経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • フリーランスの限界を突破するため次のステージへ!そこで出会った"気づき"とは?

創出したい価値とは何か?経営の最前線で突きつけられた”問い”と”答え”とは?  ―学術研究にITをはこぶ!ベンチャー企業の挑戦 vol.001

株式会社アクセライト
専務取締役
大下 知樹

私が2010年に株式会社アクセライトを起業し、この11月で丸二年が過ぎようとしています。ソフトウェア技術者からITベンチャー企業の経営者へと転身してから、日々の業務内容はもちろんのこと、仕事に対する考え方も大きく変わりました。私個人としてはこの変化を自分の成長と捉えていますし、起業する以前に気づいていればまた違った仕事ができただろうなと思うような気づきもあります。

「やったことがないなら経験してみろ」という発想はあまり好きではありません。経験しないでエッセンスだけを学ぶことができれば一番効率的です。何より時間は有限です。企業経営を通じて得られる気づきもあれば、企業に勤めることでしか得られない気づきも多くあるはずであり、全てを経験しようと思うのはあまりにも非効率です。

あくまでひとつのモデルケースにすぎませんが、本コラムでは私が日々の仕事を通じて感じたことや考えたことをご紹介したいと思います。起業や独立を考えている方々にとって、私の起業から得られた経験や考察がご自身による起業・独立後のイメージ構築につながったり、無駄な失敗の回避につながることがあれば幸いですし、そうでない方々にとっても、”企業”が何を考えるかという経営的な視点を通じて、今のご自身をより客観視でき、日々の仕事がまた一味違って感じられるかもしれません。すでに経営をされている方々がどのように感じられるかは少々不安ではございますが、たとえご叱責であっても反響があればこれ以上の喜びはありません、と思うことにします。というわけでどうぞ皆さまお手柔らかによろしくお願いいたします。

起業するリスクと起業しないリスク

ベンチャー企業という存在は昨今すでにそれほど珍しいものではなくなりましたが、そう多くの人が起業という経験をするわけでもありません。それにひと口に起業といっても、その背景やプロセスにはさまざまなかたちや思いがあるはずです。そこで、まずは私が起業に至った経緯をご紹介します。

2010年当時、私はアプリ開発やシステム構築のフリーランス技術者でした。

組織の中で仕事をするのとは異なり、一人で仕事をこなす場合、上流から下流までの仕事を一貫して一人で仕上げる必要があり、これは技術的なスキルだけではなく対人調整スキルも必要とされます。意外にジェネラルな能力を要求される厳しさはありますが、一人で仕事を仕上げることにより、うまくいけばスピードも質も最大限のパフォーマンスを発揮することができます。これは技術の仕事をしていて非常に快感を感じる瞬間でもあります。

またフリーランスはしがらみが少ないということも大きな利点の一つです。

フリーランスで働くエンジニアも多いこのご時世、個人的にはこういう生き方もありかなと思い、忙しい毎日を過ごしていました。当時はiPhoneアプリ開発の隆盛期ということもあり、ご縁のある複数の企業様よりアプリの制作を依頼されることが続きました。開発者に限らず、仕事をする者にとって仕事があるということはとても幸せなことです。

ところがすぐに問題点が露呈します。やはり無い袖は振れぬで、心は幸せであっても制作のスピードが追い付かない。あまりに忙しい状態が続くと体も持たなくなりますし、新たな仕事の依頼を請けられないという機会損失の恐れもあります。

それに仕事がこなしきれないといっても一人で抱えている仕事の量などは多寡が知れています。ということは逆に仕事が減ってしまったときはあっさり稼ぎがなくなるという事態も想定できます。

そこで感じたのは、一人で仕事をまわすのは仕事の量の調整という観点からは最悪で、リスクヘッジのためにはチームで(複数人で)仕事をするしかないということでした。

選択肢は二つに一つ、企業人になるか起業人になるか。

もともと自分で組織をつくることに興味があったことと、そのときにお客様に頂いていた仕事が面白く、今後の発展性を感じたことから、私は起業人になることを選択しました。

もちろんリスクをとることに対する恐れがあったことは否定できません。しかし、初期投資の少ないITベンチャーで起業して失敗するリスクは大したことではないですし、むしろ本当のリスクは自分の気持ちを欺いてチャレンジせずに生涯その後悔を引きずることではないだろうかと思い至りました。

新たなブレインを迎えて

起業して後、すぐに板垣という共同経営者(現弊社代表取締役)が見つかったのは大変に幸運でした。彼は大学の学生寮時代の先輩にあたり、丁度私の苦手なウェブページの制作スキルがあったことや、起業をする手前であったことなどの条件が重なり、ほどなくして共同経営者として合流しました。私自身は一人で起業したため”不本意ながら”代表取締役を務めていたので、すぐに板垣に代表取締役を任せてしまいました。複数人で仕事をしているのだから、自分はやりたいことをやり、嫌なことはそれをやりたい人がやればいい。本当にちっぽけなことですが、早速組織をつくったメリットを享受した気分でした。

仕事をしていれば常に目の前には問題があり、その解決に迫られます。そのようなときに、自分以外のブレインがいるというのは心強いものです。

起業当初はどうしても仕事の絶対量が確保できません。新しい仕事を創るにしてもどのようなビジョンを描けばよいのか。自分たちの強みはどこにあるのか。そしてそれを生かしてビジネスにつなげるにはどうしたらよいのか。考えるべき事項は山積しています。

それを一人で考えるのがいかに大変かは想像に難くありません。ブレインストーミングはブレインが不在では成立しないのです。

この2年を振り返ってみると、仕事量には特に爆発的な成長があるわけでもなく、目の前の仕事を丁寧に仕上げつつ知人やご縁のある企業様から新たな仕事を頂いて少しずつ成長をしている状態です。仕事の内容は、スマートフォンアプリ開発、システム開発、ウェブページ制作、そして調査研究の補助が中心です。

突きつけられた問いを通じて知った自分自身

ありがたいことに各方面からお仕事をいただき、弊社は2012年9月現在で計7人の従業員(うちフルタイムは6人)で事業を営んでいます。人が増えると悩みの性質も変わるもので、ビジョン云々の前にキャッシュフローを何とかしなければならないという厳しい現実を目の当たりにすることとなります。1年を通じて仕事の波はあるわけですし、そういう事態を乗り切るのは経営者として当然の義務であるわけですが、苦しい局面において重要なのは、自分のコアとなるモチベーションは何かを明確にしておくことなのではないかと感じるようになりました。

弊社にはまだ社是がありません。なんとなく無いわけではなく、現時点では時期尚早として策定を見送っています。しっかりした社是があって、それに従いすべての従業員が日々の業務に邁進し結果としてそれを達成するという循環は、やはりある程度ビジネスモデルの内容が見えてこないと難しいと考えています。理想を言えば潤沢な予算の仕事だけを受けて常に安定的なキャッシュフローを築ければいいわけですが、現実はそれほど甘くなく、現状ではそのような理想的な仕事だけを選べるわけではありません。

先が見えなかったりキャッシュフローの不安定なプロジェクトを進めていると、何より経営陣側に不満や不安がたまってきます。これはある意味一番危険な状況でもあります。

少々具体的に例示しますと、パートナー企業さんと進めていたエンターテイメント関連のプロジェクトが、関係者の調整に難儀し、結果としてサービス開始前に解散する事態に陥ったことがあります。投資済みのプロジェクトからの撤退を決断することはとても苦しいものですし、ビジネスという観点から正しい判断ができたかは今でも確信が持てません。ただ、結論として当時は最後まで踏ん張ることができませんでした。

そのような失敗を複数経験し、我々は”なぜ事業を営んでいるのか”という根本的な問いに突き当たりました。

もちろん利潤を得るためというのはその通りです。でもそれは企業が存在するための必要条件を言っているに過ぎず、個人的なレベルに還元できる目的ではありません。少なくとも我々にとってはそうでした。

そこで我々経営陣で議論し、何であればやりたくて、何であればやりたくないかを考えた結果、面白いことに二人の共通項としてあぶりだせたのは「社会のためになること」でした。企業的に換言すれば、「社会的な価値を創出すること」になります。好き嫌いという観点も含め、自分たちが社会にあってほしい価値を創りたいということが軸になりそうだと考えたわけです。社会貢献というと大げさでやや偽善的にも聞こえますが、これは上辺の言葉の問題ではありません。

自分のことを知ることは意外に難しいものです。

別にモチベーションが何であっても構わないと思うのです。金銭、地位、名誉といった目標を持つ人もいれば、特定の業種に携われればなんでもいいという人もいるでしょうし、暇だから仕事をしているという人もいるかもしれません。またはそれらが程度の違いこそあれ、複合的になることも自然でしょう。私も企業を経営する以上、より多くの利益を得たいと考えています。

ただ何かを仕事にするのであれば、仕事を通じて実現したかったものを確実に実現したいですし、いざ何らかの危機に瀕したときに自分を見失わずにいられるのは、自分の目標を知っていればこそ、です。金銭的価値のみを追求していたとしたら、本当に苦しいときに果たして踏ん張りがきくでしょうか。

企業経営を通じてこのような認識に至ったことは私にとっては本当に大きな気づきであったと感じていますし、これは企業経営者だけにかかわらず、多くの人にとっても有益な気づきであるに違いないと考えています。

社会的な価値を創出すること。

そのために我々が行っていること、考えていることは次回以降にお伝えいたします。


このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
株式会社アクセライト
株式会社アクセライト
大下 知樹

独学でC、C++, Javaを学び開発経験をスタートさせ、ベンダー勤務、フリーランスを経て、2010年11月に株式会社アクセライトを創業。現在は同社の専務取締役を務める。