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「新株予約権」 ストック・オプションを乱発してしまった企業の結末  ―ベンチャー企業法務 vol.002

フォーサイト総合法律事務所
代表パートナー弁護士
大村 健

今回は、ベンチャー企業で発行事例の多い、ストック・オプションとして発行した新株予約権についてです。

当事務所ではベンチャー企業の案件を多く取り扱いますので、新株予約権関連のご相談にもよく対応しています。今回のエピソードも、私が業務を遂行する過程で経験した案件をアレンジして執筆しています。

IPOコンサルタントから新株予約権を放棄させよ

A社は、数年前に設立されたデジタルコンテンツ関連のベンチャー企業で、株式公開に向け、順調に売上を伸ばしている会社でした。

A社にとって、1つ気がかりなのが、会社設立時に、IPOコンサルタントと称する人にストック・オプションとして付与した新株予約権の存在でした。A社は、その当時、社長を含む役員が70%の割合の株式を保有し、その他はベンチャーキャピタルや提携先事業会社でしたが、IPOコンサルタントが新株予約権を行使するとIPOコンサルタントの株式保有割合は過半数を超えてしまいます。それだけ多くの新株予約権を付与していたのです。

新株予約権とは、株式会社に対して行使することにより株式の交付を受けることのできる権利です。普通の株式のように顕在化していないことから、潜在株と呼ばれたりもします。ベンチャー企業が株式公開に向け、株主構成、議決権比率を吟味しながら資金調達を行うべく、いつ、誰に、どのような手法で実施するかという計画のことを資本政策といいますが、新株予約権は、資本政策の過程で経営陣の議決権比率維持のために用いられたりもします。資本政策の観点からいうと、A社の資本政策は完全に失敗でした。

A社は、創業時に世話になったという理由で新株予約権をIPOコンサルタントに付与することにしたのですが、実際の発行手続をそのIPOコンサルタントに任せていたことから、IPOコンサルタントの言いなりになり、必要以上の新株予約権を付与してしまったのです。IPOコンサルタントが新株予約権を行使すれば、完全に会社を乗っ取られてしまいます。

困ったA社は、顧問税理士の紹介で私の元を訪れました。

私が相談に乗った時点では、すでにA社とIPOコンサルタントとの間の契約は終了していました。数ヶ月前に、IPOコンサルタントが犯した致命的なミスによりA社は、多額の損害を被っていたことがその理由でした。

基本的に新株予約権を放棄してもらったり、買い取ったりするには、新株予約権者であるIPOコンサルタントの承諾が必要です。しかしながら、ちょっとやそっとの理由では応じないのが通常です。

そこで、私は、IPOコンサルタントに責任追及する過程で、賠償の代わりに新株予約権を放棄してもらってはどうかとアドバイスしました。A社にとっても損害賠償を求めて、場合によっては裁判を行うよりも話し合いで新株予約権を放棄してもらった方がよっぽどの価値があると考えたためです。

この交渉は非常に難航しました。

最終的に、新株予約権を放棄させたり、無償で譲渡してもらうことはできませんでしたが、合理的な金額で買い取ることができ、A社が乗っ取られることもなく、無事に解決することができました。

当事務所では、新株予約権の発行案件をよく取り扱いますが、外部支援者に新株予約権を付与する場合、有効な支援関係の消滅や契約解除を「一定の事由」とする取得条項付新株予約権としておくことや、有効な支援関係を行使条件とすることを提案するケースが多いです。そうすれば、本件のような場合には、IPOコンサルタントの新株予約権は取得ないし消滅したと取り扱うことができるからです。

新株予約権についてもっと詳細を知りたい方は、私が編集代表として、当事務所の弁護士及び司法書士兼行政書士も執筆陣に加わって平成19年4月に出版し、平成21年1月に改訂版が出版された『新株予約権・種類株式の実務~法務・会計・税務・登記~』も併せてお読みいただけると幸いです。

 

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大村 健

取扱分野は、ベンチャー企業法務(IPO関連含む)、IT・ネット・web・エンタメ・バイオ関連法務、会社法、金商法、M&A、知的財産法、独占禁止法・下請法・景表法、労働法、不動産関連等