経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • 企業価値はこれで決まる!押さえておきたい資産運用と株主価値

「企業価値」と「株主価値」 ―企業経営のヒント vol.015

あがたグローバル税理士法人
公認会計士
井口 秀昭

M&Aでは企業価値が重要になります。企業価値は、経営戦略の指針にもすべきもので、企業は常にそれを高める努力が必要といえます。
企業価値と似た言葉に株主価値という言葉がありますが、今回はその二つの価値の関係について考えていきます。

資産の利用方法により決まる企業価値

貸借対照表の左側は資産であり、資金をどのように運用しているかを表示しています。資産とは、今後収益を生み出す財産です。企業は、手持ちの財産をいかに有効に使い、収益を上げるかが問われています。

資産から収益を上げる方法として二つの方法があります。一つは資産を今の時価で売却してキャッシュに換えるものであり、もう一つは資産を事業に役立てながら長期に保有して収益を上げる方法です。常識的には資産をここで全部売り飛ばし、現金に換えてしまうより、資産を使用して将来にわたって収益を上げた方が有利なはずです。なぜなら、企業は利益を求めて行動しているのですから、もし売った方が得なら、売るはずです。所有したまま使用しているということは、その方が価値が高いと判断しているからに他なりません。

資産の使い方が企業価値を決定します。企業価値とは企業全体の価値、いわば企業全体の値段です。企業価値は資産を事業に使用することにより生ずる将来収益により決まります。その結果、同じ資産を保有していても、その利用の仕方が違えば企業価値は変わります。資産が高収益を上げるように使えば企業価値は増えますし、下手に使えば企業価値は減少します。資産の使い方が企業価値を決めるのであり、それをうまく使うことが経営者に求められる能力といえます。

このように、企業価値は貸借対照表の資産だけで決まります。つまり、貸借対照表の右側の負債と株主資本は、企業価値にまったく関係しません。では、貸借対照表の右側はどんな意味を持っているのでしょう。

有利子負債と株主資本

貸借対照表の右側は、左側の資産として運用している資金をどこから調達しているかを表示しています。有利子負債は銀行などの債権者から調達し、株主資本は株主から調達しています。債権者と株主はともに企業に対する資金提供者であることに変わりはありません。資金提供者はある程度のリスクを負って資金を企業に供給しているのだから、そのリスクに応じたリターンを得ることができます。負債と株主資本ではそのリスクが違いますから、それに応じてリターンも変わります。

負債は契約により、金利を含めた返済金額と返済時期が確定しています。しかし、この企業が爆発的に儲かっても、契約で決められた以上のものを返済する必要はありません。つまり、リスクとリターンが限定されたローリスク・ローリターンの投資といえます。

一方、株主資本は資金提供に対する返済は確定していません。もし、会社が爆発的に儲かれば、大きな利益を手にすることもできますが、会社が不振になれば、元本がなくなってしまっても文句はいえません。株主資本に対する資金提供はハイリスク・ハイリターンの投資です。

企業価値と株主価値

資産の運用によってもたらされた企業価値は、資金の源泉である負債か株主資本のどちらかに帰属します。負債に帰属する金額は契約で確定していますから、企業価値から負債を控除したものが株主価値となります。企業価値は資産の使用状況によって常に変動していますから、その変動分は株主価値の変動として表現されることになります。資産をうまく利用し企業価値が増加すれば、その恩恵は株主が享受し、株主価値が増加します。逆に、資産の利用状況が下手で、企業価値が下がれば、株主価値が減少します。

このように、企業価値と株主価値は違うものですが、企業価値の増減は株主価値に直結することから、株主は企業価値を向上させることを経営者に要求することになります。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
あがたグローバル税理士法人
あがたグローバル税理士法人
井口 秀昭

東京大学経済学部卒業後、農林中央金庫、八十二銀行、タクトコンサルティングを経て、2007年に宮坂醸造株式会社の監査役に就任(現任)。2011年にあがたグローバル税理士法人に入社(現任)。

バックナンバー