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マネージャー研修の考え方 第1回 -マネージャー人材を育てるために-

株式会社カクシン
代表取締役 公認会計士 税理士 中小企業診断士
長山 宏

今回から新企画として紙面によるマネージャー研修を行います。私は多くの企業に接している中でマネージャー人材がなかなか育たない現実を目の当たりにしながらなぜ育たないのか、どうすれば育つのかなどを考えており自分なりに結論を見ました。今回はその内容をシリーズでお送りします。

マネジメントの考え方

うまくいくはずなのにうまくいかないのは、成長するためには失敗が必要であり、失敗により人の心が分かるようになり、そして反省して努力するようになるため、失敗するように見えて、感じ、考えるようになっているのだと思います。

具体的には以下の現象が挙げられます。

(1) 固定観念
人間の意識は顕在意識と潜在意識に分けられますが、顕在意識は新たな危険を避けることに注力されるので、本来であれば、10段階の検証を通じて、その実態がようやくある程度判断できることを、第一印象で2、3の事象で固定観念を形成し、もうそれ以上考えずにその観念で決めつけてしまうのです。

(2) 歪み
これはいわゆる「鏡の法則」に当たるものです。これは自分に見える環境はいわば鏡に映った映像であり、自分の心の状態を投影したものですので、いくらその像を変えようとしても変わるものでは無く、自分が変わらなければいけないというものです。人間は誰でも満たされない尊厳欲求が強いので、無意識に自分に都合の良い見方をしてしまいます。自分の都合でゆがめられた現象を、我々はそれが真実だと思い込んでいるのです。

(3) 脚本
これは自分の親から幼少期に与えられたコンプレックスが、いわゆる小説のような脚本を作り出し、それを無意識に演じてしまいます。私の場合は、劣等感がコンプレックスですので、いくらでも努力が出来ますが、その結果、恨みを買って結果「お前はダメだ」と言われる環境を無意識に作ってしまうのです。大切なことはその事実を認識して、それを改めるように心がけるとともに、マイナスの観念であるコンプレックスを自分の強みだとプラスに思うことで、マイナスの現実を引き寄せないようにします。

これらの現象で失敗するため、傷ついたり、自信を無くしたくないので防衛本能が働いて行動を妨げます。つまり、なかなか人が動かないのは、防衛本能によりますので、それをいかに解いていくかが大事なのです。

私は、マネジメントの問題は、殆どが防衛本能にどう向き合うかだと思っています。

マネジメントすべき対象

(1) 意識
これは主に防衛本能にどう向き合ってそれを解除させるかです。変わりたくない、失敗したくない、傷つきたくないので、なんだかんだ理由をつけて、新たなことはやりたがりませんので、それにどう対処するかです。相手の為になると思えば、勇気が出て一歩前へ出られるようになります。また考えられるリスクや障害を事前に描きながら、どうすればうまくいくかのシミュレーションを行い、恐れを排除させます。

(2) 仕組み
これは事業でドメインをとらえた良いビジネスモデルを作ることで、誰でも結果を出せる状態になりますので、まず重要なのは事業とドメイン作りです。次に業務ですが、誘引を高めるために、作業者が結果を出せ、お客様(後工程)から評価される状態を形成する必要があります。これは、動機付けは自分が結果を出し、そのことが評価されることですので、その流れを仕組みに内在化させることが重要です。

(3) 行動
これはマネージャーが自ら行うのではなく、部下の能力、考え方、特徴をかんがみながら、その人が出来るように仕事を設計してやらせることで、以下の行動をとらせます。

・自己組織性
これは自立して、自らのやるべき行動を行い、人に働きかけながら調和を生み出すことです。
・関係性
自分の役割期待の結果、生み出した仕事の成果を他者に与え、他人の成果を受けることです。
いわば相互依存の状態を作れるかです。
・多様性
自らの特徴をうまく生かしながら、自分でしかできない成果を出していくことです。
ただし問題は全体最適につながらない個性は害になるということです。

(4) 結果
会計数値です。結果指標とプロセス指標があります。この両方を求めて結果を出すように管理する必要があります。

なぜマネージャーが育たないか、またどうすれば育つか

私は、良いマネージャーにはなかなかお目にかかれないので、なぜそうなのかを追求してきました。以下その内容をご説明します。

(1) 一人前の基準が定まっておらず、ある要員ごとに一人前にするための実務経験を積ませていない
これは仕事のローテーションが決められていないので、経験が偏ってしまい、全体を分かった人が実際にはなかなか作られないのが問題です。マネージャーは、まず自分でできることが基本であり、そのためには経験して、仕事を客観視できて、自分がやらずに人に説明が出来て、やらせることができることが大事です。自分ではできるけど、人には説明できないというのでは、マネージャーにはなれません。

(2) 自分でできて客観的に説明できても、自分がやらずに人にやらせ、自分が暇になることが耐えられない
これもよくあることで任せられないで抱えこんでしまうのです。なぜなら動いていなければ仕事をしておらず、あたかも悪いことをしているかの錯覚を感じてしまう場合です。貧乏暇なしですかね?部下にゆだねて、自分はやらずに見てお入り、例外管理をする。本来はこうでなければいけないのですが、一般には辛いようでどうしても部下に任せられずに自分がやってしまうのです。

(3) 部下が頼りなく見えたり、任せられないと思ってしまう
これは自己否定の観念が、鏡の法則により部下に投影して、部下の欠点ばかりが目につき、任せられなくなってしまうのです。これは自分には頼りなく見えますので、なかなか変えられません。またダメだと見えてしまいますので、恐ろしいことにピグマリオン効果でますます部下をダメにしてしまいます。つまり教育の世界で言われていることですが、先生が、生徒をダメだと思えば、生徒はダメになり、優秀だと思えば、優秀になるという法則です。真実ではなく鏡の法則で、マネージャーに見えている歪んだ現実で、部下に対峙してしまいますので、うまくいかないのです。しかし、これは誰もが無意識に行ってしまっていますので、なかなか変えられません。

(4) どうすればマネージャーが育つか
これは各要員ごとに一人前の基準を定めて、それを一定の期間でできるようになるべく、仕事のローテーションをしながら、まずオペレーションが出来る人を作ります。次にマネジメント手法を定めて、それを学ばせ、体験させます。大事なことは自分が上司から教育されたように、上司のやり方を真似ますので、社内に定着させることが必要です。さらに人事考課が大事です。一般には、人事考課は結果を評価しますが、マネージャーの評価は、結果ではなく、部下に権限委譲を行い、部下の特徴をつかみながら、その人に合った業務を与え、どれだけ成長させたかで評価します。大切なのは、結果で評価すれば自分でやってしまい、権限移譲できない管理職を作ってしまいます。

(5) 教育
多くの会社が業者に教育をゆだねて、自社の業務でのOJT(オンザジョブトレーニング)はあまりやられていません。私は、各業務ごとに知識、スキル、マインドを定義して、それをしっかりと血肉化させるように教育教材を作って頂きます。そうすることで必要な知識が定着します。ものを考えるには、知識が考え方の枠組みを決めますので、これは大事です。サービス業の場合は、実は教育は製造業の品質管理に当たります。製造業では商品が見えやすいので品質管理をしますが、サービス業では実は商品は社員ですので、評価としてよりは品質管理として教育をする必要があります。心掛けたいものです。

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長山 宏

91年三優監査法人入社、97年三優BDOコンサルティング(株)取締役就任を経て現在に至る。京セラの稲盛名誉会長を師と仰ぎ、「社長が変われば全てが変わる」という標語のもと活動中。

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