経営者の「知りたい」を解決するプロフェッショナルによるウェブメディア

  • TOP
  • BROコラム
  • あの有名企業に学べ!限られたリソースで多角化経営を実現する「パラダイムシフト」

事例を活かすためのものの見方  ―有名企業に学ぶ パラダイムシフトから生み出す多角化経営 vol.002

株式会社オーナーズブレイン
代表取締役 公認会計士 税理士
小泉 大輔

今日の情報化社会に押される形で、消費者は様々な情報を基に商品を選択することができるようになりました。顧客のニーズの多様化と共に、製品やサービスのライフサイクルの短縮化が急速に進んできています。それは、たとえある企業にヒット商品が存在しその事業を永続させようと従来通りの経営を行うことを決断したとしても、経営環境や市場の変化によって予期もせぬリスクに直面することを意味します。

それらの不確実性に対して経営資源の分散を図るために、近年経営の多角化に乗り出す企業が増え続けています。多角化は既存の市場において技術やニーズを広げる一つの戦略です。つまりその戦略とは、企業が有する経営資源を新製品と市場へ投入することによって、同企業が経営資源を増大させ持続的な成長を実現するための手段なのです。

あの有名企業の「事業多角化戦略」を追う

1.スタート~給食事業

カラオケボックスで有名な「シダックス」。もともとはどのような事業を行っていたか、皆様はご存知でしょうか。シダックスは高度経済成長期時代、主に社員食堂への給食の納入をする事業からスタートしました。その後、医療機関での病院食や大学の学食を請け負うことになり、のちにレストラン事業へと参入していきました。しかし、その後、この飲食業というコアビジネスで培った資源やノウハウを何か有効活用できないか―そこで考え出された新規事業がカラオケボックスへの参入だったのです。


2.多角化~カラオケ事業

当時、老若男女を問わずカラオケブームが到来していました。しかし一方で、カラオケボックスと聞くと煩くて薄暗く、ダークなイメージが非常に強かったのが実情でした。加えて、ボックス内でおいしい食事を提供するカラオケチェーンは皆無でした。

そこでシダックスでは、もともとレストランとして出店していた店舗の清潔で明るいイメージに着目し、これらをカラオケボックスに改装することで、以前からのダークなイメージを払拭するという戦略に出ました。また、飲食事業=コアビジネスで培った食事のクオリティーを保ったままのフードサービスを提供することとで、他の同業種との差別化を図り成功へとつながっていったのです。このように、シダックスはカラオケボックスを単に歌を歌う場所から、快適で充実した時間を過ごす「歌えるホスピタリティー施設」に変化させるという発想の転換を行いました。


3.パラダイムシフト~発想の転換

また、同社では最近、昼の稼働率が低い時間帯に、カラオケ部屋を会議室や楽器練習部屋として貸し出す事業を始めました。通常であれば、カラオケの利用者が少ない平日昼間に集客をしようとすると、学生や主婦、若しくはシニア層をまずはターゲットとして考えます。その上で、学割やクーポンで利用料を下げたり、フードメニューを充実させたり、または営業時間を延長したりすることで稼働率の上昇を図ります。つまり、本業であるカラオケビジネスで収益の拡大を狙っていくという戦略が取られます。

しかしシダックスでは、先に述べたターゲット層は当然のこと、日中働くビジネスマンや自宅で練習できない楽器演奏者達をも新たな顧客層として組み込みました。そこでは情報漏洩や近所への配慮などを心配することのない防音設備が整った部屋を提供し、既に行っている飲食サービスでは打合せや練習の際に必要となる飲み物や軽食を迅速に提供することを可能とし、快適な会議・楽器練習環境をほぼ無コストで生み出すことに成功しました。特筆すべき点は、カラオケボックス特有のメリットを的確に分析し、その上でカラオケ以外のビジネスへと発想の転換を行ったことで、現在の経営資源を有効活用しながら収益拡大を達成させることができたところです。

「パラダイムシフト」で広がる多角化経営の可能性

企業のオーナーは多角化経営というと、マーケットのセグメントを新たに設定し、新商品開発のために莫大な設備投資を行い、宣伝や営業のために多くの人的資源を必要とすることなどを想像しがちではないでしょうか。手広く事業展開するも、本業と違うところでは手腕を発揮できず失敗するという事例は、少なからず見受けられることは事実です。

しかしながら、固定概念を柔軟にし、パラダイムシフト(発想の転換)することで多角化が成功することもあります。シダックスの事例のように、限られた資源の中で企業が有するそれぞれの技術や強みを適切に現状分析し、思考を柔らかく、発想を豊かにすれば、資源を有効活用した多角化経営への参入も実現可能な収益拡大の一図絵になるかもしれません。


 

このエントリーをはてなブックマークに追加

このコラムは役に立ちましたか?

読み込み中 ... 読み込み中 ...
株式会社オーナーズブレイン
株式会社オーナーズブレイン
小泉 大輔

朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。 株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。