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事例を活かすためのものの見方  ―固定概念を壊し、成熟市場に新たなマーケットを生み出す vol.003

株式会社オーナーズブレイン
代表取締役 公認会計士 税理士
小泉 大輔

今回は、メガネの専門店を展開する「株式会社ジェイアイエヌ」の事例を述べたいと思います。

固定概念を壊し、成熟市場に新たなマーケットを生み出す

かつてメガネといえば一式3万円以上する高価な医療器具であり、視力の悪い人だけが掛けるものというイメージが定着していました。そのため大胆な発想や画期的な新商品が生まれにくく、市場規模は頭打ちになっていました。

そんなメガネ業界を活性化させたのが、田中仁氏率いる「株式会社ジェイアイエヌ」です。ジェイアイエヌは1988年に服装雑貨の企画・製造・卸売を目的とする有限会社として誕生し、2001年にメガネ関連部門に進出しています。当初は他の新興メガネ店同様、海外から安価なメガネフレームを輸入し、低価格で販売する戦略で勝負していましたが、価格競争の激化とともに、メガネ業界にイノベーションを起こす必要を感じた田中氏は、メガネを「医療器具」ではなく「ファッション商材」とする経営戦略を展開しました。洋服を着替えるようにメガネを着替える、メガネを掛けることがファッションになる。これまでの業界の常識を打ち破るこの発想は、服装雑貨という異業種の実績を持ち、メガネに対する固定概念がなかったからこそ生まれたのです。そしてこの転換が、視力が悪くない人にもメガネを使ってもらう「機能性メガネ」の開発へと繋がりました。

田中氏が着目したのが、ブルーライトの影響です。パソコンやスマートフォンのディスプレーから出ているブルーライトは、眼精疲労や睡眠障害を引き起こすリスクがあると言われています。このブルーライトを30%~50%カットするレンズを開発し、JINS PC として売り出しました。健康ブームによる高い関心と、メガネを掛けるだけで目が守れるという手軽さ、メガネがファションの一部として浸透していたことが相まって大ヒットし、視力に問題のない人々が店舗に足を運ぶようになりました。他にも、ドライアイを予防するメガネや、花粉をカットするメガネ、スポーツ用のサングラスなどを次々に商品化し、他社もこれに追随するように機能性メガネの開発、販売を開始しました。

2012年は店舗数160、年間販売本数350万本、売上高226億円を達成し、2013年5月には東京証券取引所第一部への上場を果しました。急成長著しいジェイアイエヌは、いま最も注目されている企業の一つ言えます。

<グラフ>ジェイアイエヌの財務状況とメガネ市場の規模


ジェイアイエヌの事業展開の大きなポイント

13世紀後半からイタリアで発明されてから現代に至るまで、メガネは視力矯正という1つの機能しか持たず、そのためユーザーが限定される医療器具でした。ジェイアイエヌは、機能性メガネにより、メガネを使用していない人々のライフスタイルを変える〝非視力矯正市場″をつくり出すことで、新たな顧客の獲得に成功しました。現在、メガネは視力の悪い人の視力矯正具に留まらず、日常的なリスクから目を守るための生活スタイルに合わせて活用するといった、必須のアイテムになりつつあります。ジェイアイエヌが生み出したものは、単なる新商品ではなく、多くの人々が商品に触れる「機会」を増やし、新たなライフスタイルとマーケットを創造したことにあります。これが、今回の事例の大きなポイントです。

隠れたニーズを発見し、工夫を加えた他業界での例

より多くの人々に触れてもらうための工夫が、成長のための突破口にジェイアイエヌのように、成熟市場で大きく成長した企業は他にもあります。例えば、ゲーム業界では、大手ゲーム会社である任天堂が「1人で遊ぶ」スタイルから「家族みんなの娯楽」となるゲームを目指して、直観的な操作で遊べるゲーム機「Wii」を開発しました。これにより、ゲームに触れる機会がなかった大人の女性やお年寄りまで、幅広い層を新たな顧客としました。

また、アルコール業界では、生活スタイルの変化や飲酒運転の社会問題化により、売上げが伸び悩んでいました。そんな中、お酒を飲めない体質の人や、宴会の場にいながら運転や仕事のために飲酒できない人をターゲットにした「ノンアルコール飲料」が登場し、新たな需要を生み出しています。

自社の商品に触れたことのない人々に目を向け、隠れたニーズを発見し、これに応えられる工夫を既存商品に施すこと。それが、停滞した業界で成長するための突破口になると言えそうです。


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小泉 大輔

朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。 株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。