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業績の維持・向上のためのマネジメント(3) ニッチを選ぶ企業行動における選択とは  ―「社会に期待されつづける経営」 vol.005

新日本有限責任監査法人
シニアパートナー 公認会計士
三浦 太

社会に期待されつづける経営を実現するためには、業績の維持・向上策と企業不祥事防止策を同時にマネジメントしていくことが不可欠です。今回は、企業行動をいかに選択していくかについて説明します。経営者が自社の将来の方向性(経営ビジョン)と自社の事業を行う立ち位置(ポジション)を明確にすることは重要です。それを前提に見定めた自社が行う事業についてどう取り組むべきかを考えます。

企業行動の選択

設立間もない会社や中小・中堅会社にあっては大手会社に正面から挑むのは誰が考えても無理と思いますし、結果として勝てたとしても長期間を要する可能性が高いため、何といっても非効率です。経営資源が限られている場合には、市場規模は小さく特定のニーズがあるものの、製商品やサービスの提供をきちんと行なっている会社が今のところない分野に絞って事業展開することも有効な手段です。大手会社が手掛けない隙間(ニッチ)を主力事業にすることから「ニッチ(隙間)市場」と呼ばれ、ある事業分野について、市場全体の中で、その一部を構成する特定の需要(ニーズ)を持つ市場のことをいい、その市場において、商品やサービスの供給・提供が行われていない場合の隙間(すきま)市場(ニッチマーケット)という意味にも用いられます。

これから成長していく会社は、大手会社が手を出していない、または手を出していたとしてもあまり力を入れていないか、強みがない部分を周到に見つけ出し、集中的にその事業に進出していくことで規模は追えなくても確実に利益を稼ぎ出す事業分野を見つけるべきです。

大手会社はどうしても総花的になりやすいので、限られた経営資源しかない中小・中堅会社でも部分的に特定の分野に経営資源を集中して、チャレンジすれば商機を見出せる可能性があります。大手会社はスケールメリットがないなどの理由から、ニッチ市場に通常は参入しません。しかし、本業が芳しくないからといった理由で、市場規模が小さくてもやたらと新事業に手を出す大手会社もありますが、市場において強みがあるかと言えばノーの場合が多く、その場合には大手会社とはいえ、主力事業分野ではない別の市場においては門外漢であり、負け組になる可能性が生じる場合もよく見かけます。

ニッチ市場における企業行動

ちなみに、現在でも会社規模は大手会社には至ってないが、特定分野において利益率などでみれば大手会社よりも利益を上げている優良企業が実際に多くあります。この場合には、顧客ニーズの変化や多様化へ迅速に把握し、いかにキャッチアップできるかが重要であり、意思決定の早い中小・中堅会社であればあるほど必ずチャンスを見出せるはずです。その際、手間がかかればかかるほど他社が参入しにくいはずなので、長期間利益を稼ぐこともしやすい事業展開ができる分野になるはずですので、苦労のしがいはあるはずです。

また、ニッチ市場で事業展開する会社が軌道に乗ってきたあとに考えるべきことは、会社全体の業績の維持・向上です。そのため、単一事業だけでなく、自社が手掛けられる幾つかのニッチ市場を新たに見つけ出し、複数のニッチ市場を手掛けることで、一つの市場への依存度を少なくし、長期的に事業の組合せを入れ替えていくことで、全体として業績の維持・向上が安定的に図れるようにしていくべきです。

なお、ニッチ市場で手掛ける製商品やサービスの内容を見直さないとライバル会社には勝てない、あるいはニッチ市場であっても新規参入が新たに出現する、または市場ニーズが一段落し市場自体が縮小してしまうなどの現象が生じることがよくありますので、常に現状に満足することなく、見直すべき点や、新たな事業領域を模索することが不可欠です。

ニッチ市場を見つけるポイント

今回は、これから成長していく会社の事業展開についてニッチ戦略を強調しましたが、この考え方は大手会社が新規事業に参入する際にも役立つはずです。上述したように、大手会社は事業領域を総花的に広げる傾向があり、結果として弱い部分を抱え、将来のリストラの種をばらまく例がよくあります。そうではなく、新規事業に進出する際には、大手であっても今までにないビックビジネスを創出するような場合でなければ、ニッチ市場への参入の考え方に準拠して経営判断していくことが必要になります。

最後に、ニッチ市場を見つけるヒントをまとめておきます。

・ 顧客が必要としているニーズ全体からすると極めて部分的なニーズであるが、それがないと顧客の全体のニーズを満たせないようなものは、販売規模の広がりが少ないかもしれないが確実に利益を稼げる事業、逆に言えば価格競争に陥らない事業として見出せる。

・ 1つのニッチ市場だけでは、経営者の望む販売機会を満たす規模でないのであれば、他にも同じようにニッチ市場を探し出し、複数事業を手掛けることで会社全体としての販売規模を高める。

・ 大手メーカーのモノ作りの一端を担う事業の場合、特定の部品については他の追随を許さないモノを見出す、あるいは品質・価格・納期などについて他社を圧倒するようなモノを提供できる生産技術を確立する。

・ 事業を行う場合、例えば、特定の大手メーカーへの依存度が高い、あるいは他の大手会社のニーズを満たせないなどの状況を打開できないと単なる下請けメーカーになり、景気に左右されやすい体質になるので留意する。

・ モノ作りではなく、従来のモノを流通させる方法を革新することで差別化する、あるいは新規参入することを考える。例えば、既存の流通方法から劇的な変化を提案し、既存の他社と伍していく、あるいは入れ替わっていくことであり、卸経由から直販へ切り替え、ITを駆使した注文方式への変更、新たな中立的な納品ルートを開発し顧客ニーズを獲得、新たな独自の販売方向の提案、新たな店舗スタイルの提案、既存の一般的な製商品やサービスに関して、クオリティー・値段・スピードなどを変化させ、新たな顧客ニーズを獲得するなどが考えられる。特に小売業界においては、顧客の多様な購買意欲をいかに満たし、利便性をいかに高められるかがポイントになる。

ニッチ市場で成功するための取り組み

このようにして、ニッチ市場を開拓できたとしても1つ留意点があります。競争相手がいない、または少ないということは、十分採算が取れるマーケットではないリスク、気づいていない脅威が存在するリスク、今は競争相手がいないが意外に参入障壁が低いマーケットであるリスクなどが考えられ、それらのリスクがあると最初はうまく行ったとしても大手があっという間に参入してきたり、予想外の脅威にさらされる可能性もあり、業績の維持・向上が中長期的に計れないことになりかねません。

したがって、ニッチ市場は参入の際には十分吟味すべき事項が多いと心得たほうが無難です。いずれにしても、ニッチ市場は新たな取り組みになりますから、サプライチェーンが未整備な中で、業務プロセスや取引先との取引条件を新たに1つずつ構築していかなければなりません。そこで、ニッチ市場であっても、第3回でお話したファイブフォース、3C、SWOTなど考え方は有効ですので、それらを参考にしてマーケット環境、技術動向、諸規制動向、競争相手、取引業者などを十分調べあげたうえで、事業展開することで業績の維持・向上を実現していくことができるはずです。


今回のコラムは以上ですが、今後も様々なビジネス展開、特に流通に関するアイデアがITシステムやソーシャルメディアを通じて生まれる余地がありますので、斬新な独自企画を持ってニッチ市場を切り開いていく経営者が増えていくと予想しています。

次回は、業績の維持・向上に関連して、イノベーションやマーケティングのあり方についてお話したいと思います。

 

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三浦 太

上場会社監査をはじめ、決算早期化、グループ管理、内部統制整備、IFRS導入、IT 統制、業務改善、事業計画・資本政策策定などの助言・支援業務を実施。大手金融 機関、大学などでの講演実績多数。