事業存続に気を取られ、事業承継問題を疎かに考えている経営者が多く、中小企業の事業承継が円滑に進んでいないと考えられます。
 

図表4 事業継承の意識
事業継承の意志

図表5 事業継承の相談
事業継承の相談


図表6 事業承継について相談していない理由事業承継について相談していない理由

事業承継問題を“企業が成長する一つのターニングポイント”と捉える

事業承継の現状と実態をまとめると、我が国では、経営者の高齢化が進み、1年間で平均5万所発生する、廃業、倒産・閉鎖の多くは高齢化が原因であり、事業承継問題を円滑に解決できていません。また、ほとんどの経営者は事業を継続したいと考えていますが、どのように事業承継問題に向き合えば良いかわからず、目先の事業存続に気を取られ、事業承継問題を疎かにしているというのが現状です。

このように、事業承継の現状と実態を考察すると、様々な問題がある事がわかると思います。また、事業承継をネガティブな問題として捉える経営者が多く見受けられますが、事業承継問題をより一層の企業が成長するターニングポイントにするポジティブな問題と捉えることが出来ると私は考えています。ビジネススピードが格段と早くなっている昨今の社会において、成長できる骨太で且つ時代の変化からくるニーズに臨機応変に応えられる組織体制およびビジネスモデルを構築するためには、事業承継問題を効果的且つ効率的に解決していく必要があります。

次回は、企業を成長に導く事業承継の方法について解説したいと思います。乞うご期待下さい。


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宮崎 良一

2011年、株式会社Bridgeと税理士法人Bridgeを設立し、ともに代表に就任。その後、企業成長支援業務を専門に扱い、多くの会社を成長させた実績を持つ。その他、事業会社の取締役も兼務している。