ビジネスモデル構築のために ―コンサルティング現場からの報告―
ビジネスモデルは、本来売上高1億円までの時代に作るべきものです。
単品の鉱脈を見つけて、それをビジネスモデル化し、掛け算状態で拡販していく仕組みを作るのです。今回はビジネスモデルの構築方法をご紹介します。
当社が進める絆経営では、まず経営者の気質にあったビジネスモデルを作り、それから組織的に標準化、複雑化させていきます。手順は以下の通りです。
1.価値の特定
ビジネスモデルを作るには、その価値が特定されなければいけません。価値は3つの側面で考えます。
第1に社会貢献です。社会の隙間をどう定義して、それを解決するかです。ここでは、自社が今関わっている業界の取引関係地図を思い起こし、顧客からみて不便を感じている領域を定義します。それはドメイン設定に当たる重要なプロセスです。
第2に顧客貢献です。これは、ドメインで特定された領域のうちで自社の顧客像を特定して、その顧客が困っている内容を解決する内容を定義します。
第3が社員貢献です。社会貢献と顧客貢献を行うビジネスを行うにあたり、社員の成長の課題として、どう成長していただくかの課題です。
この3つは絆経営では、エニアグラムという人間の気質を判定する手段を使います。これは、人間を9つのタイプにわけて性格を特定するものですが、価値を特定したりビジネスモデルを作るに際して、実に素晴らしい枠組みを与えてくれます。
2.経営資源の特定
ビジネスでは、時代変化に追いついていない経営資源をどう活用するかが重要な課題です。前述の価値は、時代の変化に他社が追いついていない領域で、自社独自の領域を特定することで価値が得られる領域を特定しましたが、さらに経営資源の特定が必要です。
ヒト、モノ、カネ、情報で時代の変化に対応できていない、未利用経営資源を見出して、それらの長所をいかに使って、隙間を埋める価値を生産するかを定義します。
3.KFS(成功要因)の特定
ビジネスモデルの成功は、経営資源の傾斜配分です。価値があるところに、お金と時間を投入します。
ビジネスは、限られた経営資源で戦っていますので、効果があるところに傾斜配分して、1円当たり効率と1時間当たり効率を高める必要があるのです。
またビジネスは、なんでも成功要因があります。それを的確に掴めるかどうかが、成否を決めると言っても過言ではありません。
4.戦略の特定
絆経営では、以下の内容を特定します。
【ドメイン】
これが最重要ですが、前述の価値のところで述べましたので省略します。
【顧客】
ドメインの中で、同じ問題課題を持っている顧客を特定して、その顧客に満足して頂けるビジネスを提供します。
【商品】
特定した顧客が、喜んでくれる商品の機能とサービスを特定します。
【市場】
顧客から見た価値です。商品との関係で商品=市場価値と言われることがあります。
【事業】
これは、企業から見た事業ミックスです。企業が提供するのは単品ではなく事業ミックスですので、いかなる事業の集まりで顧客に価値を提供していくかの定義がこれに当たります。
【機能】
営業、開発、生産、アドミ(管理)に関する戦略です。会社の方針に従って定めます。
【組織】
組織を効率的に運用するためにとる戦略です。
【マーケティング】
売れるための仕組みです。販売いらずになるように定義します。ビジネスモデルが、うまく機能するにはマーケティング戦略は特に重要です。
5.循環させるために
私はビジネスモデルとは、企業環境と企業との循環だと思っています。経営資源、仕事がいかにスムーズに循環するかが成否を決めます。
そこで特に大事なのがマーケティングです。
マーケティングがうまく機能することで、仕事が安定して流れます。その重要性を決めるのは、仕事を安定的に紹介してくれる拠点を作ることです。つまり、過去に自社と取引してくださった顧客を囲い込んで「いけす」を作ることです。
下請けやあるプロセスを自社が担当することによる「組み込み」、そして顧客から見て必要な機能を果たせる企業と連携して、共通の価値観で仕事を出し合う関係を作ります。いわばAKB48のユニットが、変幻自在に目的に応じて編成替えをするような関係で、顧客に向き合う「ユニット経営」等の進め方があります。
6.なかなかビジネスモデルが出来ないわけ
なんでもそうですが、出来るかどうかは目的が定まるかどうかで大きく影響します。ビジネスモデルの場合は、価値が定められるかどうかが成否を分けます。
今まで私は、きれいなビジネスモデルに出会ったことは殆どありません。
なぜなら、価値を定められていないからです。ゴールが決まっていないので、モデルとしての構造が作れないわけです。
エニアグラムを用いることで、ゴールが決まりますのでそれから類推して、必要項目を定めていけばよいのです。
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- 株式会社カクシン
- 長山 宏
91年三優監査法人入社、97年三優BDOコンサルティング(株)取締役就任を経て現在に至る。京セラの稲盛名誉会長を師と仰ぎ、「社長が変われば全てが変わる」という標語のもと活動中。
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